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イジメで自殺した者と、残された周囲の者たちの苦悩を描いた力作『十字架』

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■「キネマニア共和国」

哀しいかな、昔も今もイジメのニュースは日々報じられていますが、こういった事件は、単にいじめる者といじめられる者だけではなく、その周囲の者たちをも悲劇へと巻き込んでいくことまでは報じてくれません……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.105》

映画『十字架』は、そんなイジメの事件に巻き込まれてしまった者たちの苦悩を描いたものです。

十字架 メイン

(C)重松清/講談社 (C)2015「十字架」製作委員会



イジメを苦に自殺した少年の遺書に
残されていたメッセージとは……


『十字架』は、2010年吉川英治文学賞を受賞した重松清の同名小説を原作に、『地雷を踏んだらサヨウナラ』など社会派的資質の作品の中に人間を描くことを怠らない五十嵐匠監督がメガホンをとったものです。

中学2年生の少年フジシュンが、イジメを苦に自殺しました。

その遺書の中には、いじめた者たちへの恨みだけでなく、自分に優しくしてくれた友人への感謝や、自分が恋い慕っていた少女への想いまで綴られていました。

『十字架』で描かれているのは、その友人ユウであり、少女サユです。彼は、彼女は、果たして本当に少年に対して優しかったのか? そう自問自答しながら、少年に対して何もしてあげられなかったという”十字架”を背負って苦しみながら成長していく20年の月日を描いていきます。

映画の冒頭のほうで描かれるイジメのシーンは正視に耐えないほどですが、実際はもっとひどいことが行われているのであろうことは容易に想像できますし、また本題はそこではなく、残された者たちです……。

中学時代から20年の歳月を
一人の俳優で演じきらせる試み


今回、意表をついているのは、ユウ役の小出恵介、サユ役の木村文乃が何と中学生時代から20年をひとりで演じ切っていることで、実年齢20代後半のふたりが制服を着て、実際の中学生の役者の中にまじって演技しているあたり、正直奇妙な感触もあります。普通なら少年時代と大人時代と役者を変えて展開していくことでしょう。しかし、そこをあえてひとりで押し通したところに「少年少女の苦悩の20年を、途切れなく描出したい」という五十嵐監督の意図がうかがえます。

(また作品の深刻なテーマとは裏腹な、ちょっと下世話な見方として、小出恵介や木村文乃の制服姿に「萌え」という要素もあり⁉ ただ、そういったユーモア気分も内包していないと最後まで見ていられないほどにつらい作品なのも事実です)

遺書に記されていたように、ユウもサユも、何も危害を加えてはいません。しかし、それでも罪の意識が消えることはありません。「あのとき、もっとああしていれば……」といった想いなどからくる悔恨は、おそらく彼らが生きている間は、心の奥底にしまうことはできても消し去ることはできないでしょう。

一方で、フジシュンの両親を演じた永瀬正敏と富田靖子が醸し出す、我が子を亡くした親の狂わんばかりの哀しみが自然体で描かれていることで、より悲痛な面持ちが見る者に伝わってきます。

ひとりの人間が自殺すると、およそ200名ほどの周囲の人間に大なり小なりのトラウマを与えると聞いたことがあります。

残された者たちの哀しみから、イジメのおろかしさを訴えた力作です。本来なら学校などで率先して見せてしかるべき作品でしょう。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)
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