時速300kmで走る密室『新感染 ファイナル・エクスプレス』が涙する作品だったとは

新感染 ファイナル・エクスプレス 表ビジュアル


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時速300kmで走る韓国の新幹線・KTX101号を舞台に、次々と乗客がゾンビとなって襲いかかる映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』が2017年9月1日公開となります。

ゾンビに噛まれたらアウトという原因不明のウイルス感染をテーマにした、いわば『バイオハザード』や『アイアムアヒーロー』風の作品ではあるものの、2016年カンヌ国際映画祭で絶賛され、カナダのファンタジア国際映画祭では最優秀作品賞を受賞するなど、世界中で大絶賛。

メガホンを取ったのはヨン・サンホ監督。実写作品を撮るのは初めてなんだそうですが、登場するそれぞれの人物についての描写が濃密。おかげでガッツリと感情移入してしまい、まさかゾンビ映画で涙を流すとは思っていませんでした。これまでのゾンビ映画とは一線を画する作品です。

仕事一筋のソグが娘に対して父親として何をするか


証券会社のファンド・マネージャーである主人公ソグは家庭を顧みない典型的な仕事人間。ひとり娘のスアンを連れてKTXに乗り、別居中の妻がいるプサンへ向かっている最中に事件が起こります。

ゾンビになった乗客から車内を逃げ惑うなか、他の乗客や乗務員は生き残るためにあらゆる手段を講じるのですが、助け合おうとする人、自分だけ生き残ればいいと考える人、誰かのために犠牲になる人など、登場する人の性格や人間味がスクリーンからにじみ出てくるんですよ。

危機的状況下で人間はどんな行動をするのかを非常にリアルに見せてくれる『新感染 ファイナル・エクスプレス』はなんとも残酷で、そのなかで愛を感じられます。



徐々に見せる父親らしさ、助け合う心、人間のエゴ


登場人物たちにはそれぞれのドラマがあり、脇役である人物たちがとても魅力的です。

なかでも、筆者が気に入ったのは妊娠して大きなお腹をした妻とともに運悪くKTXに乗車してしまったサンファ。マ・ドンソク演じる体格のいいおっさんで、とにかくコイツが熱い。この作品はサンファがいなかったらきっと成り立たないと思うし、第二の主人公と言っても過言ではないと思います。登場してすぐにファンになってしまう観客も少なくないでしょう。大好きです!

そして、やはり見どころはずっと自分のことしか考えていなかった主人公のソグが徐々に娘に対して心を開き、他人を思いやるようになる心の変化でしょうか。ぜひ劇場で感じていただきたいです。



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高速で走るKTXのスリリングさは韓国史上初の装置


タイトル通り韓国の新幹線KTXが舞台である作品なんですが、高速移動している車内を表現するために韓国史上初となる装置を導入。

LEDリアプロジェクションといい、KTXのセットの外にたくさんのLEDディスプレイを設置し、そこに映像を背面から投影することで車窓から見える時速300kmで動く景色を表現しているんです。これは観客としては完全に騙されました。本当に走っているKTXで撮ったものとしか見えないからです。

また、ゾンビに施された特殊メイクとCG、奇抜な動きはより恐怖感を増幅させています。車内が舞台だからといって、決して襲いかかってくるゾンビが少ないわけではないですし、特殊メイクにかけた手間暇も相当なもの。この凄さをぜひチェックしてほしいです。

新感染 ファイナル・エクスプレス ティザービジュアル 裏


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4DX版は体感できるハラハラ・ドキドキがハンパない


試写したのは4DX版。思っていたよりも水しぶきや煙が出るシーンはほとんどなく、そのかわりにシートが振動したり、傾いたりするシーンはかなり多め。劇場でポップコーンを買うのは控えておいた方がいいですね。

新幹線の中にいる臨場感とゾンビから逃げる恐怖感を目と耳だけでなく、体で感じたいなら4DX版がオススメ。けっこう怖いです。何度もシートからお尻がずれ落ちるくらい揺れと振動が繰り返し襲ってきます。

ただ、4DX版でなくても十分に恐怖感を体験できる作品になっているので、上映中の劇場が近くにあったらぜひ観ていただきたいと思います!


例のないゾンビ作品。ラストはまったく想像できなかった


KTXがいくつかの駅に到着するときにはソグたちとともにホッとする自分がいました。そう、新幹線なので駅と次の駅までの区間が長いんですよね。いつになったら次の駅に着くのか、本当に終点のプサン駅まで行けるのか、完全に気持ちが作品のなかに入っているせいでずっとドキドキが止まりません。

単なるパニックホラーだと思って試写した筆者でしたが、初めて実写映画を撮ったヨン・サンホ監督の愛を強く描き切った本作の凄さを目の当たりにしました。『新感染 ファイナル・エクスプレス』は世の中にはこんなゾンビ映画があるのかと、きっと観た者の心に刺さる作品となるのではないでしょうか。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』は2017年9月1日より、新宿ピカデリーなど全国で公開予定です。

(文:アスカ)

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