「おむすび」結、NSCに入ると勘違いされる【89回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第89回を紐解いていく。

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カレー問題

アヴァンはおなじみヘアサロンヨネダの吉本新喜劇的なコーナー。今日は結(橋本環奈)もいて(腕むきだし衣装が多い結)、NSCに入ったと勘違いされます。この年でお笑いを目指すとはと感心され、NSC ではなく、NSTやと、美佐江(キムラ緑子)が「T」のポーズをとるも、そこを引きでは映しません。

内場勝則さんの棒立ちは、明らかに新喜劇メソッドーーつまり舞台上なら成立するものなのだと思うのです。全体のなかの棒立ちはありなんです。でもテレビの画格だとなんか収まりが悪いんです。それをまったくすり合わせることなく事務的に撮影が進んでいる印象で、キムラさんの全身も映さない、中途半端さで、笑いどころが棚上げになってすっきりしない。

演出的には現代的にベタにやらないつもりなのかもしれませんが、芝居と演出が噛み合ってない気持ちの悪いなか、新規の客がやって来ます。

毎度のことだけれど、店内にこんなにたくさん身内がたまっている店に入れるのは、かなり勇気のある人です。あるいは鈍い人です。あるいはいますぐ切りたい切羽詰まっている人です。

勇者は、明らかに不自然なロン毛。それをバッサリ切りたいと申し出ます。バンドの夢がやぶれたので髪を切ってふつうの職につくことにしたと挫折感いっぱいの客に聖人(北村有起哉)がいいことを言って、髪の毛も短くさっぱりさせて送り出すという、短い、ちょっといいエピソードに、翔也(佐野勇斗)が感動しています。

翔也は、夢やぶれた者なので、共感するのでしょう。それに、どうやら理容師に興味を持っているようで。彼もまた新たな夢に向かう背中を押されているような……(先読みはあまりしないようにします)。

ここまでアヴァンです。北村有起哉さんはいつの間にか、銀座の品のいい理容師みたいな雰囲気にシフトチェンジしているように感じます。年齢を重ねた表現をするうえで、これを選択したのかなと想像します。神戸という場所柄も加味したのかも。ただ、さくら通り商店街が、高級住宅地の商店街には見えないので(すみません)いまひとつしっくり来ないのですが……。ほら、神戸とひとくちにいっても広くて、海側山側とか地域によってもだいぶ雰囲気が違います。その神戸らしさがこのドラマではよくわからないのですよ。雑多な商店街に、腕のいい、上品な理容師がやってる店、というのもありかとは思います。

タイトルバックが明けると、病院です。結は、患者・晴斗(髙田幸季)が食事を食べないことを心配し、何か食べたいものがないかと訊ねます。カレーと応えますが、カレーはこれまでも出ていて、食べていないことが判明します。なぜ、いつも食べないのにカレーと言ったのかーー。結が頭をひねった結果、食べたいのは亡くなったお父さん特製のカレーであることを突き止めました。ドラマのワンエピソードにありそうなやつですね。結はさっそく、調理担当の人に特製カレーを頼みます。

夕方16時、ぎりぎりの時間に一食、別途、カレー作成を頼むのは、社食で、午前11時くらいから急に日替わりを作り出すことと同じような感覚でしょうか。ありえないことをやってみせるのがドラマ。ありえないからやらないではドラマになりません。いやでも、牛すじが無理でもスパイスやチョコで味を近づけてくれないとか言ってますが、この場合、お父さんのカレーを完全再現しないと意味ないんじゃないかという気もするのですが(牛すじ、トマト、絶対!ってメモに書いてあるのに)。病室に左利きの患者を入れたりして多様性の表現には毎度気を使っているのに。どう考えても聞こえる小声とかも気になるし(小声で書いたつもり)。この、絶対が入ってない、なんとか近づけたカレーみたいなドラマ。でもーー

結のアイデアは成功し、晴斗はカレーをたいらげます。最初は、何も期待してない彼が、なつかしい香りを感じて、鼻をカレーに近づけている姿が印象的でした。こういうところは丁寧さが感じられます。

短い時間でありものでもなんとかがんばってつくったカレー。「おむすび」はそういうドラマなのではないでしょうか。委託の管理栄養士の柿沼(しまずい香奈)が根本ノンジさんに見えてきました。

柿沼は委託、結は正規。この立場の違いを思うと、柿沼の苛立ちもわからなくはありません。委託業者の立場は弱いんじゃないかな。これまでルールのなかで一生懸命やってきたのに、病院側からいろいろ注文つけられたらきついですよね。

感じ悪い病院スタッフ描写に関しては、飛ばしまして、「あさイチ」で久しぶりに朝ドラ受けがありました。博多華丸さんの”こうだったらいいのにな劇場”的な発言があり、大吉さんもこうだったらいいのになを、M-1グランプリの審査員のような言い方で発言していました。

やっぱり、どこか物足りなさがあるのでしょう。ひとつひとつの場面や会話が練りきれてないことを感じるもどかしさを、博多華丸・大吉さんのようなプロが暗に言ってくださるとほっとします。華丸さんは、根拠をちゃんと述べていることにも納得です。たぶん、吉本ネタがあったから、お笑いネタでつなげたのではないかと思いますが。彼らの評価はやさしく、逃げ道を残しています。見習いたいものです。大吉さん、何点つけたか明言してほしかった。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第18週あらすじ}–

「おむすび」第18週あらすじ

第18週 「 おむすび、管理栄養士になる 」 2/3-2/7

結(橋本環奈)は無事、平成26年に管理栄養士の資格を取得し、星河電器社員食堂を退社。大阪の総合病院で働き始める。平成30年、結は管理栄養士として4年目を迎えていた。所属する栄養科の科長の塚本 (濱田マリ)は戦国武将好きで、会話にちょいちょい武将ネタが入ってくる。一方、娘の花(宮崎莉里沙)は8歳になり、翔也(佐野勇斗)はちょくちょくヘアサロンヨネダの手伝いに行く。そんな折、結はひょんなことから自分の担当ではない子どもの患者が気にかかり、塚本科長は結に NST (栄養管理サポートチーム)に入ることを勧める。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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