戦後70年の今、戦争を改めて考える―半藤一利&原田眞人監督フォーラム全文
はじめるのは簡単、終えるのは命がけの努力が必要
天日:
そろそろまとめに入りたいと思います。今年は戦後70年の節目の年ですけど、終戦の日、1945年8月15日が戦後の日本に何をもたらしたのか、現在どのような意味を持っているのか、半藤先生にお話を頂きたいと思います。
半藤:
映画を観ていただいても、私の本を読んで頂いてもわかると思います。とにかく戦争というものは、はじめるのは簡単なんです。しかし終えるということは、ものすごく命がけの努力をしなきゃならない人たちが、たくさんいなければ終戦という形に終えることが出来ないということが、この本を書きながら痛感したことです。
あの時代にいろんな人にインタビューして話しを聞いたんですが、ほんとに一番聞きたかったのは昭和天皇なんですね。昭和天皇にあの時代インタビューなんて、とんでもない話ですから、私の本の中では「と、言った」としか書いてないんです。
「それはその時顔をしかめて言った」とか「昭和天皇はその時に怒って言った」とか「唇を噛み締めて言った」とか形容詞を入れると、もう少しドラマチックになるんだけどなと思いながらも「と、言った」としか書いてないんですが、とにかく昭和天皇は、最後になってよく決断されたということは、映画を観ていただければわかると思います。
そのくらい戦争というのは、始めるのは簡単ですが終えるのは大変です。「戦争を永遠に日本はしない」ということを決意したほうが、いいんじゃないかというのが私の感想でございます。
正しく歴史を解釈し、声を出していかなきゃいけない時期
天日:
原田監督、結びとしてこの映画で描かれたかったことをお願いします。
監督:
まさに半藤先生がおっしゃったとおり、戦争というのは終結させるのがいかに大変かという。
21世紀になっていろんな形でその昭和天皇を論ずる傾向が出てきました。これまでも、例えば海外のジャーナリスト、学者でいうと、1番最初に出てきたのが多分1966年のレナード・モズレーの『天皇ヒロヒト』だと思うんですが、そのあと1971年にディビット・バーガミニというのが『天皇の陰謀』というのを書いて、これはとんでも本ですけど、全て戦争の陰には天皇の腹黒い陰謀というものがあったという。
で、こういうものは、エドウィン・O・ライシャワーさん達がまだアメリカでご存命だったので、ライシャワーさんというのは駐日大使をつとめられたし、昭和天皇にもお会いになられているし、この人達がもう全部否定してくれたんですね。
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