インタビュー

2016年11月02日

黒木渚の世界を映像化、「うつろいの標本箱」舞台挨拶で起きた奇跡とは?

黒木渚の世界を映像化、「うつろいの標本箱」舞台挨拶で起きた奇跡とは?

その、誰にも真似出来ない独特な歌詞の世界を、全女性の心理や本音と共に歌い上げる、孤高のシンガーソングライター黒木渚。
若い女性の共感を呼び絶大な人気を誇る彼女の、ソロ活動後初の新作フルアルバムである「標本箱」。
その楽曲の世界観をモチーフに、期待の若手女性監督、鶴岡慧子が自ら脚本と監督を務めたのが、10月29日より渋谷ユーロスペースで公開中の映画「うつろいの標本箱」だ。


うつろいの標本箱 poster


(C)2015 タイムフライズ



予告編


黒木渚のアルバム「標本箱」に収録された数々の楽曲たちの様に、登場する6人の女性の心情や物語が現在と過去、その時勢が前後して揺らめくようにすれ違い、あるいは干渉し合って、やがてある共通の人物への思い出へと重なり合って行く様は、まさにタイトル通り「うつろいゆく」物語を集めた「標本箱」の様だと言えるでしょう。

個人的にも大ファンである黒木渚の楽曲を、鶴岡慧子監督が果たしてどの様に映像化しているのか?
それを確認するため、今回は渋谷ユーロスペースでの初日舞台挨拶を取材してきました。

うつろいの標本箱1



ストーリー


カメラマンの松島は、ある朝、川辺で死んだ。見つけたのは大学生のイツキと悠一。イツキは悠一のことが好きで、松島を見つけた日も、悠一がその日絵画教室でヌードデッサンをすることで頭がいっぱいだ。

絵画教室では、モデルのミソノが3年振りに元カレの考生と再会していた。松島の元彼女の日奈子は、松島の母が遺品の中から間違えて渡してきた女物のハンカチに戸惑っていた。日奈子の親友である淳子は、友人の結婚式に出席するため上京するが、宿を失う。行く宛なく彷徨っていると、パジャマ姿で川原を徘徊する少年・真希と出会う。

看護師のサナエは、その日の朝、高校の同級生だった松島の携帯に留守電を吹き込んだ。家庭教師の亜梨沙は、密かに想いを寄せているカフェの店主・竜平にようやく名前を聞けるが、翌朝、弟の真希が病室から消えたとの連絡を受ける。
それまで直接の接点が無かった6人の女性と9人の男性。誰かが誰かを想い、誰かを失い、誰かとすれ違って日々は過ぎて行く。
(宣伝資料より)


えっ、上映前の舞台挨拶で、まさかの奇跡が!


会場前、既に劇場ロビーは多くの観客で賑わっており、本作への関心度が伝わって来るようでした。
今回ユーロスペース2での初日舞台挨拶が行われたのは、本編の上映前。

うつろいの標本箱2



まず、鶴岡慧子監督以下、本作の6人の主演女優の方々が舞台上に勢ぞろい!

左から、山田イツキ役の櫻木百さん、市川サナエ役の小久保由梨さん、岡田日奈子役の今村雪乃さん、坂本亜梨沙役の岡明子さん、西沢淳子役のillyさん、落合みその役の橋本致里さん、そして鶴岡慧子監督。

監督を含めて全員女性とあって、舞台上は一気に華やかな雰囲気に。

驚くべきことに、今回が映画初出演の方が6人中半数の3人も!
今回映画の鑑賞前にその情報を知らされたため、ちょっと各人の演技に注目して鑑賞したのですが、言われなければ全く気が付かないほど自然な演技でした。むしろ皆さんの自然な表情とセリフ回しが、作品の内容にプラスに作用していたと言えるでしょう。

うつろいの標本箱3



それぞれの出演時の苦労やエピソードなど、笑いを交えて披露する壇上の皆さん。監督とのチームワークの良さは、見ているこちらにも伝わって来るようでした。。

と、ここで司会の方から、実は今日、サプライズである方をお呼びしているとの紹介が!

