映画コラム
死んでもエベレストには登りたくない!3Dがリアルすぎる衝撃作『エベレスト 3D』レビュー
死んでもエベレストには登りたくない!3Dがリアルすぎる衝撃作『エベレスト 3D』レビュー
「人間は旅客機と同じ高さで、動くようにできていない」
映画『エベレスト 3D』に出てくるこのセリフの通り、標高8,000メートルを超えるエベレストという山は、そもそも人間が生存できる場所ではないんです。
草木も生えず、ヘリコプターも飛べない、ふつうの人が登ったら高山病でたちまち倒れてしまうような過酷な山なのに、それでも毎年多くの人が世界最高峰に魅せられて、命の危険を顧みずに登頂に挑戦します。
しかも1人65,000ドルも払って、ネパールで何ヶ月もトレーニングや調整をして、ようやっとその人間が動くようにはできていない「地球上で最も危険な場所」へ行けるんです。
ぶっちゃけ、ありえないわー!(笑)
よっぽどの大金持ちか、よっぽど山を愛している人じゃないと、そこまで人生を懸けることなんてできないでしょ。
逆に言うと、それほどの価値がある「エベレスト登頂」という夢を、劇場でリアルに味わうことができるのが、本作『エベレスト 3D』なんです。
実際に起こった「1996年のエベレスト大量遭難」
とはいえ、がんばって世界一の山に登ってバンザーイ!っていうわけにはいきません。
本作は、1996年に起きたエベレスト登山史上最悪の遭難事故を基にしているので、とってもヤバイ展開です。緊迫感でビリビリです。
っていうか、みんな基本的に死と隣り合わせです。死にます。エベレスト怖すぎです。
そんなエベレストの過酷さと恐怖を、あくまでもリアルに、わざとらしい見せ場も作らず、淡々と描いているところが、まさにこの映画の一番怖いところです。
登頂に成功しても、ジャーンなんて壮大な音楽や演出がされることもなく、それなりに歓喜する姿はあるものの、すぐに高山の厳しい環境に我に返る人々が描かれます。
人はあっけなく滑落し、あっけなく氷の下で動かなくなります。
キャンプまであとたった数百メートルの場所で、ブリザードに阻まれた人たちは、人生に終止符を打たれます。
ドキュメンタリーではなく映画作品なので、夫婦愛や人々のしがらみなどのドラマも描かれてはいるんです。
主役ではないけれど、キーラ・ナイトレイやサム・ワーシントンなどのスターどころも出てますし。
けれどその中心にふんぞりかえるのは、もう圧倒的に山です。世界一高く、地球上で一番危険な山です。
どれだけ最新の装備を調えても、大金を払っても、修練を積んだプロフェッショナルの登山家がいても、山に慣れ親しんだシェルパがいても、大自然の圧倒的な存在の前では、人間は絶望的にちっぽけで無力なんです。
そ・れ・で・も、
そこまで命を危険にさらしても、登山ルートには凍死した遺体が今も100体以上残されたままと
いう異常な場所であっても、人々はエベレスト山頂を目指すのです。
なんで???
手記や関連本で事故の詳細をリアルに知る
本作は過酷な環境を再現した優れたディザスター・ムービーですが、生還者の手記があることもあり、かなり事実に忠実に描かれているようです。
僕は鑑賞後にインターネットでこの「1996年のエベレスト大量遭難」を調べてみましたが、Wikipediaを筆頭に様々な記録が残っていました。
アマチュアの登山家でも、お金を払ってプロのガイドをつければエベレストに登れる商業登山ツアーが始まったばかりの時期であったり、南アフリカや台湾など他国のチームとの連携がうまくいかなかったり、ここまでの悲惨な遭難事故が起きた背景には、様々な問題が見え隠れします。
実際にこの事故から生還した方たちの手記も出版されているので、ネットの情報と併せてその事実を活字で追うと、この映画の圧倒的リアルをもう一度味わうことができるでしょう。
劇中に「なぜエベレストに登るんだ?」とみんなに質問するシーンがあります。
人それぞれいろんな答えを出すんだけど、僕にはどれも響いてきませんでした。あの過酷さを人生に受け入れる用意はとてもできません。
けれどエベレストという山は、山麓のベースキャンプから頂上を眺めるだけでも、涙が出てくると言います。
「世界で一番高い山」には、危険が伴うぶんも含めて、理屈ではない魅力があるようです。
この映画を見て「僕は死んでもエベレストには登らないぞ!」と決意を強くしましたが、一度この目でその雄大な姿を見てみたいな、とは思っています。
ぜひ劇場の大スクリーンで、できれば大音響と緻密な映像のIMAXで、この圧倒的なリアルを体感してみてください。
(文:りゅう)
公式サイト http://everestmovie.jp/
(c) Universal Pictures
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