映画コラム
フランス映画祭オープニング作品『エール!』出演者によるトークショーレポート
フランス映画祭オープニング作品『エール!』出演者によるトークショーレポート
難しい…しかし、やり甲斐のあるテーマ
トークショーに登壇したのは、『エール!』でメガホンを取ったエリック・ラルティゴ監督と、主演女優のルアンヌ・エメラさん。
まずはじめに、司会者からこのような質問が投げかけられました。
質問:手話が中心に成り立つ家族の物語を、どのように思いついたのですか?
質問に対し、エリック監督は優しい笑みを浮かべながら、次のように語りました。
エリック監督「この話には、そもそもヴィクトリア・ドゥヴォスのシナリオがありました。彼女はフランスでは有名なコメディエンヌです。彼女の父親のアシスタントが、今回上映された『エール!』の主人公・ポーラ同様、家族で1人だけ健常者だったそうです。その話をヴィクトリアがシナリオにし、それを僕が10ヶ月かけて脚色しました。そして『エール!』という映画が誕生しました。」
質問:そのような背景のシナリオを読んで、難しそうだから止めておこうとは思いませんでしたか? それとも、チャレンジし甲斐のある内容だと思ったのでしょうか?
エリック「もちろん難しいと思いました。現実的に映画化するとなると、さまざまな問題があります。例えば手話であったり、手話をしながら歌を歌ったりすることです。しかも撮影当時のルアンヌは、まだ若い思春期の子供で、集中力もありませんでした。でも私は、映画を撮ることでドッキリするのが好きなんです。今回も例外にもれず、ルアンヌからドキドキさせられたので良かったです。」
歌手&女優のシンデレラガール・ルアンヌ・エメラ
質問:ルアンヌさんが、この映画に出演したきっかけは?
ルアンヌ「フランスでThe Voiceという音楽オーディション番組があるのですが、私はその番組に出場していました。…で、それを見たエリック監督が採用してくれたんです。最初にスクリーンテストを受けに行ったのですが、それが本当に最低で…。なぜ私が採用され、今ここに座っているのか分かりません。それくらい奇跡的な出来でした。」
質問:彼女を気に入って呼んでみたものの、スクリーンテストでNGを出したのですか?
エリック「確かにスクリーンテストの結果は全て悪く、今思うと『なぜ彼女を採用したのだろう?』と不思議でなりません。しかし1つの錬金術というか、化学反応が起こったのでしょうか。無意識に『彼女しかいない』と思ったんです。
彼女は瑞々しさ、自然さ、自発さを併せ持つ、類まれなる歌手です。演技では、テスト中で3秒ぐらい素晴らしい瞬間があったのですが、一本の映画を作る際には、その素晴らしい瞬間を1時間半続けなければなりません。きっと私は、それに成功したのかもしれませんね(笑)。」
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