2015年03月23日

『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』トークセッションレポ AJ2015

『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』トークセッションレポ AJ2015

原作の連載開始から25周年が経過し、その特別企画が様々行われている大人気作『攻殻機動隊』。その大きな一つに攻殻機動隊で描かれるテクノロジーをリアルな社会での再現性を追求するプロジェクトが『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』。


2015年3月21日東京ビッグサイトで開催された『AnimeJapan2015』内のセミナーステージにて『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』のトークセッションが4名の有識者によって行われました。

登壇されたのは

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  稲見昌彦



稲見昌彦さん(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  南澤孝太



南澤孝太さん(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 准教授)

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT 遠藤謙



遠藤謙さん(ソニーコンピュータサイエンス研究所 研究員/Xiborg 代表取締役)

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  冲方丁



そして『攻殻機動隊 新劇場版』の脚本を手がけられている冲方丁さんの4氏です。

『義体』を語る


攻殻機動隊には、その世界ならではの様々な用語が登場します。

  • 光学迷彩(視覚的に対象物を透明化する技術です)

  • 電脳(電子頭脳。現在はコンピューターという言葉が一般的です)

  • 義体(サイボーグ化された身体およびその一部です)


これらのは、昔は言葉の意味を説明することも大変でしたが、今は光学迷彩にしてもサイボーグの部品にしても、攻殻機動隊の視聴者に回りくどい説明をすることもなく表現できるようになりました。そうした時代の進化を踏まえ、今回は『超人スポーツ協会』における義体の研究に関しての熱いトークが繰り広げられました。

視力の悪い人が眼鏡をかけることを、世の中の人は「障害を克服している・努力している」とあまり考えないのが現代です。しかし、たとえば義足をつけている方に対しては、眼鏡に比べれば「障害に立ち向かって努力している」と思われていることでしょう。

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT 遠藤謙



一つの例として、パラリンピックの100メートル走がオリンピックの100メートル走の記録を上回る時代が来たら、足に障害を持つ方の社会活動が今以上に普通のものになっているはずだと遠藤謙さんが力説されていました。

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  南澤孝太



さらに南澤孝太さんは、糸電話のように二つの紙コップを糸状のデバイスで接続し、片方のコップに砂を入れると、もう片方のコップにも砂が入った振動が伝わる、という技術をデモンストレーションを行いました。こちらはインターネットを介して、遠くはなれた場所にいる人に『触覚』を伝えることが出来るというもの。

実際に会場で体感された冲方丁さんは、驚きのあまりに立ち上がる場面もあり、そのあまりの驚き具合に会場が大いに盛り上がっていました。

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  冲方丁


テクノロジーの進化と目的


アニメの中で人が透けてしまう『光学迷彩』。これもかつては夢物語かと思われていました。しかし、稲見昌彦さんは、洋服を着た人の服越しに、後を通る車が透けて見えたり、バックする車の向こう側がいかにも透明になって観えているような技術を紹介。こちらも会場から驚きの声が上がり、登壇者の方々も興奮されていました。

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT  稲見昌彦



2004年1月に放送された『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』第1話で"個別の11人"による人質事件を制圧した際に存分に使われた"光学迷彩"が、現実のものとして実用に近づいていることが見て取れました。11年前のあの時代、光学迷彩は夢の技術だったでしょうか?それともすでに想定されていた技術だったのでしょうか…?

攻殻機動隊 REALIZE PROJECT   AnimeJapan2015



しかし登壇者のみなさんは警鐘も鳴らします。テクノロジーの進化を戦闘のためだけに利用したり描いたりすることがとても多いということです。平和的な利用として、義体の考え方を十分に活用した新しいスポーツ大会を開いたり、SFとしては義体を使うことで"新しい自分"を発見した人の生活を見せることの大切さも熱く語っていました。

最先端の技術の斜め上を行く


攻殻機動隊として現実に届いていなかった技術・存在しない技術を見せてきたものがリアルな時代の変化で再現できるようになってきています。フィクションとテクノロジーが互いに絡み合って進化してきているという現実ですし、科学者が見る夢の一例としてフィクションが参考にされている例もあるようです。

その進化をこれからも見ながらリアライズプロジェクトを進めたい、と締めくくられて45分のセッションはあっという間に終了しました。
SFで見る技術が単なる夢物語でないことが分かるだけで、私たちのワクワク感は途轍もなく増幅するのだなあと感じられたセッションでした。

『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』公式サイト

新たな攻殻機動隊の世界の幕開け!


そして25周年記念作品となる『攻殻機動隊 新劇場版』が2015年6月20日から全国の映画館で公開となります。

攻殻機動隊 新劇場版



さらにストーリー上、同作につながるアニメ『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』も2015年4月からテレビ放送されるなど、まさに新しき攻殻機動隊の幕開けとなる今年。やがてくる攻殻機動隊の世界へつながる一大プロジェクト『REALIZE PROJECT』とともに、アニメやSFとしての攻殻機動隊と現実のテクノロジーの融合に胸が弾む年となることでしょう。その世界への入り口を自身の目で、身体で体感されてみてはいかがでしょうか。



(文/奥野大児)

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