『スモールフット』子供向けと思わせて、実は奥が深い内容は必見!その理由とは?

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『怪盗グルー』シリーズや『ミニオンズ』の原作者&音楽スタッフが贈る、待望の新作3Dアニメ映画『スモールフット』。

9月に公開されたアメリカでも初登場2位の高成績を収めた勢いを受けて、日本でも10月12日より全国公開が始まったところだ。

ポスターに描かれた可愛らしいキャラクターやストーリーからは、伝説のイエティ(雪男)=ビッグフットと、人間=スモールフットとの友情や交流を描いた作品の様に思えた本作。だが、アメリカでのヒットの状況を見る限り、ひょっとして単なる子供向けアニメでは無いのでは? という気がしていたのも事実。

果たして、その出来と内容はどの様な物だったのか?

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ストーリー

人里離れた雪深い山頂に住む、大きな体で心優しきイエティのミーゴ。
おっちょこちょいで臆病な彼は、ある日、偶然にも小さな足の伝説の生物“スモールフット(=人間)”と出会う。
しかし、誰も信じてくれないばかりか、嘘つきだと、村の掟(オキテ)を守る最長老ストーンキーパーから村の追放を言い渡される。「雲の下には不思議な世界が広がっているのよ」というミーチーの言葉を信じたミーゴは、真実をつきとめるため伝説のスモールフットを探す冒険の旅に出る――。
見たことのない広大な世界で途方に暮れるミーゴの前に突然、スモールフットが出現する。 彼の名はパーシー。ミーゴは、あまりの嬉しさに明るく話しかけるが、その大きな声や姿をひと目見て、あまりの恐怖に気を失うパーシー。しかし、パーシーが偶然撮影したイエティ発見動画が瞬く間に拡散されてしまい…。
イエティと人間を巻き込む大騒動はいったいどうなるのか?

予告編

実は子供向けアニメと思ってスルーすると、確実に損する映画だった!

イエティ(雪男)=ビッグフットに対して、そのイエティ側から見た人間の名称が、本作のタイトルにもなっているスモールフットという耳慣れない言葉だ。

人間から見たら未知なる凶暴な生物に思えるイエティたちだが、もしも彼らの側から人間を見たらどう思うのか?

そんな、ちょっとした発想の転換から生まれた本作は、ポスターに登場する可愛らしいキャラクターからして、どう見てもよくある子供向けのアニメの様に見える。

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雲の上に高くそびえ立つ山の上で、人間世界から離れて密かに暮らすイエティたち。独自の文化を保ちながら平和に暮らしていた彼らだが、イエティの村に代々伝わる伝統や掟に囚われない若者の好奇心が、やがてこの平和を揺るがす事態を巻き起こすことになる。

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実際映画の序盤では、イエティの一族と人間=スモールフットの出会いが巻き起こす大騒動を描いているのだが、実はそこから一気に物語は現実社会の問題を反映した、大人も大いに考えさせられる展開になっていく!

もちろん、子供向けのアニメとして楽しい笑える部分も多いのだが、後述する様にアメリカの歴史の暗部や人種差別を想像させるその内容には、むしろ付き添いで来場した親の世代に向けてのメッセージが色濃く込められているのだ。

文字通り親子で楽しめるその内容は、是非劇場でご確認頂ければと思う。

では、本作が本当に描きたかったテーマとは?

イエティの若者ミーゴの冒険を描く序盤の展開に続いて、映画中盤の見せ場となるのが、イエティの長老“ストーンキーパー”が語る、秘密の壁画に記されたイエティの祖先と人間にまつわる悲しい歴史と、外見上は平和に見えていたイエティたちの生活に隠された重大な秘密。

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長老の声をラッパーのコモンが演じていたり、このシーンでの長老の語りがラップであるという点と歌詞の内容から、ビッグフットの迫害の歴史がそのまま黒人の苦難の歴史を象徴することは明らかだ。これに加えて、近年避けては通れないネット上のYouTuber問題も描かれているなど、巧みに現実社会の問題を織り込んでいる本作。

人間=スモールフットの存在やイエティの悲劇の歴史を、仲間には徹底的に隠した中で守られていた偽りの平和に、若いイエティたちの好奇心が風穴を開けて新たな世界への架け橋となる展開は、正に現実の社会にも希望をもたらすものだと言える。

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まだ偏見や常識に染まっていない子供たちがこの『スモールフット』を観ることで、きっと将来的に個人の多様性を尊重した社会が実現出来るのではないか? そんな想いで劇場を後にした本作。果たしてあなたは、この作品に何を思うだろうか?

最後に

詳しくは伏せるが、本作で非常に感心させられたのが、通常のアニメでは暗黙の了解とされている、ある“お約束事項”がちゃんと現実的に処理されていたことだった。しかもこの処理により、本作では人間とイエティとの間に友情と理解が成立するまでのハードルが、極めて高いものとなっているのだ。その困難を乗り越えて、ミーゴとパーシーとの間に友情と相互理解が生まれる展開は、本作のテーマを象徴するものと言えるだろう。

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そこに描かれるのは、過去の長い悲しみと対立の歴史を知らない世代が中心となって、ついに偏見や対立を越えた平和な世界を作るという、正に現代のアメリカにとっての夢と理想を反映した物語に他ならない。

もちろん、ミュージカルアニメとしても充分に楽しめる本作だが、その裏に隠されたテーマの深さにも目を向けて頂きたい作品なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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