『一週間フレンズ。』、卒業シーズンだと3割増しで胸打たれる理由
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
公開中の『一週間フレンズ。』観てきました!今年卒業を迎えた人には、特に胸にジンジンくる、おすすめの映画です。もし仮に、仮にですよ!小中高と友達が一人もいなかったために、友達がどんなものかわからない。恋とか青春とか言ったって、縁もゆかりもない。想像どころか妄想も困難!という人が、この映画を一人で観に行ったとしても、泣けると思います!逆に、今、付き合っている恋人がいる人も、また「友達」から始めたくなる。そんな映画でした。卒業した後の春休みは、まだ今の場所に留まっていたいような、早く新しい場所に行きたいような、複雑な心境かと思います。そんな少し特別な時間の流れの中でこそ、大きく胸打たれる!その理由をまとめてみました。
1:都内の高校で撮影。誰もが見たことのある場所での物語。
学校の玄関、教室、廊下、屋上、図書館。在学中は何の変哲もないと思っていても、卒業してしまえば、特別な懐かしさを感じる場所になると思います。
今まで自分が過ごしてきた場所と同じような風景の中で、一週間ごとに友達の記憶を失ってしまう藤宮香織(川口春菜)と、そんな香織と友達になるために、何度忘れられても一緒にいようとする長谷祐樹(山﨑賢人)のお話が繰り広げられます。特殊な設定でありながら、まるで自分自身の物語のように感じられるのは、この場所のせいも大きいように思うのです。
祐樹が香織に初めて「俺と、友達になってください」言ったときは、「んんっ?なりたいのは友達ではないんではないの?」と思ってしまった私ですが、少し物語が進んで、香織が月曜日の朝、学校の玄関の前で「長谷くん、だよね?」と言った時には、胸打たれて心清められました!
香織が可愛いからだけじゃなく、初めて香織の心がほんの少し祐樹に触れた瞬間なのです。学校というありふれたはずの場所で、ものすごく絵になるシーンをたくさん積み重ねて、物語はドラマテックに展開していきます。特に後半から終盤は感動的です!
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
2:「友達ってどんなんだったか?」
香織は、どんなに仲良くなった友達でも、月曜日には「この人、誰?」となってしまうんです。
一週間で友達の記憶がリセットされる香織には、友達に関する心の傷があります。交通事故がきっかけと思われた記憶障害ですが、本当は心因性なのです。終盤近くにはその原因もわかってくるのですが、香織はもう友達は作らないと決めて、学校でも一切人と関わろうとはしません。いつも一人で、眉頭に力を込めて生きているのです。
けれど、香織は祐樹と友達になったことで、また祐樹を通して友達になった桐生将吾(松尾太陽)、山岸沙希(高橋春織)と接することで、少しずつ「友達ってどんなものか?」を感じていきます。
同作を観て思うのは、友達でも恋人でもその中間でも何でもいいけど、側にいる人が自分に与える、その作用と副作用は、なんて強いんだろうということ。なぜならば、香織の記憶障害の原因も友達だし、それを少しずつでも和らげてくれたのもまた友達だからです。
祐樹とその友達が、香織をだんだんに笑顔にしていきます。その過程が漫画では7巻かけて丁寧に描かれていますし、映画では感動的なシーンで表現されています。香織と祐樹を見ていると、誰かと何らかの形で心が触れ合った時、それは爆発的な力を生み出すってことなんだなーと感じました。
そして、それって、小中校のどこかで、誰もが知らず知らずのうちに経験している事かも知れないですね。
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
3:もう恋でも友情でも何でもいい。
同作の原作は、170万部を売り上げた葉月抹茶先生の人気コミック。私は映画より先に漫画を読んだのですが、最終巻の7巻まで読んだ後、続編と友達ブック、ファンブックまで買って、あとはサイン会に行けば、私も抹茶先生のファンと言ってもいいのでは?という所までハマリました。
原作でも、祐樹は香織が大好き!香織も毎日手作りお弁当を作ってきて屋上で祐樹と二人で食べたり、二人で出かけたり、という点では、映画よりずっと恋人っぽいのです。
しかし、漫画では一巻の1ページ目で、ただの恋愛物語ではなさそうだと感じさせています。詳しい説明は入っていないのですが、作画がそう言っています。すごいですよね。映画では、祐樹が香織を一途にコミカルに追いかけますが、「フレンズ」というテーマを少しだけ意識して映画を観てみると、なるほど!と思うところがたくさんありました。
そして、何より私が感動したのは、ラストシーンで、祐樹役の山崎さんが、友達か?恋人か?とか、そういうの、ぶっとばしています。もう恋でも友情でも何でもいい。
こんな純粋さは、いや決して大学生や社会人になったらもう無理、とまでは言わないけれど、同じ教室で毎日その人のしぐさや表情をずっと見てきた中高時代だからこそあり得るんではないのかな。
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
4:すべてのシーンが青春そのもの。
2時間の映画の中に、高校2年の春から3年の卒業式の日まで、高校生活の春夏秋冬のシーンが入っています。漫画では作画が空気感を描いているように、映画でも映像でしか表現できない空気感を感じました。黒板アートと映像の空気感で季節の移り変わりがわかるようになっています。
原作とはだいぶ違って、香織の日記が交換日記に変わっていたり、転入生の九条一(上杉柊平)が小学校ではなく中学校の時の友達に変わっていて、しかも祐樹の恋敵になっていたり、文化祭の出し物が喫茶店ではなくイケメンパティシエによるハワイアンパンケーキ屋に変わっていたり、いろいろと改変されていますが、その分、映画としての見ごたえが増しています。
特に、九条くんが登場するあたりから、映画はぐぐっと面白くなってきますし、文化祭のシーンは、本当に素晴らしく、目が離せませんでした。春のクラス替え、夏祭り、文化祭、合唱の練習風景。(しかも合唱曲は「奏」)。映像だけでも切なくなるようなシーンが次々出てきて、高校生活がよみがえります。
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
5:友達から恋人に変わろうとすると、必ず何かが起こる!
山﨑さんは誰よりも壁ドンがカッコ良くできる王子だと思いますが、この映画では、壁ドンしようとしたとたん、ドミノ倒しが起こり、その映像は壮観です。図書館に二人で逃げて、いい雰囲気になるかと思えば、すかさず阻止されます。その後のシーンは、祐樹の温かさが香織のある記憶を取り戻すという重要なことを表現しつつ、ひねりを効かせた衝撃の内容となります!
この映画は、友達から恋人に変わるぎりぎりの、恋寸前のときめきと切なさを切り取って集めたかのような貴重な映像が多いですね。自分の思い出と重ねて観る人も多いと思います。山﨑さんの文化祭の火祭りの演技は特に素晴らしかった!
あるセリフの一部で「勝てねーよ」と言うのですが「勝てねーよ」の「ねー」の半分裏声になるかならないかの切ない声のトーンを思い出しただけで、私なんか今すぐ泣けるくらいです。
(C)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
最後に。
私が観に行ったのは、土曜日の午後だったのですが、隣の席はなんと、おばあちゃんとお孫さんらしき女の子(中学生か高校1年くらい)の二人組でした。
おばあちゃんと二人で映画観るとか、なんかすごく良くないですか?しかも青春ラブストーリーですよ!おばあちゃんも「これが胸きゅんとやらか・・」と思ったことでしょう!
私はちょっとアートな要素も感じるこの映画が好きですが、原作漫画とアニメもすごく面白くて、おすすめです。
(文:こいれぎざかお)
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