天才子役プレイバック!ダフネ・キーンはテイタム・オニールの再来となるのか?
(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation
現在公開中の『ローガン』を観たとき、どこか楽しげな既視感を覚えたのである。その後で、監督であるジェームズ・マンゴールドのインタビュー記事を読んで、その正体がはっきりした。これは73年に制作されたピーター・ボグダノヴィッチ監督の名作『ペーパー・ムーン』だ、と。
<〜映画は女優で作られる〜vol.8:天才子役プレイバック〜ダフネ・キーンはテイタム・オニールの再来となるのか?>
大恐慌時代のアメリカ中西部を舞台に、ケチな詐欺師モーゼは元恋人の娘アディを親戚の家に送り届ける羽目になる。頭の回転が速いアディは、彼女を見捨てようとしたモーゼをうまく言いくるめ、いつのまにか〝仕事〟の相棒として旅をすることに。次第に二人は父娘のような絆を感じていくのである。
言わずもがな、アディを演じるテイタム・オニールと、モーゼ役のライアン・オニールは実の親子である。女優ジョアンナ・ムーアとライアンの間に生まれたテイタムは、両親の離婚後にジョアンナに引き取られるが、当時大きな話題となった裁判を経て父の元に戻ってくる。
その年、ライアンは『ある愛の詩』でアカデミー賞候補に挙がり、受賞を逃したのだが、娘のテイタムはデビュー作である本作でいきなりアカデミー賞助演女優賞を受賞する。当時10歳。演技部門の最年少受賞記録は40年以上経った今でも破られてはいない記録だ。
映画の後にはテレビシリーズの制作や、ミュージカル版(日本で99年に上演されたミュージカル版ではアディを前田亜季が演じていた。筆者はそれで同作の存在を知ったのだが)など、今でも広く愛され続けているのは、何と言っても実の親子である二人の掛け合いのバランスの良さが魅力的だからであろう。
まったくの演技初心者であるテイタム・オニールが、ここまでナチュラルに演じきっているのは、役者である両親から受け継がれた血脈もあるが、終始父と共演するシーンが続いたことが大きい。
小憎たらしい子役というのは、変に演技が上手すぎるとどうにも嫌な感じに映ってしまうものである。このぐらい自然な演技で、時折子供らしい表情を見せるというギャップがあったからこそ、彼女は評価されたのではないだろうか。
テイタム・オニールは現在53歳(まだ若い!年齢的にはジョニー・デップやブラッド・ピット同い年ということか)。薬物中毒やセンセーショナルな自伝の発表などで世間を騒がした天才子役は、近作では2010年に公開された『ランナウェイズ』で、先週の当コラムで紹介したダコタ・ファニングの母親役を演じ、天才子役二人による母娘役という贅沢な一幕を見せてくれた。
そして、2014年には、『ペーパー・ムーン』で彼女を抜擢したボグダノヴィッチ監督の『マイ・ファニー・レディ』に出演。まだまだ大いに活躍が期待できる年齢なだけに、そろそろ華麗なる復活を遂げて欲しいところである。
話を『ローガン』に戻すと、ダフネ・キーン演じるローラは、劇中で父であるローガンを手伝いながら旅をしていく。そして、ミュータントの子供達がいる場所へと送り届けられていくというロードムービーを、西部劇風のタッチで綴られていく。まさに『ペーパー・ムーン』的展開だ。
アメコミ映画としては異例の高評価を集めている同作だけに、ダフネがアカデミー賞助演女優賞の有力コンテンダーの一人であることは間違いないだろう。もし受賞にこぎつけたとしても、テイタムの記録は破ることができないのだが。
(文:久保田和馬)
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