映画コラム

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2015年03月07日

生きろ!と伝えたい―映画『ソロモンの偽証』シネマズ独占インタビュー

生きろ!と伝えたい―映画『ソロモンの偽証』シネマズ独占インタビュー


藤野涼子たちが映画の中で生きているのを見せるため


――撮影手法に関してお伺いしたいのですが、冒頭の雪のシーンで、特殊な機材で撮影をしたとお伺いしたのですが?

ソロモンの偽証 独占インタビュー



成島監督
通常の撮影用クレーンだと屋上までの高さが足りなかったんです。そこでチームが相談して高層ビルの建設に使う工業用クレーンを大林組さんに協力してもらって使うことにしたんです。

でも、そのままだと風で揺れちゃって自分が描いている通りのまっすぐに上がっていく画が撮れない。そこで、モーターで揺れを制御する"ジャイロ"システムを使いました

あのメインタイトルのカットにはすごいこだわりを持っていましたから、どうしてもやりたいと思った。ジャイロ付きの工業用クレーンを映画で使った例はないんじゃないかな?特許取っておけばよかったかな(笑)

ソロモンの偽証 撮影風景



※ジャイロ付き工業用クレーンでの撮影の模様

――ほかにも技術的に工夫や苦労をされた点はありますか。

成島監督
すごく専門的な話になりますが『アナモフィックレンズ』を使ったことで被写界深度(ピントの合う範囲)が非常に浅いこととの戦いはずっとありました。

ピントが合っているときにそこから被写体が動くとボケてしまう。光を足すか、カットを変えないといけない。今の映画はデジタルで撮るから被写界深度が深くて、大きく動いてもパンフォーカスできるんだけど、今回はパンフォーカスできなくてもいいからアナモフィックレンズを使った撮影を選択しました。

普通は35mmで撮って上下切ればシネスコ(シネマスコープサイズ)になる。でも、わざわざ圧縮して伸ばしてできる微妙なゆがみこそが、アナモ独特の画作りなんです。

――アナモだからこその画にこだわったのですね。

成島監督
実はそれは黒澤組のころからずっとやってることなんです。ただし、今やろうとすると照明もカメラもレンズも高くてお金がかかっちゃう。デジタルの方がはるかに安い。けれどやっぱり、主人公の藤野涼子たちが映画の中で生きているというのを見せるために、どうしてもアナモでやりたかったんです。

今回は画作りで、特に後篇の裁判のシーンでは光で勝負しました。もちろん予算の関係もあるけど、本当に我々が持っている技術をぜんぶ出し切って、ものすごく贅沢をして作った映画です。逆に、最近やらないようなアナログに戻って撮った感はありますね。

後篇では開放されてハッピーエンドで終わる


――後篇では問題が晴れてハッピーエンドになり"U2"の曲で終わるそうですが?

成島監督
前篇のエンディングのアダージョからじゃ全然想像できないでしょ?(笑)後篇では、みんなが抱えている問題が解決し、全部が見えて解放され、そしてスッキリする。この作品を観てくれる人の中に、作品の中で亡くなってしまう"彼ら"がいると思うんです。彼らに観せたいんです。U2の曲で終わり、そして「生きろ!」と伝えたいんです

――U2の『With or Without You』を選ばれた理由は。

成島監督
最後は僕の趣味かな(笑)あの行進曲風でワンフレーズが繰り返されるっていうのがとても力強い。だから選びました。あの曲は好きでずっと聞いていましたから、あのラストにピッタリだと思いました。

――最後に『後篇・裁判』の公開を待つみなさんへメッセージをお願いします。

成島出監督 ソロモンの偽証 独占インタビュー



成島監督
後篇では彼女たちが解放されてハッピーエンドで終わります。前篇では残酷なこと辛いこと苦しいことがある。しかし、最後に彼女たち自身の手で裁判をやり切ることにより、謎が解けていき、そして人の魂が救われる。魂が救われるっていうのが、原作者の宮部みゆきさんの独特な世界観。

柏木卓也は殉教者のようだったと言ってくれる方がいましたが、後篇についてはまさしく救いがあるということを芯に撮りました。前篇の暗いアダージョから後篇のU2で終わる心地良さを一番感じてもらいたいので、ぜひ楽しんで観てほしいと思います。

――どうもありがとうございました。

独占インタビューを終えて


インタビューを通じ、彼女たちのさまざまな心境がどう変わっていくかが非常に楽しみに感じました。ボリュームのある原作を前篇・後篇にわけて主人公の藤野涼子たちの心境をたっぷり描いた本作。成島監督がおっしゃっていた今作に対するこだわりの画作りも楽しみにして、ぜひ御覧ください。

ソロモンの偽証 独占インタビュー



映画『ソロモンの偽証』は、『前篇・事件』が本日2015年3月7日(土)より公開、『後篇・裁判』が2015年4月11日(土)より公開です。



(取材・アスカ)

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