映画「マエストロ!」ティーチイン試写会・小林聖太郎監督公開質問|全文書き起こし(2/2)
(前編はこちら→ 映画「マエストロ!」ティーチイン試写会・小林聖太郎監督公開質問|全文書き起こし(1/2))
映画「マエストロ!」ティーチイン試写会公開質問・後編
[八雲]
次にmiwaさんについての質問です。「このたびスクリーンデビューということですが、起用した理由をお教えいただけますか?」
[監督]
miwaさんが演じた『橘あまね』というキャラクターなのですが、一歩間違えると漫画チックなんですね、原作が漫画だから当然ですけど。舟に住んでて、名もなき素人なんだけど天才みたいな。そういう役を、既に知られている女優さんがやると、どうも『オシバイ』に見えてしまう気がしたので、新鮮な方にやってもらいたいなと思っていました。
そんな時に、どなたかから「miwaさんはどうですか?」と言われまして、でも当時はmiwaさんをあまり良く知らなくて。コンサート映像やプロモーションビデオを見せてもらったんですが、それで決めるわけにもいかないので、無理を言って直接会わせていただきました。
色々お話を伺って、その場で簡単なお芝居もしていただいて。お芝居や関西弁をちょっと直した時の変化というか反応も見て「行けるんじゃないかな」ということで、あまね役をお願いすることにしました。
ミュージシャンなので、耳がすごく良いですし、頭も柔軟なので、まったく苦労はしませんでした。ただ、彼女は映画が初挑戦なので、撮影前はとても不安だったみたいなんです。そこで、演出部とプロデューサーと僕とで『素人即席劇団』を結成しまして、出前の定食を食べながら「じゃあ今日は食堂のシーンをやってみよう」とか、色んな場面の練習をしたりしましたね。
[八雲]
松坂桃李さんについても質問が届いています。松坂さんの印象はいかがでしたでしょうか?
[監督]
いや〜、いい人なんですよ。彼が40歳になった時、ずっとこのままの『いい人』でいられるのか?というアラ探しをしたくなるくらい、悪いところが見当たらない人格者です。演技に対しても熱心ですしね。
[八雲]
爽やかですしね。本当に役ピッタリみたいな!
[監督]
そうなんですよ。松坂くんが演じる『香坂真一』という役は、クラシックな感じで、2〜3歳から楽器に親しむような育ちで、若くしてコンサートマスターになるだけの腕もあって、楽団のみんなをまとめる品格もあって。そんな人物ですから、キャスティングの際には松坂くんそのものだと思いました。完璧すぎて、先が末恐ろしいですよね。自分が26歳だった時のことを考えるとゴメンなさいって感じです(笑)
[八雲]
続いての質問です。「エキストラで参加させていただきました。今回、大勢のエキストラを使ってらっしゃいましたが、苦労されたことはありますか?」
[監督]
苦労なんてありません。あんなに多くの方に集まっていただいて、感謝しかないです。
[八雲]
(エキストラで参加された質問者に向けて)撮影は楽しかったですか?
[質問者]
とても楽しかったです。
[監督]
ありがとうございます。朝から晩まで大変でした。
[八雲]
あれだけ多くの方々がいらっしゃったからこそ、臨場感たっぷりの作品が産まれたのでしょうね。
[監督]
そうですね。あとは俳優さん達の心構えというのでしょうか。あの広いコンサート会場に100人くらいしかいない観客をCGで増やすのと、1000人のエキストラが演奏を聴いててくれるのとでは、ぜんぜん違いますからね。
[八雲]
時間も迫ってまいりましたので、これが最後の質問となります。「小林監督ご自身は、クラシックはお好きですか?」という質問なのですがいかかがですか?
[監督]
この作品を始めたのが2011年の春なんですが、それまでは洋楽で黒めの音楽、ブラックミュージックが好きでずっと聴いていました。高校や大学の時にもね、周りにクラシック好きの人がチラホラいたんですよ。そういう人が「音楽として面白いから、聴かないと損だよ」みたいに、ちょっと上から目線で勧めてくるんですね。
「何だよ、クラシックがそんなに偉いのかよ」みたいな反発もあったりして、あまり聴かずにいたんです。でも映画の仕事をやるようになってからは、映画音楽の勉強の為にオーケストラ演奏も聴かなきゃと思って『クラシックベスト』とか『モーツァルト100』とか、初心者向けのCDを手に取るようになりました。
そんな程度だったんですけど、この映画をやることになってから準備や資金集めなどで動きが停滞していた2年の間に、取材や勉強と並行して演奏会に行ったり、クラシックをちゃんと聴くようにしました。ちょっと今のところ『運命』と『未完成』この2曲に偏ってるので(笑)これからはもっと引き出しを増やしていきたいと思います。
[八雲]
ひとつの楽曲を、繰り返し様々なオーケストラで聴いていると、その違いが解るようになるのですか?
[監督]
ええ、これすごくオススメです。まず、こういった映画で演奏を聴いて、何となくちょっと知った気になりましたよね。1曲だいたい30分程度あるんですけど、これを今度改めて生演奏で聴きに行くのが結構いいと思います。映画でもかなり聴こえるようにもしているのですが、やっぱり生の演奏の方がより多くの音を聴くことができます。しかもステージ上の演奏者の動きを見ながら、その場の空気自体が振動する音楽を聴くと、今まで聴こえなかった音が聴こえたりもするんです。
また、同じ楽団の演奏でも日によって音が違いますし、指揮者によっても違います。
僕の場合、アマチュアのコンサートに行くのが楽しかったです。演奏を聴いていると、1つのメロディに聴こえるはずのところで、突然トロンボーンが「プワー!」って鳴ったりしてね(笑)今までまとまって聴こえてた音が、急にバラバラになったことで初めて各々の存在が解るみたいな。でも、そういう必死さも含めて、アマチュア楽団の面白さがあるように感じます。
まずは、同じ曲を色んな形で何度も聞くってのが良いと思います。曲について深く知ることもできるし。
[八雲]
じゃあ皆さん、今日から『運命』と『未完成』をたくさん、色んな風に聴きましょう。
[監督]
ぜひぜひ(笑)インターネットでちょっと調べると、アマチュア楽団の無料演奏会の情報まですぐに出てきますから。本当オススメですよ。
それとですね、これまで助監督としてバンドものの音楽映画に携わることもありました。そうすると同じ曲を100回200回と聴かなきゃならないんですが、吐きそうになっていくんです。今でも頭から消えない音楽が何曲かあるんですよ。辛い思い出がワーッと思い出されるようなね(苦笑)今回は3年間『運命』と『未完成』ほぼこの2曲を千回万回、ちょっと解らないくらいに聴き込んだんですが、不思議と飽きないんです。クラシックって凄いですよね。さっき話した高校時代の同級生に会ったらぜひ言いたいです。「クラシック、ほんとイイよね〜」って。
[八雲]
今度は話が合いそうですね。
[監督]
ですね〜!
[八雲]
伺えば伺うほど奥の深いお話ばかりでしたが、ティーチインのお時間はここで終了となります。貴重なお話、本当にありがとうございました。
[監督]
ありがとうございました。
(全文ここまで)
映画「マエストロ!」は絶賛全国ロードショー中
小林聖太郎監督は終始真剣に耳を傾けていただき、会場は思わず聴き入りながらも、多くの笑いに包まれる楽しい公開質問トークとなりました。
映画「マエストロ!」は現在絶賛全国ロードショー中です。気になる方は、ぜひ映画館に足を運ばれてみてはいかがですか?
映画「マエストロ!」公式サイト
(文・シネマズ編集部/大場ミミコ)
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