インタビュー

2016年05月22日

フィルムにこだわり続ける日本映画専門の名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」

フィルムにこだわり続ける日本映画専門の名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」

シネマズby松竹公式ライターの中川マナブ(東京散歩ぽ)です!
全国各地の名物映画館を訪問し、その魅力をご紹介していく《ちょっくら映画館に行ってきました。》今回は杉並区阿佐ヶ谷の名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」へ取材を行って参りました。

阿佐ヶ谷の住宅街に突如現れる名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」


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JR阿佐ヶ谷駅から徒歩2分。住宅街に突如現れる異彩を放った建物がラピュタ阿佐ヶ谷です。

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「ガリバー旅行記」の空飛ぶ島からヒントに作られたというラピュタ阿佐ヶ谷は2階に映画館、地下1階には演劇を中心に音楽ライブやお笑いライブなども開催される「ザムザ阿佐谷」、3階にはカジュアルなフレンチレストラン「山猫軒」が入る複合施設です。緑の樹々に囲まれ蔦が這う1階入り口から入ってみましょう。

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入り口入ってすぐの受付。料金は一般1,200円、シニア・学生は1,000円、会員は800円。

1950~60年代の日本映画専門館


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ラピュタ阿佐ヶ谷は1950-60年代の日本映画の旧作を中心に上映してます。1階は映画館の受付とギャラリーが併設され上映中の日本映画のポスターが展示。往年の名優のブロマイド、関連書籍なども販売されてました。

今回はラピュタ阿佐ヶ谷の支配人、石井 紫さんにお話を伺いました。

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↑マルベル堂のブロマイド

──ラピュタ阿佐ヶ谷さんは1998年(平成10年)に開館されたんですね。開館当初から日本映画専門だったんですか?

石井 紫さん(以下:石井)当初はアニメーションを専門としてオープンしました。ちょうどその当時は銀座並木座さん、池袋の文芸坐さんが立て続けに閉館した時期で日本映画の名作が観られなくなるというのは寂しいということで、アニメーションの他にも日本映画の旧作を番組に加えていたと聞きます。

私は2003年からこちらで働いていて、その頃から番組を任されるようになりました。当時は知識や経験値も少なく、映画についてあれもこれも深く勉強するのは出来そうになかったのですが、日本映画の旧作のプログラムがメインになりつつあったので、しばらくは日本映画の旧作で番組を組ませて欲しいというお話をして、そのまま現在に至ります。

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──石井さんのキャリアがそのまま現在のラピュタ阿佐ヶ谷になっていったんですね。石井さんの中で印象的な作品はありますか?

石井:最初に番組をお手伝いさせていただいたのが2003年に日本映画の黄金期を支えた撮影監督の岡崎宏三さん(1919-2005)の特集上映をラピュタ阿佐ヶ谷でやった時でした。

その時は岡崎さんもご存命でトークイベントに来てくださったんですが、当時83歳には見えないくらい、がっしりしててお話がとても面白かったんです。それをキッカケに日本映画の旧作の面白さと魅力にのめり込んで行きました。この時の岡崎さんとの出会いがすごく良かったんだと思います。

お客さまの反応を見て番組を作っている


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──番組の編成は石井さんひとりでやっているんですか?

石井:現在は私ひとりで番組を編成しています。
大変ではあるんですけど、ネタ帳みたいなノートに思いついた時にどんどん書いていくようにしていて、次の番組を考える時にはそのノートを見て、これそろそろいけるかなという感じで考えてます。

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──どんな時に番組のネタを考えるんですか?

石井:次の企画を思いつく時は映画を見てる時が多いかもしれないです。私は休みの日もここで映画を見るようにしてて、お客さまと一緒に見ているとこういうのがウケるのかとか、この辺が反応が良さそうだなとかがよく分かるんですよね。

反応がダイレクトに分かるのでこの役者さん、今ちょっとウケがいいかもとか、この監督さんの作品が今、注目が集まっているかもしれないとか。その作品がウケているのか、そうでないかは入場数の数字だけでなく、お客様と一緒に観てないと分からないです。その反応も見て次はこの役者さんや監督の作品で特集をやってみようと考えながら映画を観ています。

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↑ギャラリーにはラピュタ阿佐ヶ谷を模した模型も展示

──劇場内でお客さんの反応を見ながら番組を作ってるんですね

石井:お客さまが作品にのめり込んでいる時とそうでない時の劇場内のムードが肌で分かるんですよね。ひとつの作品を1週間に7回上映するんですけど、その回によっても違うので、反応がいい時もあれば全然な時もあります。反応がいい時はみなさんスクリーンに集中していてピタッと止まって張り詰めた空気が劇場内を包んでます。楽しく盛り上がっている時はいいですけど、そうでない時のムードは辛くてしょうがないです(笑)

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↑映写機は日本電子光学工業の「FSD-12」

──前回訪れた名画座、シネマヴェーラ渋谷さんからこちらの映画館はフィルムにこだわっているよとお聞きしました。

石井:お客様がフィルムで観たいという方が多いので、出来る限りフィルムでこだわって上映したいなと考えています。配給会社さんがフィルムを出すよとおっしゃってくれている間は今の形態を続けたいなと思っていますが、映写機のメンテナンスや部品の確保もそうですが映写技師も高齢化してきて、それもなかなか難しい問題です。

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↑1階のギャラリーには庭が見られるテーブル席も

──ラピュタ阿佐ヶ谷に来るお客さんについてお聞かせください

石井:近隣のお客様も多いですけど、かなり遠くから来られる方もいらっしゃいます。自分が2003年に来た頃はシニアのお客様が多かったのですが、シネマヴェーラ渋谷さんが出来た10年前くらいから若いお客さまが増えたような気がします。若い人が集まる渋谷に名画座が出来たことで旧作を観る若い人も増えたような気がして、それはシネマヴェーラ渋谷さんのおかげだと思ってます。

[参考]:開館10周年!映画好きの夫妻がはじめた手作りの名画座「シネマヴェーラ渋谷」 | シネマズ by 松竹

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↑客席は48席

──今後はどういった形で運営していきたいですか?

石井:できることならいつまでもこの形態で日本映画専門のフィルム上映館として続けていきたいなと思います。それが今後はどんな風になるかは分からないですが、現時点では出来る限り綺麗なフィルムで見た頂きたいと思っていて、お客様に還元する意味も込めてニュープリントを作成したりと、これからもかけていけるフィルムを少しでも増やせればと思います。

姉妹館「ユジク阿佐ヶ谷」が昨年オープン


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──近くに姉妹館ができたそうですね。

石井:ラピュタ阿佐ヶ谷の裏に昨年2015年4月25日に「ユジク阿佐ヶ谷」という映画館が開館しました。こちらでは準新作やアニメーション、邦画洋画問わずかけている姉妹館ですので是非こちらにも足を運んでいただければと思います。

──ラピュタ阿佐ヶ谷の支配人、石井さんありがとうございました!
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取材した日も平日ながら多くの映画ファンが訪れていて古き良き日本映画の名作を鑑賞していました。ラピュタ阿佐ヶ谷さんは常にお客様目線で番組を編成していて銀座並木座、文芸坐の流れを継承する日本映画のフィルム上映にこだわった名画座でした。日本映画をフィルムで観たいというお客さんがいる限り、空飛ぶ島「ラピュタ阿佐ヶ谷」の旅はまだまだ続きます。

(取材・文:中川マナブ(東京散歩ぽ)

ラピュタ阿佐ヶ谷


住所:東京都杉並区阿佐谷北2−12−21(地図
TEL:03-3336-5440
公式サイト:http://www.laputa-jp.com/

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