映画コラム

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2016年12月09日

「逃げ恥」みたいなエッセンス満載!「秋刀魚の味」を超オススメする5つポイント

「逃げ恥」みたいなエッセンス満載!「秋刀魚の味」を超オススメする5つポイント

現時点で、わたしのベストワン映画は、今回ご紹介する「秋刀魚の味」という作品。読み終わった後に、「秋刀魚の味」がすぐにでも観たくなるような、作品の魅力を伝えられる記事を書ければと思っております。やり遂げてみませますぞ!

秋刀魚の味 07


(C) 1962 松竹株式会社



ポイントその1
現時点で、わたしのベストワン映画です!


秋刀魚の味 08


(C) 1962 松竹株式会社


おすすめポイントその1、それは「秋刀魚の味」が、わたくしがこれまで観てきた映画の中で、ベストワン映画であるということです。

わたしは故淀川長治さんのような名のある映画評論家ではございませんし、おすぎさんのようなカリスマ性もござません。映画を観る目が肥えているという保証はどこにもないのですが、それでも、こうしてひとりの人間が恥も外聞も投げ捨てて、「秋刀魚の味がベストワンだ!」と声高らかに宣言しているという事実!

この事実こそ、まさに紛れもなくおすすめポイントの一つであると言えるのではないか思うのです。

では、なぜわたしはこれほどまでに「秋刀魚の味」に惹かれているのでしょうか。ベストワンだ!と言える根拠はどこになるのでしょうか。

おすすめポイントその2
「秋刀魚の味」なのに秋刀魚が一度も登場しない!


秋刀魚の味 05


(C) 1962 松竹株式会社


この映画、「秋刀魚の味」というタイトルで秋刀魚が一度も登場しないのです。「タイタニック」でタイタニックが登場しないのと変わらないですよ!(いや、それは違うか、、、)

とにかく、わたしは観た後に、サンマの味について思わず考えふけってしまいました。あれ?どんな味だったけなぁ、と。

近年の作品で話題となった「桐島、部活やめるってよ」でも同様に、桐島という人物が最後まで登場しないという展開でした。観客は、桐島が一体どういった人物なのか、「想像」しながら観ることになります。「秋刀魚の味」もまさに同じです。タイトルを秋刀魚の味と言っておいて、秋刀魚は登場せず、観客に想像させる。この仕掛けが、間違いなく映画の面白さを深めています。

おすすめポイントその3
テーマや作り手のまなざしが日常にある、という点。


秋刀魚の味 02


(C) 1962 松竹株式会社


そもそも「秋刀魚の味」はどんな物語なのでしょうか。ざっくり言うと、以下の通りです。

“妻に先立たれた平山周平(笠智衆)には年頃の娘・路子(岩下志麻)がいるのだが、路子に結婚はまだ早いと思っている。なので平山は見合いを薦められても気乗りしなかった。
そんなある日同窓会で中学時代の恩師・佐久間(東野英次郎)と再会する。

佐久間を家まで送った平山は、佐久間の世話に追われ婚期を逃した佐久間の娘を知る。酔いつぶれた老父を忌々しく眺める娘の姿に、平山は路子の結婚を真剣に考える。しかし路子は父親からの唐突な結婚話に怒ってしまう。“

つまり、結婚の話なのです。昔の表現になるかもしれませんが、娘が嫁いでいくことになり、その状況の中で、結婚という出来事を中心に、人と人が触れ合っていく様子がつぶさに映し出されている、そんな内容です。

一般的な映画で考えると、ほとんど起伏のないストーリーです。どんでん返しもありません。つまり地味でシブいお話だということですね笑

ですが!逆に言い換えるなら、テーマが人生や時間、日常という視点にあるので、忙しいいまを生きる私にとっては、なんだかふと、忘れていたような、とても大切な感情を思い出させてくれる、そんな心の拠り所を感じられるような映画でもあるのです。

おすすめポイントその4
どうでもいいような日常会話のやりとりにめっちゃ共感!


