おうちで映画も美味しく!そば&うどん映画映画特集!

『舟を編む』での
蕎麦をすする名シーン

先ごろ惜しくも亡くなった大林宣彦監督が代表作『転校生』(82)をセルフリメイクしたことで話題になった『転校生 さよならあなた』(07)では、一美(連佛美沙子/これが彼女の初主演作で、その年の新人賞を多数受賞)の実家が蕎麦屋という設定になっています。

これは舞台となるのが蕎麦処の信州長野県であることとも大いに関係していて、ロケに使われた長野市大門の蕎麦屋「かどの大丸」は元禄16年創業との名店です。

蕎麦そのものは出てきませんが、小泉今日子と二階堂ふみの競演が話題になった『不機嫌な過去』(16)は元蕎麦屋のエジプト風豆料理屋「蓮月庵」が舞台になっていて、日本古来の佇まいにアジアンチックな要素を共存させることで、家族の不可思議な関係性などを醸し出される作りとなっていました。
(この店も東京大田区池上本門寺の近くにあった元蕎麦屋を借りて撮影したもので、現在は古民家カフェになっているとのことです)

蕎麦を食べるシーンが印象的だったのは、辞書の編纂に情熱を傾ける編集者たちを描いた石井裕也監督の名作『舟を編む』(13)。

(C)2013「舟を編む」製作委員会

ここでは主人公(松田龍平)の恋人で後に妻となる女性(宮﨑あおい)が日本料理の板前という設定ということもあって、劇中いろいろ印象的な食事のシーンが出てきますが、その中で辞書監修の責任者(加藤剛)が完成を前に他界し、憮然としながら自宅に戻った主人公に妻が蕎麦をふるまいます。

窓の外は雪で、主人公は蕎麦をすすりながら涙をこらえきれなくなっていき、妻はそっと彼の背中をさすります。

映画の最初のほうで主人公らは「憮然(自分の力が及ばず失望、落胆して表情のない様子)」とはどういう様子を表す言葉か?についてやりとりするシーンがありますが、ここで彼は身をもって「憮然」を体現し、蕎麦がその状態を打ち崩していくのでした。


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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