俳優・映画人コラム
トム・クルーズは「ジャック・リーチャー」で、マジに新機軸を打ち出そうとしているぞ。
トム・クルーズは「ジャック・リーチャー」で、マジに新機軸を打ち出そうとしているぞ。
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
すぐ来る。よく来る。トム・クルーズ。
先輩 トム・クルーズの新作「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」だけど、これは2013年2月に日本公開された「アウトロー」の続篇なんだね。
後輩 そうそう。もともと「アウトロー」の原題が「ジャック・リーチャー」なんですよね。
先輩 まあ今回はサブタイトルがいいけど、原題に戻したってことか。紛らわしいなあ。
後輩 でも凄いですよ、トム・クルーズ。「ミッション:インポッシブル」シリーズと、この「ジャック・リーチャー」シリーズの、2つのフランチャイズを持つわけですから。これは「ロッキー」と「ランボー」の両シリーズを持っていた80~90年代のシルベスター・スタローン以来ですよ。
先輩 しかもまた、この映画のキャンペーンで来日するんだろ?
後輩 ・・みたいですねえ。日本がそれほど好きなんでしょうか。もうカウントするのも面倒になるほど、頻繁に来ていますよね。
先輩 いやいや。ありがたいことだぞお。今や日本は中国マーケットに大きく水をあけられて、特に洋画のシェアはダウンするばかりだからな。そんな国に新作のたびに、トップ・スターが来て笑顔を振りまいてくれる。だから「また来たの?」とか「もうインタビューすることがないよ」とか、間違っても言ってはいけない!
「ミッション:インポッシブル」シリーズとの差別化。
後輩 で、今回の「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」ですが、内容的には前作を踏襲しているんですか?
先輩 前作の「アウトロー」は、「ミッション:インポッシブル」シリーズとの差別化を狙ったふしが、随所に見られたよね。トム扮する、もと陸軍指揮官のジャックは、携帯電話も持たない、武器を使わず素手で相手と対峙するという、アナログな無頼漢みたいな設定だった。これはデジタル機器を使ってスマートにミッションをこなす「ミッション:インポッシブル」シリーズのイーサン・ハントとは逆のキャラを狙ったようだけど、正直、効果を上げていたかは疑問だった(笑)。
後輩 イーサンにしろジャックにしろ、演じているのは天下の二枚目なわけですから、そりゃよほど器用に演じ分けないと難しいですよ。
先輩 今度の「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」が、前作よりもワイルドな面を強調しているのは、冒頭のシークエンスでも分かるよ。アメリカをさすらい、法も警察も信じないジャックの行動原理が、よく現れている。
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15歳の少女とジャックのやりとりから見えるもの。
後輩 で、今回はそのジャックの陸軍での後任だったスーザンが国家反逆罪で逮捕さけたことから、ジャックは彼女の無罪を立証するために軍に戻るわけですね。
先輩 そうそう。結局はもといた所に戻ってしまう。それでかつての同僚たちが次々に殺されていく事件に対峙せざるを得なくなるんだけれど、面白いのはジャックとスーザンのコンビネーションに加えて、ふたりに絡む謎の少女。なんたって15歳だってんだから。
後輩 ほお。単なるアクション映画じゃないんですね。
先輩 「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」の面白いところは、ジャックとスーザン、そしてジャックと因縁があるらしい少女サマンサの3人が、事件を通して疑似家族のような関係になっていくところにある。
後輩 「ミッション:インポッシブル」シリーズも、初期に比べて最近ではイーサン単独ではなく、IMFのチームでミッションを遂行する展開が増えて来ましたよね。
先輩 「007/スペクター」にしても、MI-6のチームワークで事件を解決していたし。世界的な傾向なのかな。個人の行動よりもチームワークが重視されるってぇのは。
後輩 常に単独行動の先輩としては、苦々しく思ってるんじゃないですか(笑)?
先輩 まあ、そういう時代だろ。「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」の話に戻ると、ハードなアクションとアクションの合間に、ジャックとスーザン、サマンサとのやりとりがあって、これがなかなか楽しませる。特にサマンサね。放浪の猛者ジャックも、15歳の少女には、まるで歯が立たない。このあたりのギャップは面白いね。
後輩 まさしくそういう要素をトム・クルーズは狙ったんじゃないでしょうか?
先輩 そうかも知れないね。「ミッション:インポッシブル」シリーズは、仕掛けの大きさもチームワークも楽しめるシリーズだけど、「アウトロー」の場合、見せ場がアクションだけだった。今回はそれに加えて、少女に扱いに手を焼くジャックの人間的な一面が見られて、なんだか微笑ましい感じがするよ。
後輩 ということは、トムはまだこの「ジャック・リーチャー」シリーズを続けるつもりでしょうね。
先輩 それはそうだろう。少なくとも単なるアクション映画ではない、新機軸を打ち出そうとしている気概は感じるさ。ただ、シリーズを続行するためには、当たり前のことだけどヒットしないとね。
後輩 「ミッション:インポッシブル」シリーズと「ジャック・リーチャー」シリーズ。交互に公開されることになると、またまたトムの来日も増えるかもしれません(笑)。
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(企画・文:斉藤守彦)
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