『家族はつらいよ』完成披露試写会、山田監督は賑やかに鑑賞することを希望
『家族はつらいよ』の完成披露試写会が19日、朝日スクエアで行われ、山田洋次監督、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、中嶋朋子、妻夫木聡、蒼井優が登壇した。舞台あいさつでは映画の魅力や役柄、またつらかったエピソードが語られた。
山田監督は「こんなにたくさんの方がおこしくださり嬉しい。一昨年の秋に完成していたが、いろいろな事情で封切りを延期した。今日完成披露試写で、出演者と久しぶりに会ったのに、こないだ会ったところみたいな気分になる」とあいさつした。
橋爪は「昨日の大雪の雪かきをしようと思って、雪かきした。玄関に戻ってみると、雪崩のような音が聞こえてきて、玄関ホールの屋根から雪が落ちてきた。戻りかけて、落ちてきたから、いろいろ考え、またやらなきゃとか、考えてる自分を客観的に見ている気分になった。大した芝居はしないが、ため息ついた自分の顔は面白いだろうなと思った。この映画はそういう映画」と映画について説明した。
「『男はつらいよ』という映画を観客として見ていた。隣のおばさんでもいいから出演したかった」と吉行は話し、「20年経ってやっと『家族はつらいよ』に出られた。『つらいよ』という部分は一緒だから嬉しい」と感無量。
西村は「さっき鏡をみていたら、皮膚がめくれていて、とったほうがいいなと思って引っ張ったら血がでた。で、また鏡を見たら血が固まっていた。いまはメイクでごまかしている。メイクに毒素がなければいいな」と独特の言い回しで会場を笑わせた。
それを受け中嶋は「あの兄をもつ妹役を演じた。あの兄が生真面目な失態を繰り返したり、家族ってあったかいな~とか家族という団体でいるのは難しいな~と思う作品に仕上がっている」と西村を指差しながら作品についてまとめた。
妻夫木は「東京家族に続き、ちょっと違う家族を演じた。ほんとに今回は東京家族と違う空気で演じた。皆戦友のような空気でやっていた。一人戦場にでて帰ってきてお疲れ様という感じで面白かった」とキャストの間柄について説明。
妻夫木の婚約者役を演じた蒼井は「役作りでショパンの練習をする妻夫木くんを横に、現場見学にくるお客さんのお土産を食べていた」と笑顔。また「私はこれから家族になる立場の人間だったので、お客さんに近い立場で現場にいた。笑を堪えるのに必死で大変だった」と撮影が楽しかった様子。
タイトルにちなんで、つらかったことはという質問について、橋爪は「監督の映画というのはとりたて喜劇ではないが、オーバーなことはさせてもらえない。嘘をつくような芝居はできないという雰囲気がずっと撮影所に流れている」というと、すかさず山田監督は「必要にして十分なという言葉がある。やりすぎても構わない。的確であれば」と切り返し「そういう現場です」と苦笑いを浮かべるやりとりも。
西村は「つらいといえばつらい。目の前にあることをいい経験させてもらっていると思えば、つらいと思うこともなく。つらさというのは振り返って共有するもの。この作品を通して、共演者につらいことを話せる場を設けてもらい、あのときつらかったんだなと思ってもらった」と話すと、次の順番の妻夫木は「このあといやだな。どうすればいいんだろう。この空気がつらい」やりづらそうに話し観客を沸かせた。
最後に山田監督は「喜劇をつくるからといって、片意地貼って作っているわけではない。映画を始まる前に静粛にみてくださいとかテロップがでる。ああいうのは納得しない。面白かったら笑っていいと思う。隣の人と語り合っていいと思う。この映画を観るときは笑いながら語り合いながら、前の席を蹴りながらみて欲しい」と同作を賑やかにみてもらいたいという希望を語った。
(取材・文・波江智)
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