映画コラム
『湯を沸かすほどの熱い愛』が素晴らしすぎる、5つの理由
『湯を沸かすほどの熱い愛』が素晴らしすぎる、5つの理由
3:闘病もの、というより母親の愛
余命を宣告された主人公。話が進むにつれて病状も悪化し、弱っていきはするのですが、そこはあまりフィーチャーされません。スパイスであってメインではないのです。
先立つことがわかってしまった主人公が、逃げた夫を家に戻し、弱気な娘に立ち向かっていく勇気を教え、新しく家族になった娘を受け入れ、家族を再生していく。その様子を時にコミカルに、時に厳しく、時に優しく描いていきます。
そして終盤には、家族の秘密が明らかになり、それがこの作品に込められた隠しテーマでもあります。予備知識なく見ると、そこでビックリできて、涙腺崩壊すること間違いなしでしょう。本当に熱い愛が感じられました。
4:演出・布石が細かい
例えば、好きな色の話など、序盤で何気なくでてくる会話が、実は終盤にもまた重要な意味がでてくるなど、結構細かい布石が多かったりします。
あまり書くとネタバレになってしまうので、劇中のいろいろなものに注目してみましょう。随所に細かく散りばめられているため、「あ、ここで、あのセリフがくるのか」とか、気がつけるとニヤリとしてしまいます。
5:影の主役・温泉の活躍
主人公家族が経営している温泉が舞台の一つになりますが、メイン舞台となるわけではなく、要所要所に使われます。
最初は放置されて1年経つ状態から出てくるので結構ボロボロなのですが、話が進むにつれ、だんだん活気を取り戻していきます。おそらく家族関係を温泉の状態で表しているのだと思います。また終盤では意外な使われ方をして、楽しませてくれます。どのような活躍をするかは本編をぜひ。
(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
まとめ
見た人の心に深く刻まれ、大事な作品となる『湯を沸かすほどの熱い愛』。ぴあ映画初日満足度でもNo.1となっています。
女優陣ばかり褒めていますが、逃げて戻って来る旦那役のオダギリジョーは、相変わらずのダメンズがよく似合ってしました。また出番は多くないですが、松坂桃李も登場。俳優陣は実はとても豪華な作品なのです。
公開規模がとても大きいわけではありませんが、見た人にとって忘れられない一作となることは間違いありません。普遍的なテーマだからこそ、分かりやすく、心に届く映画。話題作の影に埋もれさせておくにはもったいない一作です。
(文:波江智)
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