心がパッカーン!と開いちゃう「悟り」の映画3選

「幸せになりたかったら、幸せであると気づくだけでいい」とか、よく言いますよね。


成功して大金持ちにならなくても、理想の人と恋に落ちなくても、じつはもうすでに自分は幸せだってことに気づいたらその瞬間に幸せになれる。幸せだと気づいていつも笑顔でいたら、成功も素敵な恋人も勝手に引き寄せられて、ますます幸せになる。だから、努力して幸せになるのではなく、幸せに気づくから幸せになるんだよ、苦しい努力なんていらないんだよ、という、心理の世界では定番のメッセージです。

それは定番なだけに真実ではあるんだけど、多くの人は「現実はキビシイんだぞ」という思いこみに支配されているので、なかなか信じることができないかもしれません。でもそれを教えてくれる映画がたくさんあるんですよ。

ということで、信じられないことを信じてみたら本当だった!と、気づくだけで幸せになれる「悟り」の映画を紹介します。

竜さんの「大切なことはぜんぶ映画が教えてくれた」

幻の世界と自分の本当の姿を悟る『マトリックス』


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最近ついに弟さんも性転換手術を済ませて、晴れて兄弟から姉妹になったウォシャウスキー姉妹監督の代表作『マトリックス』シリーズは、コンピュータに支配された近未来の世界で迫害された人類が奮闘する痛快なSF作品ですが、じつは仏教的な哲学やスピリチュアルな要素を土台とした骨太な物語であり、「悟り」の映画としても知られています。キアヌ・リーブスが銃弾を避けてアチョー!ってカンフーで戦うだけの映画じゃないんですね。

キアヌ演じるネオはある日、自分がコンピュータによって作られた仮想空間(ヴァーチャル・リアリティ)で生きていたということに気づきます。もうビックリです!今まで現実だと思って毎日生きていた世界がすべてプログラム(幻)だったんですから!

ネオは、そんな仮想空間を作って人類を食い物にするコンピュータたちと戦うために、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)による修行を重ね、能力を身につけていくんだけど、その修行っていうのが「トレーニングをして成長する」のではなくて、「すでにある自分の能力に気づく」というものなんですね。

カンフーのトレーニング中にモーフィアスがネオに言います。

「速く動こうと考えるな。速いと知れ」___Don’t think you are. You know you are.

「苦しいトレーニングを重ねて速く動けるように成長しよう」と考えていたネオですが、「あれ?オレ本当はもうすでに速いんじゃ……?」と自分を信じてみたら、その瞬間から速く動けるようになるんです。これが「悟り」です。

「なんだよー!オレもうスゴイんじゃーん!世界は幻じゃーん!みんな同じじゃーん!」という色即是空を理解したネオに怖いものはありません。銃弾も避けるどころか意思のままに落とすことができるようになるんですね。

もうとっくに特別だったと悟る『カンフーパンダ』


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大食漢でデブでグズなパンダ・ポーは、伝説の竜の戦士に選ばれたのはいいものの、どうしても自分が憧れのマスター・ファイブより上だとは思えないし、修行は厳しくてツライしで、くじけそうになっちゃうんです。

でも師匠のシーフー老子が自分に合ったトレーニングをしてくれたおかげで、カンフーはメキメキ上達し、自分でも自分を信じ始めます。「あ、オレけっこうイケてるかもしれない」と。

そして選ばれし竜の戦士のみが見ることを許されているカンフーの奥義が記された伝説の巻物を手にするのですが、なんと!巻物には何も書いていないんですね。そこに見えるのは鏡のような金箔に映る自分自身の姿のみ。

落胆するポーにラーメン屋を営む父があるお話をしてくれます。父が作るおいしいラーメンの秘訣は「秘密の材料スープ」という秘伝のスープにあるのですが、じつは秘密の材料なんてなかったんだと衝撃の事実を伝えるんです。

「秘密の材料なんてないんだ。特別にするには、特別だと信じるだけ」___To make something special, you just believe it’s special.

