戦後70年の今、戦争を改めて考える―半藤一利&原田眞人監督フォーラム全文
監督:
もちろん日本でも否定しましたけれども、それが21世紀に入って変わってきちゃった。歪められた昭和天皇像を書いたハーバート・ビックスの『昭和天皇』という本がピューリッツァー賞なんか取っちゃっているんですね。
これはもう間違いだらけの本で、そのことは日本でも指摘されている。僕はアメリカで育っていますからアメリカのことすごく好きなんですけど、いまだにまだアメリカ人と話してみると、やっぱり昭和天皇に関しては、どうも解釈が違うなというのがあるんですね。これ多分ビックス本の影響かなという気がしています。
この映画は1945年の4月から始まりますけど、その2ヶ月前、吉田茂さんなどに煽られて近衛文麿以下重臣たちが昭和天皇に和平を持ちかけるというプロセスが、半藤先生の『原爆の落ちた日に』にものすごく詳しく書いているんですね。
この事象を取り上げて、ねじ曲がった取り上げ方をしているのがビックス本、それからその他色々日本にもそういう学者がいるんですが、その時に近衛文麿が和平を持ちかけたのに昭和天皇は「いやいや、まだもっと戦って、もう一発叩いてからだ」って言ったというんです。けれど、そんな会話じゃないんです。
要するに近衛文麿が、開戦の時に内閣を投げ出して、その3年4ヶ月後にはじめて昭和天皇に会ったらいきなり和平を持ちだしてきて「軍部の中に共産主義者が大勢いるから危険だ、日本はこのまま戦っていたら悪になってしまう」ってそういうなこと言ったって、昭和天皇が認めるわけがないじゃないですか。
そういうようなやりとりがあって、昭和天皇の中で「本当にこれは和平に動くためには腹を据えて動かなければいけないな」というところから多分鈴木貫太郎さんというのが出てきているんだと思うんですね。
ですから、この映画の前談のところですね、そのへんのところを詳しく知りたければ、半藤先生が最近改訂版を出された『原爆の落ちた日』、これにそのプロセスが書かれています。本を昨日、一昨日読んですごくそこに影響を受けているんでこんな長くなっちゃいましたけれど、要は昭和天皇を含めて貫太郎さん、阿南陸将、この3人が軍を無くして、国を残すという決断をしました。それが70年前なんです。我々の今があるのは、そのおかげです。
ところが残念ながら、最近政治家は都合のいいように歴史を解釈して、民意を無視してどんどんおかしな方向に日本を進めていっていますよね。ですから、我々は本当に歴史を正しく解釈して、どこからきてどこへ行くのかというのをもう一回確認して声に出していかなきゃいけない時期に来ていると思います。
そういう大きな時期にこの映画、半藤先生の大傑作ノンフィクションが、こういう俳優たちによって演じられて、映画として、海外を含めた広くの人たちに公開されるということは、大きな意義を感じています。ぜひこの映画、みなさん応援してください。よろしくお願いします。
映画『日本のいちばん長い日』は2015年8月8日より公開。
(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
(取材・黒宮丈治)
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