長澤まさみ主演『散歩する侵略者』は愛について考えさせられる物語
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
2017年9月9日公開の映画『散歩する侵入者』を一足先に観てきました!
愛する人が宇宙人になって帰ってきた。地球を侵略するために
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『散歩する侵略者』はこれまでにない映画といっても過言ではありません。
宇宙人に乗っ取られた夫が地球を侵略するために帰ってくるという大胆な設定。それに加え、地球をじわじわと侵略していく側面を描いたサスペンス、さらに「愛」について描くという壮大なエンターテインメント映画なのです。
【あらすじ】
数日間行方不明だった夫・加瀬真治(松田龍平)がまったく別人になって帰ってくる。不仲だった夫婦の関係だったにも関わらず、優しくなった真治に戸惑う鳴海(長澤まさみ)。その一方、街では一家惨殺事件が起こる。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は取材中に謎の青年・天野と出会い、立花あきらを探して欲しいと依頼。天野に興味を持った桜井はそれを手伝うが、その矢先、天野が宇宙人だということを知る。さらに地球に来た目的は「地球を侵略するためだ」ということを打ち明けられる。
宇宙人が地球を侵略するというよくあるストーリーなのですが、他の映画と違う点は、宇宙人が奪うものは人間の「概念」であることです。概念を奪われた人間からはその概念が永遠に生まれず、教えようとしても二度と覚えることができないのです。
「家族」「仕事」「所有」「自分」の概念を奪う宇宙人。そして概念を奪われる人間。それと並行して迫り来る侵略。『散歩する侵略者』は一番大切なものは何かを描くSFサスペンス映画となっています。
静かに迫る侵略の中で問われる「愛」とは何か?
『散歩する侵略者』は加瀬鳴海役の長澤まさみさんと加瀬真治役の松田龍平さん夫婦のシーンと、ジャーナリストの桜井役の長谷川博己さんと謎の青年・天野と謎の女子高校生・立花のシーンが交互に描かれます。
不仲だった夫婦と、宇宙人を観察する桜井。どちらも宇宙人と共に行動するのですが、違う側面を描いています。
加瀬夫婦のパートでは、宇宙人となり性格が全く変わってしまった真治とのやり取りの中で互いの関係性を見つめ直すところが描かれています。夫婦関係が崩壊していたはずの2人が奇しくも向き合うことになるのです。「自分は宇宙人で、地球を侵略しに来た」と告白する真治に対して、鳴海がどう接していくのかが見どころとなっています。
また、真治は「家族」「仕事」「所有」など当たり前に我々が持つ概念を奪っていく中で「愛」という概念も奪おうとします。しかし、とある理由で「愛」の概念を奪おうとはしません。なぜ奪わないのか。彼は「愛」という概念を奪うことができるのか…
また、ジャーナリストの桜井のパートでは、宇宙人を名乗る天野、立花の2人と共に人々から概念を奪っていき、地球を侵略していくサスペンスの部分がメインで描かれます。天野と立花を名乗る宇宙人の存在に最初は半信半疑だった桜井は、不可思議な出来事に直面し、戸惑いながらも行動を共にします。未知の存在である宇宙人と、その動きを阻止しようと密かに動く政府との間で揺れ動く桜井の行動に注目です。
哲学的な側面とサスペンスな側面、2つの面を持つ『散歩する侵略者』はかなり濃厚な内容となっています。
配役が本当に素晴らしい!このキャストだからこそ描けた映画!!
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
ストーリーが素晴らしいことに加え、配役も素晴らしい!
不仲だった夫婦関係を見つめ直し、苦悩する長澤まさみさん。
宇宙人に乗っ取られ、無表情で不気味ですが、それでいて無垢を感じさせる松田龍平さん。
事件に巻き込まれ、地球が侵略されていくのを一番近くで見ている長谷川博己さん。
メインのお三方は本当に素晴らしく、賛美の拍手を本当に送りたいです! 特に終盤の長谷川博己さんがミサイルで狙われるシーンは本当に素晴らしいので、ここは見逃さないで欲しいです。
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
ストーリーのキーとなる宇宙人役の高杉真宙さん、恒松祐里さんも無邪気で、どこか普通の人間とは違うオーラが出ていて、この人は他の人とは違うと納得できる演技。特に恒松祐里さんは綺麗な顔立ちからは想像つかないアクションシーンが多く、本当に宇宙人に乗っ取られているかのようでした。
そして、宇宙人に概念を奪われて性格が大きく変わってしまう満島真之介さん、不気味な雰囲気を大きく放つ牧師役の東出昌大さんなど、ストーリーの大きなポイントとして存在感を大きく残しています。
宇宙人が地球を侵略し、「概念」を盗むというこれまでにない形のSFサスペンス映画。観終わった後には自分の大切なものについて考えてしまう大きな結末を迎えます。
加瀬成美と真治は夫婦の形を取り戻すことができるのか。
宇宙人に地球を侵略されてしまうのか。
ぜひ劇場で結末を見届けてください。
(文:澤田孝志)
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