劇場のドアから入って来たのは、なんと・・。

うつろいの標本箱4



そう、今回エンディングテーマも歌われている、黒木渚さんご本人がまさかの登場!

うつろいの標本箱5



実はこのことは、当日の出演者にも一切知らされていなかったとか。思わぬサプライズに、観客のテンションも一気に上がります。

うつろいの標本箱6



うつろいの標本箱7



実は今回の舞台挨拶、写真撮影は自由ということで、皆さん喜んでシャッターを押しておられました。最近増えて来ているこうした趣向ですが、観客参加型の宣伝戦略として、個人的に非常に有効的だと思いました。こうした観客サービスは、今後も是非続けて頂きたいものですね。

うつろいの標本箱8



そして最後は、鶴岡監督とキャストの方々、黒木渚さんを囲んでのフォトセッションタイム。

うつろいの標本箱9



この写真の皆の笑顔を見て頂ければお分かりの通り、全ての女性に元気を与える映画、正にそんな言葉がピッタリくるのを感じ取って頂けると思います。

うつろいの標本箱10



さあ、「標本箱」のアルバムを聞いて、これを是非映像化しようと思ったという鶴岡監督が、黒木渚の独特の世界観を、どう映像化したのか?果たしてその出来栄えは?

明日から少しだけ勇気が出て前向きになれる映画!
全女性にオススメする理由とは?


本作の物語のきっかけは、あるカメラマンの死。偶然それを目撃し、第一発見者となった大学生の男女、死んだカメラマンの元カノ、そして彼女の友人という様に、一人の死をきっかけにして、彼に関係のある人物同士が徐々に関わっていくという、正にアルバムに収録された曲を順番に聴いていくうちに、アルバム全体のコンセプトが見えてくる様な、深い楽しみ方が出来るのが本作の魅力と言えます。

その中で描かれる、男女間の恋愛や恋人同士の微妙な距離感、恋に臆病な女の子が勇気を持って告白しようとするエピソードなどなど。
映画の中で語られる数々のエピソードの中で、きっと一つは、貴女の心の琴線にも触れるはず。

単なるオムニバス映画とも違う、人と人とが日々関わり合って生きる中で、きっと皆どこか知らないところで他人に勇気とやすらぎを与えたり、与えられたりしている、そんなことに気付かせてくれる本作。

鑑賞後、明日は気になるあの人に話しかけてみようとか、今よりもほんの少し勇気が出せるかも?など、恋に悩む貴女の背中をそっと押してくれること確実の全女性必見の映画、それがこの「うつろいの標本箱」です。

残念ながら現在の上映予定としては、渋谷ユーロスペースで一日一回、レイトショーでの2週間限定上映とのこと。その後は八王子のニュー八王子シネマで、12月3日(土)〜12月9日(金)の1週間の上映が決まっていますので、是非お近くの劇場で!

最後に


うつろいの標本箱11



相米 慎二監督の映画が好きだと語る鶴岡慧子監督だけあって、全体的に長回しのショットが多い本作。

会話シーンでも、時には台本無しで役者さんたちに演じさせるなど、その場の空気や雰囲気作りを大切にするその姿勢は、本作のキャスト陣の自然な演技や魅力的な表情に良く表れています。

映画初出演のキャストも多い中での撮影にも関わらず、それを全く感じさせず逆に作品の魅力に変える鶴岡監督の演出力こそ、この映画の成功の理由だと言えるでしょう。

他人から見れば何のことは無い日常の瞬間でも、切り取り方一つで輝きを増す、そんなことに気付かせてくれる本作。見る人によって、様々な受け取り方が出来る作品なので、是非ご自分の眼で確かめて頂ければと思います。

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(文:滝口アキラ)

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