「シン・ゴジラ」にハマった人必見!幻のゴジラ漫画「エネルギー大作戦」とは?
`79ゴジラ・エネルギー大作戦のあらすじ
小笠原海域の洋上に浮かぶ巨大な研究施設があった。巨大タンカー3隻を繋げて改造した、この「代替エネルギー開発センター」では、滝沢教授と大江戸助教授を中心とした研究チームにより、世界中のエネルギー問題を一気に解決する計画が、今まさに実行されようとしていた。
その画期的な試み、つまり日本海溝の奥底で核爆発を起し、破れた地殻から噴出すマグマの熱を、代替エネルギーとして使用する計画は、見事に成功!
しかし、その直後から海底で続く異常振動により、エネルギー伝達ケーブルが破損してしまう。
核爆発により自然界のバランスが崩れると、密かに計画に反対していた大江戸助教授と、息子の健一。そして計画責任者である滝沢教授の3人を乗せた潜水艇は、破損箇所と原因の調査のために、日本海溝の奥深くへと潜行していく。そこで彼らが見たもの、それは物凄い力で引きちぎられたようなケーブルの残骸だった!そして現れる巨大な生物の影、それこそ核爆発によって眠りを覚まされた大怪獣ゴジラだったのだ!緊急浮上する潜水艇を追って海面に浮上したゴジラによって研究施設は破壊され、そのままゴジラは日本に上陸!
自分達が招いた危機への自責の念に駆られる研究者たちの眼の前で、都市を火の海にして暴れまわるゴジラの恐ろしい姿。
「あんな炎の化け物みたいな奴、氷付けにしちゃえばいいんだ!」健一の発した言葉が、爬虫類で変温動物であるゴジラの、唯一の弱点攻略へのヒントとなった。
研究施設のうち、1隻だけ焼け残った巨大タンカーの上にゴジラをおびき寄せ、超低温ガスを噴射してゴジラの動きを止めて、そのまま日本海溝の真上までゴジラを運び、タンカーごと爆破して残骸を錘代わりに、ゴジラを再び海溝の奥深くへと沈めようというのだ。果たして、人類の存亡をかけたゴジラ撃退作戦は成功するのだろうか?
この漫画の魅力
1975年公開の、シリーズ15作目にして初期ゴジラシリーズ最終作である「メカゴジラの逆襲」。その記憶も新しい時期に書かれた漫画だけに、ゴジラをどうやって再び登場させるか?そして、恐怖の象徴である「破壊神ゴジラ」を登場させるという、原典回帰を意識したその内容には、子供向けから大人の鑑賞にも堪えられる作品へと移行させようという、作者の意図が感じられて非常に興味深いものがあります。
人類自らが、自然のバランスを壊して招いた怒り=ゴジラに、1984年版「ゴジラ」に登場したスーパーXの様な超兵器や、ゴジラと闘う敵怪獣を出現させることなく、あくまでも人間の頭脳と作戦でゴジラに立ち向かう!という展開は、過去に製作された敵怪獣とのバトル路線とは、一線を画すハードな内容であり、きっと「シン・ゴジラ」に熱狂した人たちの心にも、刺さることでしょう。
特に素晴らしいのが、ゴジラが爬虫類=変温動物であるという視点から、その弱点を設定したアイディア!これはシリーズ2作目「ゴジラの逆襲」のラストを思い出させるし、巨大タンカーにゴジラを固定して運ぶ!というのは、このマンガが発表される3年前に公開された、1976年版「キングコング」や、シリーズ3作目の「キングコング対ゴジラ」の影響でしょうか。更に、洋上のタンカーにおびき寄せて捕獲する、という作戦自体は、むしろ大映の「ガメラ」シリーズからの影響が大きいとも言えるでしょう。
1984年の復活以後、平成ゴジラシリーズが次第に敵怪獣とのバトル物に移行していったことを考えても、1979年のこの時代に、人類対ゴジラを前面に打ち出したこの漫画が描かれたことは実に興味深く、ゴジラ史的価値も高いと思います。
「シン・ゴジラ」の成功と観客からの反響を見るにつけ、この「エネルギー大作戦」の方向性は決して間違っていなかったし、正に時代を先取りしすぎた傑作だった!との思いが強くなった、とだけ言っておきましょう。
「シン・ゴジラ」のヒットと関連して、数々の雑誌や書籍が書店の店頭に並んでいますが、この傑作漫画が再び人々の目に触れる日が来ることを、個人的に願わずにはいられません。
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(文:滝口アキラ)
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