【徹底解説】『崖の上のポニョ』|なぜ両親を呼び捨て?トンネルの意味は?
5.「大好き!」という感情が世界を救う
ポニョは宗介のことが大好きすぎて、人間になりたいと願ったため、あわや世界が破滅しかけてしまいました。その世界を救ったのも、宗介からポニョへの大好きという感情でした。本作の物語はつまるところ、ただただ「大好き!」という、子どもが持つ純粋な気持ちを肯定していると言っていいでしょう。
宮崎駿は、『崖の上のポニョ』を“神経症と不安の時代に立ち向かう”作品であるとしています。その不安とは劇中で描かれたことだけではなく、経済危機や環境汚染などの、現実の身近な問題のことも含んでいるのでしょう。映画の中でそれらに具体的な問題提起や批判をするのではなく、5歳の子ども(宗介とポニョ)の「大好き!」という感情こそが、不安なことや問題を解決してしまえるというのも、『崖の上のポニョ』の素敵なところです。
そういえば、宗介とポニョがボートに乗っていた婦人(声の担当は『千と千尋の神隠し』で千尋を演じていた柊瑠美)と別れる前、今まで人間だったポニョがなぜか半魚人に戻って、泣きじゃくっている赤ちゃんの顔をギュッとして笑顔に変えてあげる、というシーンがありました。これは、ポニョの“どんな姿であっても、人間の誰かのことを全力で好きでいられる”純粋な性格を表しているのかもしれませんね。
さらに余談ですが、宗介が老人ホームのおばあさんたちに金魚の折り紙をあげている中、「天気予報なんか当てにならないよ」などとぶつくさ文句を言っていたトキさんにだけ、自分のお父さんの乗っている船の折り紙をあげる、というシーンもありました。これも、嵐に負けない船という、トキさんの“不安”を解消してあげるものをあげようとする、宗介の純粋な気持ちが表れたシーンなのでしょうね。
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