映画コラム

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2018年02月26日

不倫?友情?純愛?お隣さん同士の切ない関係『花様年華』

不倫?友情?純愛?お隣さん同士の切ない関係『花様年華』

花様年華 (字幕版)



2018年2月24日から3月2日まで東京・渋谷のBunkamuraル・シネマで中国・香港映画、トニー・レオン主演の『花様年華』が上演されます。「かようねんか」と読むのですが、「花の様に美しい時間」と 言う意味。実はこの作品、イギリスBBCが2016年に発表した「21世紀の名作映画トップ100」の第2位に選ばれているのです。

日本の映画やハリウッド大作を見る機会はやはり多いかと思いますが、またには外国映画も特別な情緒があっていいものです。

2000年に公開された映画ですが、花の様に美しい時間は映画の中で全く色褪せていません。中国・香港映画に馴染みがなくても、名作と呼ばれるだけあって入りやすい映画だと思います。

舞台は1962年、香港。お隣同士に同時期に引っ越して来た2組のカップル。チャイナドレス姿が美しすぎるチャン夫人(マギー・チャン)は、旦那さんが海外出張ばかりでいつも一人で寂しい奥さん。隣に住むチャウさん(トニー・レオン)も奥さんが夜のシフトの仕事ばかり入れているので、夜は家で一人という旦那さん。この頃のトニー・レオンはなんだかオバマ前大統領にそっくり…。



(C)2000, 2009 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.


余談ですが、マギーさんが「チャンさん」、トニーさんが「チャウさん」と名前が近いので、憂いのある美しい映像に見とれていて字幕をしっかり読んでいないと「え?どっちだっけ?」となりがちです。

いつもぼっちだった二人は、伴侶のいない長い夜に本の貸し借りをしたりと、お隣さんとしていい関係を築きます。ところがある日、ひょんなことからお互いの夫と妻が不倫相手同士であることに気づきます。さぁ私たちどうするよ?という話です。

この映画、まず映像が美しい!薄暗い感じや雨の降る静かな情景が言葉なしで語りかけてくるような、そんな作品です。二人の交わす言葉はとても少なく、それがさらに叙情的な哀愁を深めます。不倫されてしまった同士、お互いを慰めるうちにだんだん心の距離が近づいていきます。

主演の2人には、参りましたの一言です。トニー・レオンは、キュンとする切ない顔を連発。表情だけで感情がヒシヒシと伝わります。そしてチャイナドレスをたおやかに着こなすマギー・チャンは本当に美しいです。彼女のすべてが寂しげで儚げなのに、真の強さも伺えます。二人の表情と所作だけで語る映画なので、名作に選ばれるのは当然かと思います。

ハリウッド的なドンドンバーン!という黒白はっきりみたいな映画が好きな人にはとってもじれったい映画だと思いますが、私はとても情緒があって、曖昧でありながらも、見る人がそれぞれ、しっかり自分で解釈を持てる素晴らしい映画だと思います。

映画を見終わった後、『花様年華』(花の様に美しい時間)と言うタイトルに、じんわりとくるものがあります。最近は不倫が何かと話題ですが、伴侶に裏切られたお隣さん同士が繰り広げる微妙な距離、切ない気持ち、言葉にならない叙情をぜひ味わって見てください。

(文:岩田 リョウコ)

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