天才子役を振り返る〜ダコタ・ファニングの神がかり的な感動演技〜

6月1日から公開され、大ヒット上映中の映画『ローガン』。『X-MEN』のスピンオフシリーズとして、ヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを演じる最後の作品として注目を集める同作で、ジャックマン以上に注目を集めているのが、ローラを演じているダフネ・キーン。

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今回のコラムでは少し趣を変えて、〝天才子役女優〟にフォーカスを当てていこうと思う。ダフネ・キーンと同じく、映画界に彗星の如く現れた天才子役女優としてまず思い浮かぶのは、2001年に公開された『アイ・アム・サム』のダコタ・ファニングだ。

<〜映画は女優で作られる〜vol.7:天才子役プレイバック〜ダコタ・ファニングの神がかり的な感動演技>

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7歳相当の知能を持つ知的障害者のサム。その娘のルーシーは7歳になり、父親の知的能力を追い越してしまうのである。ソーシャルワーカーによって養育能力がないと判断され、娘と引き離されてしまったサムは、ルーシーとの幸せな暮らしを取り戻すために法廷闘争に乗り出すのである。

このサムの娘、ルーシー・ダイヤモンドを演じているのが当時7歳のダコタ・ファニングだ。明るく聡明で、7歳という年齢を感じさせないほど大人びた振る舞いで父親を支える一方、大人たちの決めたルールによって大切な父親から離れなくてはならない辛さ、子供らしい無邪気な姿を巧みに演じ分ける。とてもこれが正式なデビュー作とは思えないほど見事な演技であった。(実際にはこの直前に他愛もないコメディ映画にカメオ出演したのが映画デビュー作ではあるのだが)

若手俳優を称える賞を設けた批評家賞を総なめにしたのはもちろんのこと、アメリカ俳優組合賞の助演女優賞候補にも挙がり、一躍注目の的となった。アカデミー賞ではサムを演じたショーン・ペンが候補入りを果たしたが、残念ながら彼女はノミネート漏れ。しかし、実際に候補入りした5人が超大御所揃い(受賞した『ビューティフル・マインド』のジェニファー・コネリーを筆頭に、マギー・スミス、ヘレン・ミレン、マリサ・トメイ、ケイト・ウィンスレット)だったことを考えると、何も悲観する要素が無いのも事実。むしろ直前までこの5人と対等な評価を与えられていたというのは驚異的なことである。

彼女の役名である〝ルーシー・ダイヤモンド〟というのは、劇中で多用されるビートルズの楽曲のひとつ、「Lucy in the Sky with Diamonds」から取ったものだと紹介される。サムがビートルズの大ファンという設定なのだ。この曲の中で登場する少女は、万華鏡のような目、あるいは太陽のような目をしているとも形容されている。その歌のイメージの通り、ダコタ演じるルーシーの目は常に透き通り、まっすぐと父親サムを見守り続ける。

そんな健気な少女の姿に、世界中が涙に包まれたのは言うまでもない。まして、全米では興収1億ドルに満たない〝ややヒット作〟だった本作が、日本では30億円超のヒット作となり、その後もレンタルなどで高い人気を集めているのは、単なる感動作だからではなく、ダコタ・ファニングという天才子役の存在があまりにも大きいのではないだろうか。

この映画から15年以上の月日が流れ、最近ではめっきり出演作が少なくなってしまったダコタ。代わりに4つ下の妹エル・ファニングの活躍が目立っているわけだが、(現在も『夜に生きる』と『20センチュリー・ウーマン』の2作が日本で公開中だ)そのエルのデビュー作も、この『アイ・アム・サム』なのだから驚きである。ルーシーの幼少期を妹エルが演じ、その成長した姿を姉ダコタが演じる。やはりファニング姉妹のポテンシャルの高さは尋常ではない。

(文:久保田和馬)

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    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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