秋刀魚の味 04


(C) 1962 松竹株式会社


みなさんは好きな人や家族、近しい間柄の人とでしか成立しない言葉を持っていませんか?例えばわたしは、近しい関係の人と話すときは会話の中で、驚いたりした際に「パァ〜!」と言ったりします。(ますだおかだの岡田さんのパカ!というやつに似ているかもしれません)

そうした、特定の相手としか一見すると通じないような会話が、「秋刀魚の味」の中では、たくさん登場します。もちろん観客である私が見ていて、理解できる範囲で、ですが。つまり、映画の中の登場人物の心と心が通じあっているなぁと感じる瞬間が多いと思うのです。

具体的に「秋刀魚の味」に登場する、あるシーンがあります。それは、若い夫婦のある日曜日の様子が描かれます。ゴルフクラブを買いたい夫と、白い皮のハンドバッグが欲しい妻のやりとりです。
言って見れば取るに足らないような日常の一コマなのですが、なぜか心に残ってしまいます。そうした人間のちょっとしたおかしみやクスッとしてしまうユーモアラスな面を、本作ではふんだんに見ることができます。

おすすめポイントその5
あの人が!あ、あの人も!どこかで見たことある人たちが勢ぞろい!


秋刀魚の味 03


(C) 1962 松竹株式会社


いよいよ、最後のおすすめポイントです。それは、出演者がみな、輝いているということです!出演陣が兎にも角にも豪華なのです。

例えば、嫁いでいく娘役の岩下志麻さんは、象印マホービンのCMで覚えている方が多いかと思います。若い頃の一番輝いていた美しい岩下さんの姿が、映画の中で映し出されています。

他にも、恩師の先生役として登場する東野英次郎さんは、水戸黄門の黄門様ですし、主人公の息子(長男)役の佐田啓二さんは、中井貴一さんのお父様です。

このように、1962年製作の古い映画ではありますが、内面的な魅了はもちろん、映画の外側にも魅力が満載なのです。

ここで、結婚というキーワードについてもひとこと言わせてください。


秋刀魚の味 06


(C) 1962 松竹株式会社


いま飛ぶ鳥を落とす勢いのドラマ「逃げ恥」でも、恋愛を素通りして、いきなり結婚する男女の生活がコミカルに描かれています。

「秋刀魚の味」でも同様に、若い女性がお見合いを通して結婚するまでの時間の流れに焦点が当てられています。

描かれるメインが恋愛ではなく、生活という側面に変化していっているという点で、「逃げ恥」にも繋がるエッセンスが「秋刀魚の味」からも感じられると思います。つまり、恋愛中の状況にスポットが当たっているというよりは、もう少し落ち着いた日々の暮らしや、日常をベースに据えて、そこに生きる人間の様々な感情が浮かび上がってくるというわけです。こうした点こそが、「秋刀魚の味」が古い映画であるにも関わらず、いま観ても全く古さを感じさせない理由ではないでしょうか。

あぁ、ここに人間がいる、人間の変わらない生活がある。そう、ホッと思わせてくれる、なんでもないようで、トンデモナイ映画なのです。

結局、何が言いたかったのかというと、「逃げ恥」を見たあとに、「秋刀魚の味」も見てみよう!ということです。ぜひ、よろしくお願いします〜。

秋刀魚の味」はこんな価値観の人におすすめ!(まとめ)


・ハラハラドキドキというよりもホっとしたい、しみじみしたいという人

・ハレとケだったら、どちらかというとケの日が好きな人(日常が好きな人)

・オールドなモノに興味をそそられる人、古きをたずねたいという想いを持っている人

・自分なりにサンマの味を想像したい人

・いま、心身ともに疲れが溜まっている人

[この映画を見れる動画配信サイト](2016年12月9日現在配信中)
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(文:石原弘之)

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