その言葉を受けて、ポーは巻物の意味を知ります。カンフーの秘伝の奥義とは、自分自身を信じること。「自分は特別なんだ」と気づくだけでいいということです。

ポーのブヨブヨのぜい肉だらけの身体や、修行より食べることが大好きな楽天的な性格は、一見カンフーには向いていないように見えるけど、そういう自分の短所ですら「特別なんだ」と信じられたから、ポーは世界一の竜の戦士になれたんですね。

あなたが恥ずかしいと思っているその短所や弱点こそが、あなたの「特別」だって気づくだけでいいんです。気づいたら、それを隠さずに堂々と生きていけばいい。それもまた「悟り」です。

深層心理の奥深さを悟る『インセプション』


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『インセプション』は『マトリックス』や『カンフーパンダ』のように、気づくだけでパッカーン!と悟って心が開くということは示してくれないけれど、僕らが持っている「常識」や「思いこみ」「心の前提」というものがどれだけ深く根ざしているのかということを、エキサイティングなエンターテイメントの中で教えてくれます。

ディカプリオ演じる主人公コブは、他人の夢の中に侵入して頭の中の情報を抜き出すエージェントなんだけど、夢というのは一層じゃないんですね。夢の中で眠って夢を見ればもう一層深い夢

に侵入し、さらにその夢の中で夢を見る、といったふうに、どんどん深層心理の奥深くへ潜っていくんです。

そうやって何層も深い夢の中へ潜っていくと、自分が今生きている世界が「夢」なのか「現実」なのかわからなくなってしまう。

なんていうとSF映画にありがちな突拍子もない設定に聞こえるけれど、これこそが顕在意識と潜在意識の世界であり、自分では気づいていない無意識の深層心理をじつにわかりやすく描いてくれているのです。

たとえばあなたがお友だちに「あなたは料理が本当に上手だから料理教室でもやったら?」と言われたとします。けれどあなたは「いやいや私なんて所詮素人だし、もっとうまい人はいくらでもいるし、ふつうのことをしてるだけだからダメよ」と言うかもしれない。

でもその「所詮素人」だとか「もっとうまい人はいる」とかいうダメな理由はじつは後付けで、本当は心のもっと奥深くの層に「私にはそんなことできっこない」という思いこみが隠されていることが多いんです。あるいはもっと奥深くの層に「私は何をやってもうまくいかないダメな人間だ」なんていう強固な前提がこびりついているかもしれません。

だって自分よりうまい人がいたら教えられないのならイチロー以外は野球を教えられないし、最初は誰だって素人なわけで、そんなのは理由になっていませんよね。それは「できるはずがない」という思いこみをフォローする後付けの言い訳でしかないのです。

逆に、常に自信満々で何をやっても笑顔で快活にこなす人っていますよね。そういう成功者たちは、心の奥底でちゃんと自分を信じられているということ。つまり「できる」も「できない」も自分自身が決めていることであり、信じられる人にとっては「夢」は「現実」なわけです。

自分の素晴らしさに気づけば、悟りの世界が拓けるかも


ネオやポーの物語は映画の中だけに限りません。僕ら多くの人間は、生きているうちにいつの間にか自分がもともと持っている「特別」を蔑ろにし、自分は凡庸でつまらない人間だという「思いこみ」を持ってしまいます。

「自分は自分のことをダメ人間だなんて思っていない」という人だって、じつは心の奥深くの層でそういう前提にしがみついているかもしれないのです。だって無意識なんだもん。自分じゃ気づかないんだもん。

その前提に気づくヒントは「イヤイヤ」というキーワードです。あなたが誰かに何かを褒められたときに「イヤイヤ、私なんてぜんぜんダメですよ」と、謙遜という名の自己否定をしてしまっ

たら、その心理の奥の方に「悟り」の種が隠されているかもしれません。

「あ、私ヘタだと思いこんでいただけで、本当はすごく料理が好きだし得意じゃーん!」

って認めてあげるだけで、自分の「特別」がどんどん見えてくるかもしれませんよ。

僕も最近、しかめっ面でストイックにダイエットしていた頃よりも、好きなものを食べまくってカンフーパンダみたいなお腹になってからのほうが子どもたちに喜ばれることに気づいたので、ラーメンばっかり食べてます。これも「悟り」でしょうか?

(文:茅ヶ崎の竜さん)

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