俳優・映画人コラム

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2017年05月09日

岡田准一が“平成の高倉健”になる、キャリア7つ共通点

岡田准一が“平成の高倉健”になる、キャリア7つ共通点



(c)2017映画「追憶」製作委員会


日本映画界は“一枚絵”になる男を求めている。

日本映画界には“一枚絵”になる俳優が今いない。かつての日本映画黄金期でいえば、三船敏郎、石原裕次郎そして高倉健がいた。そして、今、このポジションに最も近い俳優が岡田准一であるといっていいでしょう。

最新作『追憶』ではとうとう高倉健と『駅-station-』 『鉄道員(ぽっぽや)』では幾度となくタッグを組んだ降旗康男監督や木村大作カメラマンと組みました。


写真左が降旗康男監督。右が木村大作カメラマン。真ん中は『追憶』にも出演の安藤サクラさん。


(c)2017映画「追憶」製作委員会


実際、高倉健と岡田准一のキャリアを比べていくと(もちろん、その年月と作品数の差はあるものの)重なる部分ばかりです。

1:方向模索期


高倉健は東映ニューフェイスの第2期生として採用され、東映所属俳優としてスタートした。(当時は多くの俳優は映画会社ごとに専属契約していました)、ところが採用からの約10年間、その才能を感じていた監督、映画会社幹部も多くいたものの高倉健を活かす道を見つられずにいました。

代名詞となった任侠映画に出る前は“未完の大器”として金田一耕助を演じたり佐々木小次郎を演じたりもしました。
岡田准一は映画デビューからしばらくの間、同じジャニーズ事務所所属タレントとの共演の映画が多く“アイドル岡田准一”としての映画作品が続きました。

高倉健は65年の『昭和残侠伝』ついに“代名詞”任侠映画という自身のはまる役どころをつかみました、これが東映に入社して約10年後のことです。一方、岡田准一が役者として飛躍していく中で大きな要素となってきたのが“アクション”。そのきっかけとなったのは『フライ,ダディ,フライ』。喧嘩の達人を演じた岡田はここで初めてアクションに挑み、肉体改造にも挑みました。ちなみ原作者は後に「SP」の脚本を担当する金城一紀です。

昭和残侠伝


2:アクションヒーローの顔


高倉健が任侠映画で着流し姿を見せる一方でもう一つの初期の代表作『網走番外地』シリーズで体当たりアクションを披露します。このアクション俳優路線は80年代まで高倉健の一つの顔となっていきます。

薬師丸ひろ子のデビュー作『野生の証明』やリドリー・スコット監督、マイケル・ダグラス・松田優作共演『ブラック・レイン』でなどがその代表作でしょう。また『君よ憤怒の河を渉れ』は中国での大ヒット作となり現在ジョン・ウー監督、福山雅治主演『追捕 MANHUNT』としてのリメイク版の公開が控えています。

そして、岡田准一のアクションです。ともにシリーズ化された「SP」「図書館戦争」では自身もアクション構成を担当。両作品では堤真一や榮倉奈々、福士蒼汰などなど動ける共演陣を得たこともあって、久しく日本映画になかった“アクションで物語を構成する映画”を実現させました。この撮影のためにタイの国技でもある格闘術カリやあのブルース・リーの開発した格闘技ジークンドーのインストラクター資格まで取得しています。



(C)2015“Library Wars LM”Movie Project



3:大自然の中で


高倉健が“健さん”のパブリックイメージ“困難に対して寡黙に耐え抜く男”を築いた作品群の中に雄大かつ過酷な大自然を舞台にした映画たちがいます。木村大作カメラマンと組んだ『八甲田山』や永らく邦画実写興行収入一位の座をキープしてきた『南極物語』などのタイトルがすぐに浮かびます。また、北海道を舞台にした映画も多く“健さんといえば北国”のイメージもあります。

岡田准一も『エヴェレスト 神々の山嶺』ではエヴェレスト山脈の標高5200メートルまで実際に登りそこでロケを行った。この撮影直後にネパール地震が発生、劇中には今はもう見ることができない地元の街並みも映っています。

エヴェレスト 神々の山嶺


(C)2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会



4:時代劇俳優として


時代・社会の流れの中で任侠モノを作れなくなっていくなかで、それと入れ替わるようにフィルモグラフィーに増えてくるのが時代劇『四十七人の刺客』ではそれまでにはなかった硬派な大石内蔵助像を確立しました。

大河ドラマ「軍師官兵衛」の主演の記憶も新しい岡田准一は『花よりもなほ』(間接的に忠臣蔵つながりがありますね)『天地明察』『蜩ノ記』公開待機中の『関ケ原』と正統派時代劇の新しい顔になりつつあります。

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(C)2017「関ヶ原」製作委員会



5:ロマンスはほんのりと


岡田准一はアイドルグループの一員でもあるのでラブストーリーもこなしますが、それは全体として“ベタ甘”路線ではなくほんのりと空気を漂わせる作品が多いです。一番濃いのは『東京タワー』でしょうか?あとは『おと・な・り』も直接的な描写はありませんし、『図書館戦争』などはあくまでもエッセンスです。

健さんも実はラブストーリーの名手。今もロケ地を訪れる人が絶たない『幸福の黄色いハンカチ』降籏&木村コンビと組んだ『居酒屋兆治』『夜叉』『鉄道員(ぽっぽや)』なども不器用な男の恋心を醸し出しています。

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6:真実に向き合う者


公開された『追憶』に「SP」シリーズとサスペンスの牽引役になることも多い岡田准一。日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞を同時に受賞した『永遠の0』『蜩ノ記』もまた、隠された真実を体現する役であり、真実に触れる役でもあります。

健さんも若手売り出し期に金田一耕助を演じたぐらいですから、真実の探求者、真実に向き合う者という役どころは多いです。降旗監督&木村カメラマン&高倉健主演の黄金トリオの『駅-station-』などは刑事モノですし、『単騎、千里を走る。』遺作『あなたへ』も謎解きは別の意味で隠された、気が付くことのなかった事柄を求めるドラマでした。

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7:巨匠との競作


健さんと降旗康男監督とは『昭和残侠伝』の助監督からの付き合です。ほかに内田吐夢、佐藤純弥、山田洋二、市川崑、海外からはシドニー・ポラック、ロバート・アルドリッチチャン・イーモウ、リドリー・スコットとそうそうたる名前が並びます。

岡田准一も今回、『追憶』で降旗康男監督と組むことになりましたが、次作『関ケ原』の原田眞人、平山秀幸、滝田洋二郎、小泉堯史、山崎貴、是枝裕和、成島出と現在進行形の巨匠・ヒットメイカーと組み続けています。

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(C)2017「関ヶ原」製作委員会



俳優・岡田准一世界進出なるか!?


高倉健がロバート・アルドリッチ監督『燃える戦場』に出演したのが39歳の時。今の岡田准一が36歳。国内の映画賞はあらかた獲りきった感もあるなか、やはりそうなると自然と海外での活躍が見たくなるものです。英語の壁はあるものの、動けることは何よりも大きな武器になるといっていい。

同じく動けることを武器に海外で成功収めた真田広之が『ラストサムライ』でハリウッド進出をしたのが42歳で、その後もジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ共演の『ライフ』が今年公開されるなどコンスタントな活躍を見せている。

岡田准一の所属している芸能事務所の特異性が壁になるかもしれませんが、やはり40歳までには世界に打って出てほしいところです。ケン・ワタナベ、ヒロ・サナダに続く本格ハリウッド俳優としての彼がぜひ見たいものです。

(文:村松健太郎)

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