映画コラム

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2016年02月26日

『珍遊記』山口雄大監督インタビュー 「映画の最初のセリフがちん◯に決まった時、全体像が見えた。」

『珍遊記』山口雄大監督インタビュー 「映画の最初のセリフがちん◯に決まった時、全体像が見えた。」

2月27日にいよいよ公開となる松山ケンイチ主演の『珍遊記』。今回は監督を務めた山口雄大さんへインタビューを敢行。本作やキャストへの思いを熱く語って頂きました。


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インタビュー


──冒頭の部分から準備体操もなく全力疾走の映画ですね。

山口雄大監督(以下 山口):そうですね。あの初速を付けてくれたのは脚本の二人ですね。松原(秀)とおおかわらの二人。

漫画だと、でっかい山田太郎が暴れて一万人の軍勢と戦うところから始まるんです。通常考えるとその始まり方は分かりやすい。しかし一万人の軍勢と戦うところは『ロード・オブ・ザ・リング』の規模で映像化しないとでそんな予算もない。

そこで頭を使って何が出来るか考えた時に、脚本家二人から案があって。

「映画の最初のセリフをちん◯にしたい」って。それを聞いた時に映画の全体像が見えた気がしました。実写版ってそういうことだなと思って。

画太郎さん(原作者)の絵でただ「ちん◯」ってインパクト無いじゃないですか。しかし実写の画で倉科さんと笹野さんと田山さんが荘厳な感じで並んでて急に「ちん◯」って言うのって、実写ならではじゃないですか。そこからはずっと動かなかったですね。

掴みにはこれしかないと。
──オープニングの戦闘シーンで技を繰り出すところがゲーム的な演出に思えましたが、あれは意図したものなのでしょうか。

山口:ゲーム的なのは特に意識してないですね。ベン・スティラー監督の『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のエンドクレジットがあんな感じなんですね。アレみたいにしたいってのがあって、そうやりました。技とかも、基本的には脚本家二人が考えてくれました。原作に比べてだいぶ技の数が多くなってます。
──「他の人に監督をやられるのだけは嫌だった。」という発言を目にしましたが、真意を教えて下さい。

山口:3年ぐらい前に紙谷さんというプロデューサーから「『珍遊記』やりたいんですけど、興味はありますか」と話がありました。興味はありましたが、『珍遊記』は難しいので慎重にやらないとなとなって検討を始めました。

何が難しいかって言うと舞台が舞台ですし、低予算なのは分かってたからですね。そして原作だと主人公の等身が三頭身ぐらいじゃないですか。あれをそのまま実写の映像に移すと、子供の頭身になっちゃうんですよ。子供が主人公のギャグ映画って、僕は成立しないと思っていて。笑えないんですよね。子供がポイントで出て来るのはもちろん良いんですが。

しかし、難しいからと断っても他の人がやってる『珍遊記』を僕は見に行きたくないなって思ったんですね。昔『逆境ナイン』って映画があったんですよ。僕、実は…『逆境ナイン』やりたかったんですよ。悔しくて見に行かなったんです。大した映画じゃありませんでした。っていう気分を味わいたくなかったんですよ。

画太郎作品って今のところ僕しかやってないんですよ。これに挑戦しないで終わりたくないなって思って引き受けました。
──他の画太郎さんの作品もやられていますけど、今までとの違いはありますか。

山口:今までだと「画太郎ファンに向けてこんなふうにやってみたんですけどどうですか?」って姿勢があったんですけど。今回同じことしても仕方がないなと思ったんで、画太郎作品を知らない人に向けて作ったんですね。画太郎ファンの人に喜んでもらいたいは当然なんですけど。

画太郎作品を全く知らない人にも裾野を広げたいなって思って。画太郎さんを知らない人にも、「これいいな、面白いな、見やすいな。」って思えるものを作りたいなって最初からあったんですよ。

画太郎さんも同じ気持ちがあって、画太郎さんから言われたのが、「ヒット作にしてください!」ってオーダーだったんですよ。「原作無視しても構わないので、とにかくヒットするメジャーな作品にしてください。」と。

僕もそれを思ってたんで、画太郎さんも思ってるならその方向で行こうって。

玄奘役が女の子なのも、そういったとこからきてますね。みんなが見やすいもの。今までの『西遊記』の実写化の系譜ってあるじゃないですか。そこに則乗っとった、みんなが見やすい王道の『西遊記』をギャグ版にしてみましたっていう解釈がある。そこは意図的にやってますね。
──『西遊記』のイメージから、玄奘が女性ってことですんなりと入っていくことが出来ました。

山口:見やすさは重要視してますね。やっぱりそうじゃないと広がってかないと思うので。画太郎作品って画があの画だから、読まない人が多いんですよ。読んでみると意外とピュアだったりするんですけどね。下ネタレベルも小学生レベルだったりとか。食わず嫌いで見ない人が多いんですよ、だから、この映画がそこの取っ掛かりにできたらいいなぁと。

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