山田洋次監督のケッ作喜劇シリーズ『家族はつらいよ』を振り返ろう!
(C)2016「家族はつらいよ」製作委員会
日本映画界の名匠・山田洋次監督が久々に手掛けた喜劇『家族はつらいよ』(16)は、往年の日本映画を愛するファンの支持を得てシリーズ化され、来年5月には第3弾の公開も決定しています。
それを記念して(⁉)、このたび第2弾『家族はつらいよ2』(17)の配信が決定! また10月30日には第30回東京国際映画祭にて、主要キャストのひとり蒼井優が“銀幕のミューズたち”の中に選ばれ、その代表作の1本として“Japan Now”部門で上映されました。
では、そもそも『家族はつらいよ』とはどのような映画なのか、ここで今一度振り返ってみましょう!
現代社会を生きる家族の
諸問題を扱う喜劇シリーズ!
映画『家族はつらいよ』は、東京郊外の二世帯住宅に住む平田周造(橋爪功)&富子(吉行和子)夫婦と、その長男・幸之助(西村雅彦)&史枝(夏川結衣)夫婦と子どもたち。さらに長女・成子(中島朋子)とその夫・金井泰蔵(林家正蔵)、次男の庄太(妻夫木聡)とその恋人・憲子(蒼井優)らが織りなすホームドラマです。
ここでモチーフとなるのは熟年離婚。昭和の頑固オヤジ気取りで生きてきた周造に、富子が突然離婚を要求し、そのことからてんやわんやの騒動が巻き起こっていくのです。
もともと『家族はつらいよ』は、その前に山田洋次監督が小津安二郎監督の名作『東京物語』(53)へのオマージュとして手掛けた『東京家族』(13)と同じキャストを用いて、現代社会のシリアスな諸問題をコミカルに描いてみようという野心のもとに製作されたものでした。
『東京物語』の舞台となった戦後の家族と、それから半世紀以上過ぎた現代の家族は一体何が違うのか? そして何が同じなのか? また社会そのもののありようによって、家族はどのように人生を左右されていくのか?
こうした要素を、山田監督は決して拳を振り上げることなく、喜劇という形で明快に観客に語り掛けながら、人間の幸せについて問いかけていきます。
山田監督は、これを“コメディ”ではなく“喜劇”という言葉が似合う映画にしたいと、こだわっていたとも聞きます。それはすなわち、日本人が古くから親しみ続けてきた情緒ある笑いをここで復活させたいという願いも込められているのでしょう。
なお『家族はつらいよ』は、17年に中国映画『麻煩家族』としてリメイクされています。
また18年には劇団新派によって舞台化され、「新派130年初春新派公演」として、1月2日から1月25日まで東京・三越劇場で上演が予定されています。もちろん演出は山田洋次監督です。
[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年11月3日現在配信中)
熟年離婚、無縁社会、妻の反乱……
現代日本は問題だらけ!
(C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会
第1作のモチーフは“熟年離婚”でしたが、続く第2作『家族はつらいよ2』のモチーフは“無縁社会”です。
ここでは周造とその学生時代の友人の、久々の再会と顛末が描かれていきます。
若き日は幸運でも、運命のいたずらで人生はいかようにも狂わされていく。しかし、国は弱者に何も手を差し伸べてくれないという過酷な現実の中、貧困に陥った老人はいかに生き、死んでいけばいいのか?
ここでは前作以上に痛切なメッセージが、かなりアヴァンギャルドで挑戦的な笑いを伴って描出されていきますが、そこには齢80を越えて映画制作に熱意を燃やす山田監督の若々しさが感じられます。
そして来年5月公開予定の『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』では、長男・幸之助の妻・史枝の反乱が描かれるということです。それまで専業主婦として平田一家の家事すべてを賄ってきた史枝は一体何をしでかすのか?
山田監督は「専業主婦の家事という仕事がどれだけ大変なことなのか? 今回は家族の内側に内在していた夫婦の問題を噴出させていきたい」と“妻への讃歌”を描くべく意欲を燃やしています。
なかなか生きづらい今のご時世ではありますが、様々な問題に警鐘を鳴らしながらも、あくまで温かく人間を見据え、笑いをもってその心を解きほぐそうとする山田洋次監督と『家族はつらいよ』シリーズ、初見の方も、もう何度も見ている方も、この秋お勧めしたいと思います。
(文:増當竜也)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。