『あさひなぐ』はアイドル映画という括りは絶対にはずせ!




(C)2017 映画「あさひなぐ」製作委員会
(C)2011 こざき亜衣/小学館



2016年大ヒットした青春劇『ちはやふる』。

競技かるたに打ち込む少女とその周りの仲間たちの成長と苦悩を描く青春劇は大ヒットを記録するだけでなく、批評面でも高い評価を受けました。

その『ちはやふる』の跡を継げるのでは? という作品がついに現れました。それが目下グループアイドルのトップを走り続けている乃木坂46の中心メンバー総出演の映画『あさひなぐ』です。

メインキャストを乃木坂46のメンバーが演じ、舞台版の上演&映画版の公開を立て続けにいくビッグプロジェクトの後半戦、映画版『あさひなぐ』がついに公開です。

【あらすじ】
中学まで美術部だった東島旭(西野七瀬)は、二ツ坂高校に進学し、「薙刀は高校部活界のアメリカンドリーム」といううたい文句に誘われ、なぎなた部に入部します。二年生の宮路真春(白石麻衣)のたたずまいの美しさに憧れ、同じく新入部員の八十村将子(桜井玲香)や紺野さくら(松村沙友里)、2年生の野上えり(伊藤万理華)大倉文乃らとともに稽古に励みます。やがて3年生にとって最後の試合となるインターハイ予選を迎えますが、圧倒的な強さを誇る1年生・一堂寧々(生田絵梨花)を擁する國陵高校に決勝で敗退。3年生が引退し、野上を新たな部長に再スタートを切った薙刀部は、寿慶が住職を務める白滝院での地獄のような夏合宿を経て成長していきます…


『ちはやふる』と『あさひなぐ』8つの共通点






(C)2017 映画「あさひなぐ」製作委員会



(C)2011 こざき亜衣/小学館



1. 『ちはやふる』『あさひなぐ』両作ともコミック原作で現在も連載が続く長期連載


どのエピソードをどう抽出するか、どう換骨奪胎するかは脚本家の腕の見せ所。

2. 監督が脚本を担当し、作品全体のバランスを欠くことなく映画ができている


何よりバランスが良いと感じたのが“勝ちと負け”の絶妙な流れです、細かくはネタバレになるので書けませんが、この主人公(と主人公チーム)の負け方と勝ち方の映画内の置き方が絶妙です。

3. キャスティングは最旬なキャストを起用


アイドル戦国時代の最前線を走る乃木坂46の2TOP西野七瀬と白石麻衣がヒロインと、もう一方の主役といっていい薙刀部のエースを熱演。

4. 最強のライバルが抜群の存在感を発揮している


『あさひなぐ』ではヒロインたちの前に立ちふさがる強敵を乃木坂46の人気メンバーの生田絵梨花が演じています。『ちはやふる』の競技かるたクイーンを好演した松岡茉優を彷彿とさせ、少ない出番ながらもいい味を出しています。

5. 部活動の中でもマイナー競技にスポット


両作品とも高校の部活動の中でもマイナー競技(競技かるたと薙刀部)にスポットを当てて魅力的に描いています。実はこれが最大の共通項かもしれませんね。

6. 特訓場所がお寺


厳しくも優しい指導者(『ちはやふる』なら國村準、『あさひなぐ』なら江口のりこ)がしっかりと描かれているのも同じです。彼らの存在をしっかりと描いたところで競技の試合中の説明役をすんなり務めさせることができています。(なので、あまり競技のことをわかっていなくても映画はすんなり楽しめます!!!)

7. ともに団体戦を描いている


当然ヒロイン以外のメンバーも登場するわけですが、限られた時間の中でその描き分けもなかなかよくできています。競技スタイルと絡めて性格や成長を描いて見せるという手法がまず巧くはまっています。スタイルの変遷の部分はこれまた特訓場所のお寺の住職が端的に語ってくれているので大丈夫です。

8. 森永悠希の好演


森永悠希って誰だ!? と思われる人のほうがまだまだ多いでしょうが、『ちはやふる』の競技かるた部の “机くん” です。『あさひなぐ』では白石麻衣演じる宮路真春の弟を演じています。

原作ではヒロイン旭と惹かれあう仲ですが、映画劇中ではその部分は思い切って削られていて、その一方で旭と憧れの先輩真春との繋がりをつよくする役。そして3年生が引退して以降の新チームでプレッシャーを一人で背負い力みがちになる姉・真春の背中をそっと押す役を好演しています。

アイドル映画の括りは絶対にはずせ!!






(C)2017 映画「あさひなぐ」製作委員会



(C)2011 こざき亜衣/小学館



乃木坂46主要メンバーが結集の青春劇という響きだけを見れば “ド直球のアイドル映画” としか見ることはできないかと思いますが、その括りは絶対にはずしてください!

アイドル主演映画といえば実際のアイドルのキャラクターを前提とした役作りに、随所に入る楽曲の数々、しまいにはコンサートシーンまで挿入されてしまったりすることもありましたが、本作はそういった部分は皆無。エンドロールで19thシングルに決定した「いつかできるから今日できる」が流れるところで “ああ、そうかそうか乃木坂46の主演映画だったっけ” と思い出すぐらいです。なので、アイドル映画、キラキラ映画という括りは絶対にはずして見てください!

思えば、『ちはやふる』もコミック原作でビジネス的なにおいのする前後編スタイルに、旬の若手キャストとは言えすでに高卒の面々が制服を着る学園モノといことで “またかよ!?” という突っ込みも公開前にはありました。が、映画が公開されるとそう言った見方をあっさりと作品の力で覆して、興行的な大ヒットしただけではなく、うるさ型の人たちも虜にして批評面でも大成功を収めました。

映画『あさひなぐ』は『ちはやふる』の跡を見事に継いだ、映画の力でアイドル映画の括りをあっさりと覆す力を持った傑作青春映画です。来年には『ちはやふる』も帰ってきますが、早くも『あさひなぐ』の続きも見たくなりました。

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(文:村松健太郎)

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