福間健二監督、佐藤泰志への想いが詰まっている―『秋の理由』初日舞台挨拶
福間健二監督の最新作『秋の理由』の初日舞台挨拶が、新宿・K's cinemaでおこなわれ、伊藤洋三郎、佐野和宏、趣里、福間健二監督らが登壇した。
映画『秋の理由』初日舞台あいさつレポ
映画『秋の理由』は、60代を迎えてもなお「まだ途中だ。なにひとつ終わっていない」とあがく2人の男の友情を軸に、その妻と、2人の前に突然現れてその三角関係に波紋を投げかける若い女を描いた、福間健二監督の最新作。
昨日10月29日に公開初日を迎え、新宿・K's cinemaにて初日舞台あいさつが行われた。
この日は、宮本守役の伊藤洋三郎、宮本の親友で、精神的な不調から声が出なくなった作家・村岡正夫役の佐野和宏、2人と寺島しのぶ演じる村岡の妻・美咲の関係に波紋を投げかけるミク役の趣里ほか、撮影中の寺島しのぶは欠席したが、伊藤演じる編集者の出版社の創設者の未亡人で、食堂を開いている小林則子役の安藤朋子、作家志望で村岡のファンである山野順一役の木村文洋、食堂の従業員のフミ役の小原早織、伊藤演じる編集者と同じオフィスをシェアする編集プロダクションの横山役の正木佐和、同じく編集プロダクションの矢崎役の安部智凛、そして福間健二監督が登壇した。
福間監督は「伊藤さんは、“今一番撮りたい男の顔”という感じでキャスティングしたので、顔を撮りに行ったのだけれど、手がきれいなんで、手に注目してください。伊藤さんだけじゃなく、みんな手がいい」と“手”トークからはじまり、佐野和宏については「長い付き合いだけれど、監督もされていて、芝居もうまいので、毎日驚かされ、助けられた。“佐野アイデア”でやればいけるな、というの多かった」と語る。
「作家は書けない時や悩んでいる時、何かを拭いているなと思って、脚本には『雑巾がけ』と書いたのだけれど、佐野さんが『裸でやりたい』と。そうなると、監督の仕事は、佐野さんが衣装合わせに持ってきた自前のパンツ3枚の内、どれにしようかと決めること」と思いがけないパンツトークに会場は笑いに包まれた。
司会から「どんなパンツが用意されていたんですか?」と聞かれると、監督は「露出度が三段階」と答え、会場は更に大きな笑いに。また、寺島しのぶに関しては「集中力がすごい。寺島さんに思いっきりやってもらっているところを見てください」と語った。
ミク役の趣里は「伊藤さんは紳士でお若い。(撮影当時)60歳というのが信じられない」と話し、司会から「男性としては?」と聞かれると「素敵です」と答え、伊藤が「ちゃんといい家庭で育っているから、ちゃんと褒めてくれてありがとうございます」と恥ずかしそうにお礼を言うという場面も。伊藤は「趣里ちゃんに、『趣里ちゃんのお父さん(水谷豊)は僕のことを知っている』という話をして『何か言ってた?』と聞いたら『あいつ、いい奴だよ』って言ってたとのことだったので、良かったと思った」と、年齢差ならではのエピソードトークを披露した。
佐野は、2011年に咽頭癌を患って声帯を失っているため、この日は筆談器に回答を書き、親友役の伊藤が読み上げる形となった。寺島とのエピソードとして「ほとんど現場でしか会っていなかったのに、仲の悪い夫婦がよくできたなと思う」と回答し、会場の笑いを誘った。
福間健二監督は、オダギリジョー主演で公開された『オーバー・フェンス』の原作者で、41歳で自ら命を絶った作家・佐藤泰志とも親交が深い人物。本作は佐藤泰志への想いが詰まっていると語る。
「作家の話をやるかどうか、佐藤泰志についての想いがあるので、どうしようかと思った時期もあった。『男同士の友情の話はやりたい、やれるな』と思い『それなら“編集者と作家”』という風になっていったんですけれど、佐野和宏にその作家をやってもらうことで、彼もここまで色々なことがあったでしょうし、僕は僕で詩や映画をやっていますけれど、いつもどうしていいかわからないという状態なので、それをやるとどうしても佐藤泰志に引きずられていく。けれど佐藤泰志は亡くなった。でもこの映画では、佐野和宏を通して“生きている”という意味を確かめたかった」(福間健二監督)
監督の話を聞き、佐野和宏は「なんとなく気づいていて、イン前に佐藤さんの特集の本を読んでました。物を作る者の絶望感は僕もいつも味わっているので、やりやすかった」と明かした。
監督は最後に「88分、250カットあるんですけれど、1カットずつ本当に心を込めて作りました。映画は闇と光だということを体験してもらえたらと思います」と観客にメッセージを送り舞台挨拶が終了した。
映画『秋の理由』は新宿K's cinemaにて上映中。全国順次公開。
(C)「秋の理由」製作委員会
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