続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年03月25日

「ブギウギ」羽鳥(草彅剛)がスズ子(趣里)と絶縁?<第122回>

「ブギウギ」羽鳥(草彅剛)がスズ子(趣里)と絶縁?<第122回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第122回を紐解いていく。

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スズ子燃え尽きる

大晦日の歌の祭典「オールスター男女歌合戦」でトリを飾ったスズ子(趣里)
歌い終わったあと、楽屋で燃え尽きていると、感動したタケシ(三浦撩太)が「福来スズ子の第2章の始まり」と大騒ぎ。

そこへ股野(森永悠希)アユミ(吉柳咲良)が訪ねてきます。
アユミはスズ子の歌に感銘を受け、自分はまだまだと思い知らされ、スズ子への尊敬を新たにした様子です。

ブギの女王・福来スズ子の底力を見せつけ、マスコミもこぞって賞賛しますが、当人のテンションだけは低い。自分にしかわからないものがあるのです。

スズ子は歌手引退を決意。羽鳥(草彅剛)に報告に向かいます。
テレビのスズ子を見て、何かを感じていた羽鳥ですが、引退を決意したとまでは想像していなくて、顔色を変えます。
ここで一旦、動揺を隠すようにお茶を飲みました(芸が細かい)。

「確かに水城アユミはすごかったね。僕も聞き入ってしまったよ。君がそんな水城アユミからエネルギーをもらって歌えたというのはよくわかるよ。僕だって彼女の声には熱くなった」と認めつつ、
「でもね僕は君を引退させないよ」と宣言します。

「今まで作ってきた歌を全て葬り去ることになる。歌を殺すことになる」
「そんなことは僕は絶対に許さないよ」と畳み掛けるように言う時の草彅さんの表情と声音が実に迫真です。
目の凄みにぞくりとなります。

「歌手を引退すると言うのなら僕は君と絶縁します」

今までにない羽鳥の表情。自分の歌をものすごく大事にして、その歌はスズ子がいてこそ成立したもので、それがスズ子の引退によって葬り去られることを本気で怖れているのが伝わってきます。でもそれを剛速球でスズ子にぶつけ過ぎないように懸命に口調を柔らかく抑制している。
冷静と熱情の間にいる、これぞ真の表現者という演技です。

何かを考えている横顔のもみあげには白髪があり、それに合った、少し老いた表情にもなっています。
たった一人で、ドラマ全体のレベルを底上げする草彅剛。
いくら主要な役とはいえ、時々しか出ないにもかかわらず、この仕上がり。素晴らしいとしか言えません。

興味深いのは、羽鳥とスズ子はアユミの凄さに気づいていることです。

世間は、アユミより断然スズ子が凄かったと騒いでいて、なんならアユミのことなどスルーしているくらいですが、長年、芸の道を歩んできた者にはわかるのです。
スズ子の最後のパワーはアユミからもらったものであったこと。その大きな力はやがて世の中を席巻するであろうと、スズ子と羽鳥はわかっているのです。それが目が高い、ということです。

スズ子は、タケシや家族にも引退しようと思っていると明かします。
当然ながらタケシは認めません。

タケシがアユミの才能に気づいてないのは、彼がぜんぜん成長してなくて、ただ芸能界に染まってしまっただけだということです。間近でスズ子を見ていても気づけなかったんですね。多分、山下(近藤芳正)だったら気づいたのではないでしょうか。

お目が高いのは、一(井上一輝)。スズ子のことより三橋満男のことばかり言っていました。三橋満男とは多分、三橋美智也がモデルでしょうか。「男女歌合戦」のモデルであろう、第7回NHK紅白歌合戦に初出場しています。

アユミもまた、どんなに楽曲が素晴らしくても、歌う者と一体化しない限り、本物にはならないこと。その人の物語と曲が融合していないと本当の感動にはならないことを若くして気づいているのです。だから自分でなければ歌えない持ち歌を歌おうと決意を新たにしたのでしょう。

最終週のサブタイトルは「世紀のうた 心のうた」。それは何かを噛み締めながら、1週間を楽しみたいと思います。


(文:木俣冬)

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