韓国映画『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』意外な展開に賛否両論の本作。その真のテーマとは?

トンネル 闇に鎖された男 チラシ

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今年に入ってからも『哭声/コクソン』や『お嬢さん』など、話題作や問題作が続々と公開されている韓国映画。

今回はその中から、5月13日よりロードショー公開された『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』を初日の最終回で鑑賞して来た。予告編の印象からは、極限状態におけるサバイバルと救出劇との印象が強かった本作。個人的にも「これは期待出来る!」との想いが強かったのだが……。

意外にも、ネットでの評価では厳しい意見も見受けられる本作。果たしてその内容は、どうだったのか?

予告編

ストーリー

自動車ディーラーとして働くジョンス(ハ・ジョンウ)は、大きな契約に成功して意気揚々と妻セヒョン(ペ・ドゥナ)と娘の待つ家へ車を走らせていた途中、通りかかったトンネルが突然崩落し、ジョンスは車ごと生き埋めになってしまう。かろうじて一命は取り留めたが、手元にあるのはバッテリー残量78%の携帯電話と水のペットボトル2本、そして娘にあげるはずだった誕生日ケーキだけ。

大型トンネル崩落事故はすぐに全国ニュースとなり、救助活動も開始されるが、現場の惨状は救助隊の想像を超えるもので作業は難航。事故対策班の救助隊長デギョン(オ・ダルス)は塞がったトンネルに侵入するために様々なものを試みるが、救助はうまく進まない。救助作業の遅れは近隣の第2トンネル完工に大きく支障が生じ、ジョンスの救助とどちらを優先させるかで、世論が分裂し始める……。

予想外の展開に驚いた! サバイバル・災害パニックだけじゃ無い、その深すぎる内容とは?

前述した通り、予告編を見た印象からは、落盤事故でトンネル内に一人生き埋めになった男の、極限状況下でのサバイバルと、外部の救出作業が果たして成功するかどうかのサスペンス、そんな予想で鑑賞に望んだ本作。

具体的に言うと『デイライト』とか『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』的な展開を期待したのだが……。

確かに、迫力あるCGで描き出されるトンネル崩落事故から映画は始まるのだが、実はある時点から、本作は予想外の展開を見せ始める!

どうやらこの点が、災害パニックやサバイバル救出劇を期待した観客からの不評を買っている理由のようだ。

確かに、トンネル事故を描くその先に、社会問題や人間同士の繋がりの重要さを描こうとしている本作だけに、単なる災害パニックやサバイバル救出劇を期待して行くと、「あれ? ちょっと違う」となる可能性が高いかも知れない。

だが、ちょっと待って欲しい! 細部まで良く見れば、きっと本作に込められた深いテーマ、「現代において生身の人間同士、個人対個人の対話と関係性がいかに大切か?」に気が付くはずだ。

トンネル 闇に鎖された男

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個人的には、冒頭に登場するガソリンスタンドの老人や、ドジな救助隊員の描写にこそ、本作が伝えようとするこのテーマが良く現れている様に思えた。

一見社会の中では役に立たないように見えて、失敗ばかりで怒られている彼らの行動・思いやりが、結果的に主人公の危機を救うという皮肉に気が付いた時、本作が伝えようとするこのテーマ性が明確になって来るはずだ。

実際、国家と全体の利益という巨大な怪物の前に、一度は絶望の淵に立たされた主人公を救うのも、妻のあまりに厳しい激励の言葉と、一個人である救助隊長の勇気ある行動だ。

更には、外部との唯一のコミュニケーションの手段である携帯。それが遂に機能しなくなった時、果たして人間同士の信頼はまだ成立するのか? その答えが提示される終盤の展開にこそ、本作の真のテーマが込められていると言えるだろう。

トンネル 闇に鎖された男 サブ

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最後に

ネットでの厳しい評価にも書かれている通り、政治家への風刺と社会への問題提議まで話を拡げてしまったためか、127分の上映時間にも関わらず、終盤はかなり駆け足で物語が展開し、全体的に詰め込みすぎの感が拭えなかった本作。

特にラストの第2トンネルの爆破工事から救出劇までの間、どの位の日数が経過したかが観客に伝わらないため、せっかくのラストの展開が結構唐突な感じがしてしまうのが残念だった。

細かい部分でも、後から思い出して考えると正直「?」な箇所が多いのも事実。(例えば、トンネル調査用ドローンの電波を遮断してしまう地層がある、との説明があるトンネル内で、果たして携帯の電波があれほど繋がるのか?とか)

しかし、トンネル内に閉じ込められ、水を制限されている主人公と、トンネルの外ではずっと雨が降っているという対比描写は非常に上手い!

更に、本作での出演キャスト陣の演技はどれも素晴らしく、中でも救助隊長を演じたオ・ダルスの、コミカルだが誠実感溢れる演技は、終盤の絶望的な展開の中でも、観客に希望と救いを感じさせてくれる。

韓国映画としては、残酷な描写や精神的にキツイ描写が少なめなので、女性にも安心してオススメ出来る本作。出来れば友達同士で見に行って、自分ならあの状況でどうするか? 鑑賞後に話し合ってみるのも楽しいかも?

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(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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