『野火』トークイベント、想田監督描写力を絶賛!塚本監督描写や撮影などについて解説
『野火』のトークイベントが17日、都内で行われ塚本晋也監督と想田和弘監督が登壇した。
同作は大岡昇平が第二次世界大戦フィリピン戦線での日本軍の苦しい彷徨いを題材にした小説の映画化。
塚本監督は撮影について「いまはフィルムではないから、どんどん回して撮っている。クリント・イーストウッド方式でワンカットで撮影している。イーストウッドも『俳優として最初の演技が一番よかったのに!ということが多い』と言っており、それに同感。撮影中はほぼモニターを持ちっぱなしで指示している」と撮影方式を説明。
想田監督は「映画は疑似体験。その場に放り込まれたような感覚を映画が与えてくれる。この作品で描写力はすごかった」と絶賛。
また戦争映画ならではの凄惨なシーンについて塚本監督は「最初は撮影してなかった。戦争の恐ろしさを描くというわりには足りないと思った」と話した。
さらに「戦争体験者の話を聞いていたので、ああいうシーンは入れるべきだと思った。でも賛否両論だった。戦争で両軍入り乱れてめちゃくちゃにやられるシーンのあと、脳みそが飛び出るシーンや千切れた腕を取り合うシーンなどを入れた。しかしセールスではそのシーンをカットしないと売れないと言われた」と苦言を呈されたことを暴露。
また「主人公の主観にして主人公がお客さんというようにした。アメリカ兵を写すつもりは最初からなかった。なぜなら敵がアメリカの若い兵隊という気分がなかったから。アメリカ兵士も日本は酷いやつらだという教育をうけているからそうなった。でもそういう教育がなければ仲良くできていると思う。アメリカ兵が撃ってるのではなく、戦争を決めた上の方の人が撃っているようにした」と全体的な表現について説明した。
戦争を知らない世代が育ってきていることについて「今後の映画が戦争を描くとき、リアリティの薄いかっこいいものように描いていきそう」と予想。
それを受け塚本監督は「そういうのが嫌な気がして不安と恐怖を覚えている。そういうことでいっちゃうのかな?と思う。今しかないと思って、ちっちゃい動きでも投げていれば水面下の人が水面上にあがっていくといいなと思う」と同意見の様子。
また「震災があるまで野火はそのうち取れればいいと思っていたが、震災以降、いまやらなきゃいけないと思った」と震災が与えた影響を話した。
『野火』は全国公開中
(取材・文:波江智)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。