女子目線のSF映画「パッセンジャー」は、少女の憧れを具現化してくれている。
今どきコールドスリープの事故だって?
女の後輩 こういう映画だったとはねえ・・。
後輩 見たんですか? 「パッセンジャー」。
女の後輩 見たわよ。いい感じで期待を裏切られたわあ。もっとハードなSF映画だと思っていたから。
後輩 人類移住計画のために宇宙を行く豪華宇宙船の中で、120年間眠っているはずの男女が90年早く目覚めてしまった。誰もいない宇宙船の中で、彼らは・・・ってストーリーだと、なんか「2001年宇宙の旅」を連想しますね。
女の後輩 そーお?私はそうじゃなかったなあ。
後輩 そもそも冷凍睡眠、ハイパースリープなんて、今どきのSF映画としては、あまりにセンスが古過ぎます。「スター・トレック/イントゥ・ダークネス」で言ってたじゃないですか。「ワープ航法の飛躍的進化により、コールドスリープという技術はもはや過去のものになった」って。
女の後輩 いや、そういう映画じゃないのよ、これは。言うならば、夢見る女子のためのSF映画だわ。
後輩 はあああ??
女の後輩 あんた、気がつかなかった?ジェニファー・ローレンスが演じる女性の役名がオーロラだってこと。オーロラと言えば・・。
後輩 ・・・輝子。オーロラ輝子。
女の後輩 古いっ!! あまりにも古すぎて、誰も分からないだろーが!! お前本当は何歳だ? 年齢詐称しているだろ?
後輩 いや、先輩から聞いて・・ははは。
女の後輩 あんな「3月のライオン」の映画版のことについて、毎日ぶつぶつ言ってるおっさんの影響受けたら、この先ろくな人生送らないわよ。
後輩 じゃあ、オーロラと言えば・・・。
女の先輩 「眠れる森の美女」だろーよ!! ふつーは。
後輩 あっそうか。でもあれってマレフィセントが主役じゃ・・?
女の後輩 そっちは悪役!! 「眠れる森の美女」のオーロラは、愛する王子様の口づけで目を覚ますまで、ずっと眠り続けるのよ。ロマンチックだわあ。きゃあ♡
「眠れる森の美女」のヒロインと同じ名を持つ彼女。
後輩 ロマンチックって・・そもそも「パッセンジャー」の宇宙船の中で起こったアクシデントって、いわば人類存亡の危機にも繋がる大きな事故なんですけど。
女の後輩 宇宙を舞台にして危機的状況を少ない登場人物で描いた点では、「ゼロ・グラビティ」の影響も受けている作品かも知れないわね。
後輩 確かに、今までSF映画って最終的には敵とバトルになったり、マッチョなおっさんが地球の危機を救ったり、やたら大げさな映画が多かったじゃないですか。そういう意味では、今までのSF映画みたいに男目線じゃないんですね、この映画は。
女の後輩 もうさあ、宇宙船の中をこんなにロマンチックに描いたら、SFなんかにならないじゃん!!という気になってくる(笑)。やっぱり作っているほうも、宇宙版「タイタニック」にするつもりで撮ってるよね。
後輩 モルテン・ティルドゥム監督は、女性目線でこの映画を演出しているのかもしれませんね。
女の後輩 だからこの映画のシナリオが、優秀だと認められながらも、ずっと映画化されなかった。それって分かるわあ。大規模な災害も異星人の攻撃も、地球の命運を賭けた戦闘もないもの。この映画には。でもロマンスはある。
後輩 正直、宇宙船の中だということを明かさなければ、ある種の密室ラブ・ストーリーとして成立しちゃうような映画ですね。
女の後輩 そうよお。だからジェニローのオーロラは、王子様の口づけで目覚めちゃったのよお。
後輩 王子様がクリス・ブラットというのは、ちょっと無骨な気がしますけど。
女の後輩 いいじゃない。働き者っぽくて。とにかく宇宙空間で隔絶されたふたりのラブ・ストーリーなんて、今どき珍しい、時代錯誤とさえ言える映画だわ、これ。
後輩 それって誉めてるんですか?
女の後輩 あたぼーよ。もうなんつーか、素敵な王子様との出会いに胸をときめかせていた、17才の時の初心な少女に戻れるような気になれる映画ねえ♡
後輩 17才って・・・それから何十年経っているんだか。
女の後輩 なんだとっ!?
後輩 なんでもないです。とにかく「パッセンジャー」は、女性がロマンチックな気分に浸れるSF映画ということには、僕も意義なしですう。
女の後輩 あんたもたまにはこういう映画に女の子を誘って、点数稼ぎなよ。でないと先輩やご隠居みたいに、寂しい人生を送る男になっちゃうわよ。
後輩 僕もコールドスリープしようかな。120年後に目覚めるようにして。
女の後輩 90年経ったら、私が起こしてあげるよ。熱い口づけで(笑)。がっはっは。
後輩 ・・・・・・。
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(企画・文:斉藤守彦)
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