映画コラム
『スパイダーマン:ホームカミング』アイアンマンが15歳のスパイディを仲間にした理由とは?
『スパイダーマン:ホームカミング』アイアンマンが15歳のスパイディを仲間にした理由とは?
(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.
マーベルコミックスを代表する人気ヒーロー、それがスパイダーマン!
今回は11日から公開中の最新作『スパイダーマン:ホームカミング』を、公開2日目の最終回で鑑賞して来た。場内は意外にも女性の姿が目立っており、やはりこれは主演のトム・ホランドが女性を中心に大人気!というためだろうか?
遂に本格的に我々の目の前に姿を現した、新生「スパイダーマン」!果たしてその内容とは、一体どんな物だったのか?
予告編
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ストーリー
昼間は15歳の普通の高校生として生活し、放課後は憧れのトニー・スターク=アイアンマンから貰った特製のスーツに身を包み、NYの街を救うべくご近所パトロールの日々。そんなピーター・パーカー=スパイダーマンの目標は、アベンジャーズのメンバーとなり、いつか一人前の「スーパーヒーロー」として認められること!
ある日、トニー・スタークに恨みを持つ悪人「バルチャー」が、巨大な「翼」を装着し、NYの街を危機に陥れる。アベンジャーズに任せておけ、そんなスタークの忠告も聞かずに、ピーターは一人でバルチャーとの戦いに挑むのだが・・・。
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何故、アイアンマンは15歳のスパイダーマンを仲間に加えたのか?
昨年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、「アベンジャーズ」の世界にサプライズ出演的に登場したスパイダーマン。
日本の観客にとっては正に夢の共演実現!だったのだが、2005年から始まったコミックス「ニューアベンジャーズ」でも描かれる、アイアンマンとスパイダーマンの共闘は、続く「シビル・ウォー」での二人の関係性と決裂に至るまで、アメリカの観客やコミックファンにとっては既に馴染みの深い物となっている。
そのため、すでに映画化された『シビル・ウォー』からの流れ上、映画『ホームカミング』にアイアンマンが登場するのは当然だと言える。
では、そもそも何故映画『シビル・ウォー』において、アイアンマンは実戦経験の少ない15歳の高校生であるスパイダーマンを、わざわざ死の危険がある戦いに加えたのか?実はこれこそが今回のリブートにおける最重要点であり、過去のスパイダーマン映画とは一線を画す点なのだ。
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実はスパイダーマンには、多くの人々が忘れがちな、ある重要な要素がある。
それは、スパイダーマンの武器=クモ糸が「人を殺さず、傷付けない」という点だ。
原作コミックの読者の方なら良くご存知かと思うが、本作のセリフにもある様に、実はスパイダーマンのクモ糸、2時間が経過すると溶けて消えてしまうのだ。
あくまでも一時的に悪人の動きを封じたり、捕らえて警察に引き渡すための武器であり、時にはネットとして救助に使ったり、事件現場に早く向かうための移動手段としても、クモ糸は使用されて来た。今回の映画の見せ場でもある、真っ二つになる巨大なフェリー船を繋ぎ留めるためにクモ糸が大活躍するシーンを、きっと予告編でご覧になった方も多い筈。つまり、基本的に「人々を守るご近所のヒーロー」として、スパイダーマンは存在するのだ。
今回の映画にも、最初は使用できる機能が制限されていたスパーダーマンのスーツが、その制限を外した途端「即死モード」など、強力すぎる武器や性能に逆に困る描写が登場する。これも、スパイダーマンが決して破壊や攻撃のヒーローでは無いことを良く表しており、突然強力な攻撃力を得て戸惑う彼の姿こそ、今回のリブートでは描かれなかった、ベン叔父さんの死に直面する以前の彼の姿だと言えるだろう。
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それに対してアイアンマンは、文字通りスパイダーマンとは「真逆」の存在だ。
自身の正体を公にし、全身がハイテク武器で武装されたアイアンマンは、攻撃・破壊により敵を殲滅して、悪を排除するヒーロー。
ここで一つ思い返して頂きたい。映画「シビル・ウォー」でアイアンマンが対決しなければならなかったのは、かつての盟友であるキャプテンアメリカやその仲間たち。
当然彼がキャプテンアメリカたちと戦えば、死者が出たり双方に多大な被害が出ることは避けられない。
キャプテンたちかつての仲間を、殺さず傷つけることなく無力化出来る唯一のヒーローとして、スパイダーマンは仲間に加えられたという訳だ。
自身の正体を隠し人々の中に同化して、より近い距離で人々を守るスパイダーマンの姿こそ、正にアイアンマンにとっての理想のヒーロー像であり、兵器開発の道に入らなければ、自身も彼の様になれたかも知れないと思わせる、「失われたイノセンスと理想」の体現者だとも言える。
過去のスパイダーマン映画と少し異なり、実は本作を通し一貫して描かれるのは、スパイダーマンが人々を守り救助する姿。
「果たしてヒーローの存在意義とは、敵の殲滅・撃退か?それとも被害に遭う一般の人々の救助・防衛か?」
実はこのテーマは、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』からの引きでもあり、続く『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での抗争の原因とも密接に関係している。
この点を踏まえて考えると、予告編でも印象的だったフェリー船の分断シーンに登場する、アイアンマンの小型ブースターの存在が重要な意味を持つことに気付く筈だ。
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もはや敵を倒すための武器だけでは無く、被害を食い止め人々の命を守ることも想定しなければ、これからのヒーローは存在し得ない。この世界観とメッセージ性があってこそ、アイアンマンは「敵を殺傷しない武器を持ち、一般人と近い距離にいて守ることが出来る」スパイダーマンの存在に注目し、若い彼の将来性に賭けたのだ!
実は本作のラスト(大勢の記者を前にしての記者会見に臨むか否かの選択)こそ、原作コミック「シビルウォー」の一編として書かれた、「アメイジング・スパイダーマン/シビル・ウォー」の苦い展開を予感させる物であり、それを踏まえて鑑賞すると、本作では意外にスパイダーマンの正体を知る人が周りに多いという点が、後にどれ程重要な意味を持って来るかが、より深く理解出来る筈だ。
最後に
ここまで述べて来た様に、今回のリブートでは作品全体の方向性は、現在のコミックスの世界観を踏襲しており(アイアンマンとスパイダーマンが共に加わって戦う「ニューアベンジャーズ」や、日本のCS放送でもアニメ版が放送されている「アルティメット・スパイダーマン」など)、その上で初期原作に登場するヴィラン(悪役のキャラクター)も多数登場するということで、正に全方位外交的に多くの世代に渡って楽しめるのが、この「ホームカミング」の魅力だと言える。
もちろん原作に馴染みの無い観客にも、本作は単体の映画として充分楽しめるのだが、やはり細かい部分は情報として入れておかれた方が無難かも?
幸い今回は、劇場版パンフが2種類作成されて劇場で販売されているので、興味が湧いた方や疑問点があった方は、迷わず鑑賞後の購入をオススメします。
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(文:滝口アキラ)
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