ロス&ラスベガスを舞台にした 乾いた韓国映画『太陽を撃て』

■「キネマニア共和国」

『映画は映画だ』(09)で注目された韓国映画スターのカン・ジファン。彼が『チャ刑事』以来3年ぶりにスクリーンに帰ってきた問題作……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.53》

ロス&ラスベガス・ロケでお届けする『太陽を撃て』です。
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さながら韓国映画版
『俺たちに明日はない』

何だかワケありな事情でロサンゼルスまでやってきたジョン(カン・ジファン)と、不法滞在者の友人チェン(パク・ジョンミン)。

夢も目的もない日々を過ごすふたりは、ひょんなことから砂漠に埋められていた組織のボス(アン・ソクファン)を助けます。

ボスに勧められ、その下で働くことになったふたり。

やがてジョンはジャズバーで歌うサラ(ユン・ジンソ)に恋をしてしまいます。

しかし、サラは決して手を出してはいけない相手でした……。

これまで『7級公務員』(10)や『チャ刑事』(13)のようなキュートでコミカルな個性を披露する機会の多かったカン・ジファンですが、ここでは極限まで追い込まれていく男の匂いを熱くムンムンと漂わせながら熱演しているのが、本作最大の魅力ともいえるでしょう。
太陽を撃て●メイン-カンジファン
いわば韓国映画版『俺たちに明日はない』とも呼びたくなるアメリカン・ニュー・シネマ・タッチのテイストですが、一方で今回はロスとラスベガスでオール・ロケを敢行しており、従来の韓国映画とは異なる味わいを堪能できることとも思われます。

そうそう、こちらはまったくそんなことなど気にして見ていなかったのですが、今回はカン・ジファンが俳優としてデビューして以来、初のベッド・シーンがあったことで、女性ファンたちが大騒ぎになったとか⁉
(正直、そこまで衝撃的なシーンにも思えないけど……なんて言ってはいけないのでしょうね、きっと。そういえば、最近は日本でもベッド・シーンはNGなんて男優もいるそうですが……)

ときにポップに、ときにクールに
ドライでセンチメンタルな青春アクション

そんなカン・ジファンが愛する女サラを演じたのは、『オールドボーイ』(03)の宿命的ヒロイン役でその年の新人賞を独占したユン・ジンソ。

今回は男たちを惑わすファムファタールたる歌姫を、官能的に演じていますが、一方でジャズ・ヴォーカリスト役でもある彼女は、本作のためにヴォイス・トレーニングを受けて、劇中では自らの喉でジャズ曲を熱唱していますが、それは単なる彩りではなく、作品の世界観を妖しくもまぶしく高めることに貢献しています。

ジョンの友人チェンには『野良犬たち』(14)『僕らの青春』(15)などで売り出し中のパク・ジョンミン。

ボス役には『カル』(12)『後宮の秘密』(12)、またTV『花より男子-Boys Over Flowers-』でもおなじみのベテラン、アン・ソクファンが扮しています。
太陽を撃て
監督は日本に留学の経験もあり、『妻の愛人に会う』(08)がサンダンス映画祭などで高い評価を得たキム・テシク。

ここでの彼の演出は、砂漠やラスベガスのネオンなど乾いた風景描写の中に男女の火傷しそうな人間関係を置くことで、熱く危険なドラマをときにポップ、ときにクール、そしてスタイリッシュに描出しています。

時間軸を錯綜させるなどの独自のカッティングや、映像そのものの切り取り方も、なかなかの意欲を感じさせてくれます。

上映時間が87分と、最近の映画にしては短いのも異色ですが、その分一気に駆け抜けてくれる疾走感もまた妙味。

小品ではあり、若干空回りしているところも感じつつ、こういった小粋な味わいの意欲作は決して嫌いではありません。
太陽を撃て サブ2-左パクジョンミン右カンジファン

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(文:増當竜也)

『太陽を撃て』は2015年11月7日(土)公開!
公式サイト http://www.finefilms.co.jp/taiyou/


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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