『殿、利息でござる!』は泣けるコメディでござる!

殿、利息でござる!
(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

これまで『なくもんか』や『謝罪の王様』など多数のコメディ作品で僕らを笑わせてくれてきた阿部サダヲさんが主演ということで、今回もたくさん笑う覚悟で劇場へ足を運んだのだけれど、気づいたら胸が熱くなって涙をこらえている自分がいました。

江戸時代、破産寸前の村を救うために殿に金を貸して利息で生きのびようと奔走した男たちの実話をコメディタッチで描いた本作は、良い意味で期待を裏切ってくれる感動作だったんです。

活躍しすぎない阿部サダヲさんがもたらすかろやかな笑い

強烈な個性を持つ阿部サダヲさんが主演する映画は、良くも悪くも彼のカラーに染まりがち。

けれどあれだけポスタービジュアルでドドーンと前に出ているにもかかわらず、本作の阿部さんの存在感はちょっとひかえめ。その独特の立ち居振る舞いで明るい空気と軽妙な笑いをまき散らしながらも、物語のピースとして自然な存在になっているので、主演俳優より作品の展開自体にいつの間にか観客はぐいぐいと引きこまれていきます。

逆に藩の役人を演じた松田龍平さんの爬虫類めいたいやらしさ、冷酷ながらもどこか憎めない存在感は際だっていて、重要な役柄が印象に残ります。

他にも、阿部さんの相棒的存在を演じる瑛太さん、仲間の寺脇康文さん、妻夫木聡さん、西村雅彦さん、きたろうさんなど個性派俳優の面々も、それぞれの愉快なキャラクターをふんだんに発揮しながらも、笑いだけに偏ったコメディではない奥深さを見せてくれます。

殿、利息でござる!
(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

スクリーンデビューを飾った羽生結弦さんに鳥肌!

表題の「殿」を演じたのは、本作が映画デビューとなったフィギュアスケートの羽生結弦選手。

殿、利息でござる! 羽生結弦
(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

庶民が殿様に直接会うことなどほとんどなかった江戸時代に、突然現れるシーンで驚きまくった表情を撮りたいということで、当日までキャストにも秘密にされていたという羽生さんの出演。

びっくりするのは庶民だけかと思いきや、観ているこっちも驚き!

その表情、雰囲気、立ち居振る舞いは、まさに若くして藩主として君臨するお殿様の不遜さと選ばれし者だけが持つ風格を兼ね備えていて、その堂々とした姿に思わず鳥肌が立つほどでした。

まさかこれがスポーツ選手の、しかも映画初出演の存在感だとは誰も思わないでしょう!

泣けるコメディに元気をもらおう!

誰も刀を抜かないし、斬られることもない時代劇ですが、いつ些細な無礼を理由に斬り殺されてもおかしくない時代の緊張感と、そんな環境でも村を救うために自分の命や子孫を投げだして奔走する男たちの姿は、観る者の心を打ちます。

そしていつの時代でも、どんな場所でも、人が「大願」を成し遂げるのに必要な情熱や教えは変わらないのだなあと痛感させられます。そういう意味では、みんなで力を合わせてあきらめずにトライしていく普遍的なサクセスストーリーだと言えるかもしれません。

阿部サダヲさんが演じた、仙台藩に実在した穀田屋十三郎という人物は死ぬ直前、「私がしたことを人に語るべからず」と、自らの功績をつつしんで隠そうとしたそうですが、あれから200年余りが経った今、こうして映画作品として広く世に知られているのを見たら、雲の上で苦笑いしているかもしれませんね。

かろやかに笑って、熱い姿に心を打たれて、ほんのり胸が熱くなる泣けるコメディに、時代を超えた元気をもらってみてはいかがでしょうか?

殿、利息でござる!
(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

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(文:茅ヶ崎の竜さん

    ライタープロフィール

    茅ヶ崎の竜さん

    茅ヶ崎の竜さん

    「30代からの人生をもっと楽しむ!」ための情報を発信するフリーランスブロガー。中高時代は映画監督を目指すも、アメリカ留学直前に心変わりして挫折。「映画は失敗やしくじりもプラスに変えてくれる魔法の芸術」という言葉を胸に、あらゆるジャンルの映画を見ますが、「どんでん返し系」「家族モノ」「奮起して人生やり直す系」が特に大好物。アラフォーになってからは邦画に涙することも増えました。永遠の映画中年!

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