俳優・映画人コラム

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2017年05月04日

クリステン・スチュワート、巨匠たちに愛される“アンニュイな”魅力

クリステン・スチュワート、巨匠たちに愛される“アンニュイな”魅力

カフェ・ソサエティ メイン


(C)2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.


<〜映画は女優で作られる〜vol.2:巨匠たちに愛される女優クリステン・スチュワートのアンニュイな魅力>

デヴィッド・フィンチャーの映画『パニック・ルーム』で注目を集め、続く作品では『リービング・ラスベガス』のマイク・フィギス監督。その後はウォルター・サレスにオリヴィエ・アサイヤス、アン・リーと国籍を問わず多様な名匠たちの作品に抜擢されているのがクリステン・スチュワートだ。

90年生まれの彼女が映画デビューを果たしたのは子役時代。前述の『パニック・ルーム』では小児糖尿病を患った娘役として、同じく子役から活躍していた名女優ジョディ・フォスターと母娘役を熱演。大人顔負けの体当たりの演技の数々は大きな話題となった。そんな彼女を、スターへとのし上げた作品は言わずもがな、2009年に公開された『トワイライト-初恋-』であろう。

トワイライト~初恋~(字幕版)



2000年代後半のアメリカ映画界を賑わす大ブームとなった、YA小説原作映画の先駆となった本作は、霧深い町に引っ越してきた女子高生のベラが、同じ学校に通う不思議な一族の青年エドワードに惹かれるところから始まる。実は彼らの一族は何百年も生き続けるヴァンパイアであり、人間であるベラは他のヴァンパイアから狙われるようになるのだ。

4作に渡る原作シリーズを、映画では5作に分けて作られたわけだが、回を追うごとにバトルシーンの激しさが増し、壮大な内容へと変貌していった。それだけに、ひとつの町の中で起こるちょっとした事件をフックに、人間とヴァンパイアの禁断の恋模様を青春映画仕立てに作り出した、この1作目の魅力は超えることはなかった。

オーディションでヒロイン・ベラの役を獲得したクリステン・スチュワートは、当時19歳。子役時代から感じられた落ち着いた風格を相変わらず携えているのはもちろんのこと、急激に大人びた印象を与える彼女の、アンニュイな色気に圧倒される。まっすぐと目線を送りながら唇を軽く噛む仕草、のちに私生活でも交際へと発展するロバート・パティンソンを上目遣いで見つめるなど、人間の役を演じていながらも、序盤からすでにヴァンパイアのような風格を漂わせる不思議な魅力を放つのだ。

どことなく、劇中の舞台となるワシントン州・フォークスの、常に曇っているために妙に鬱屈とした、寒々しさを感じさせる空気が、彼女のキャラクターにマッチしている印象を受ける。彼女自身は西海岸のロサンゼルスの生まれという、生粋の都会っ子なのだが、何故だか北部や、東海岸のほうが似合っている。その点では、ちょうど今週公開となる『カフェ・ソサエティ』のように、ウディ・アレン作品のヒロインとして登場するに相応しいタイプの女優なのかもしれない。

カフェ・ソサエティ サブ


(C)2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.


そんな彼女は、この『トワイライト』の第1作目を手がけたキャスリン・ハードウィックはもちろんのこと、気鋭の若手作家からも注目されている逸材だ。先日日本でもようやく公開された『ロスト・エモーション』はドレイク・ドレマス。そして今海外から大きな注目を寄せられている『Certain Woman』のケリー・ライヒャルトなど、将来の巨匠たちからも注目を集める彼女には、間違いなく大女優への道が約束されている。

(文:久保田和馬)

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