大傑作『ワンダー 君は太陽』を更に深く楽しむためにオススメな2本の映画とは?


 (C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.



劇場公開日が迫るにつれて、次第にTVスポットを目にする機会が多くなるなど、地道な宣伝展開が成功して話題作となった映画、『ワンダー 君は太陽』。

予告編の印象からも、その内容の良さが十分に伝わって来ていた本作を、今回は公開二日目の最終回で鑑賞してきた。残念ながら二番目に小さい100席程度のスクリーンでの上映だったが、場内は女性層を中心にほぼ満席状態だった本作。果たして、宣伝の通り泣ける内容だったのか?

ストーリー


10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきた。27回もの手術を受けたせいで、一度も学校へ通わずに自宅学習を続けてきたオギーだが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」という反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に行かせようと決意する。

 夏休みの間に校長先生に会いに行ったオギーが紹介されたのは、ジャック・ウィル(ノア・ジュプ)、ジュリアン(ブライス・カイザー)、シャーロット(エル・マッキノン)の3人。いかにもお金持ちの子のジュリアンはオギーに、「その顔は?」と聞いてきた。オギーは毅然とした態度をとるが、帰宅してからは元気がなかった。

学校に通い始めた彼は同級生と仲良くしたいと願うが、じろじろ眺められたり避けられたりする。しかし彼の行動が、周囲の態度を少しずつ変えていき……。
(公式サイトより)


予告編


意外にも、単なる少年の成長&感動物語だけではなかった!


ネットでの高評価通り、確かに泣ける感動作の宣伝文句に間違いは無かった本作!

ただ、事前に見た予告編からは分からなかったその意外な構成に、本作は単純な泣かせ目的の作品とは違う、そう感じたのも事実だった。
一番意外だったのは、主人公オギーの成長の物語だけでは終わらない、より多面的な内容だったこと。

実はオギーの物語だけでなく、彼の初めての友人であるジャック、オギーの姉のヴィア、更にヴィアの親友であるミランダの視点から、「実はあの時こうだった」として、各人の別の視点からも物語が描かれる構成になっていたからだ。

この構成により、実はオギーの友人だと思われていたジャックが、何故あの様な態度をとったのか?そしてジャックがオギーと友達になった真の理由が、ジャック本人の語りで観客に明らかにされることになる。同じくミランダがヴィアを避けるようになった本当の理由も、彼女の視点から語られるのだが、この時点で当のオギーやヴィアには、自分を裏切った様に見えている彼らの本当の気持ちはまだ分からない。

ここで重要なのは、この構成により観客が登場人物に対しての「神の視点」を得られる点だ。これによって、オギーとヴィアにいつ本当の気持ちが伝わり、彼らが再び友人に戻れるのか?という、観客の興味が持続し、また登場人物への感情移入もし易くなるのだ。主人公オギーの周囲の人々が何を考え、また彼らもいかにオギーに負けず悩み苦しんでいるかを伝えるこの構成こそ、本作を単なる泣ける感動作以上のものにしている要因なので、ここは是非お見逃しなく!



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とにかく、子役たちの演技が皆素晴らし過ぎる!


本作の見所は、なんと言っても子役たちの見事な演技にある。

オギー役のジェイコブ・トレンブレイは、『ルーム』の時も素晴らしい演技だったのだが、今回も特殊メイクに負けない名演技を見せてくれる。もちろん彼以外の子役たちも皆素晴らしいのだが、中でもノア・ジュプ演じるジャックが、オギーに避けられる様になった理由にハッと気付くシーンの表情の変化は素晴らしく、いったいどうやって演出したのか?見ていて思わず考えてしまったほどだった。

ただその反面、オギー以外の人物の視点で同じ場面がもう一度繰り返されるため、結果的にサマーやシャーロット、それにジャスティンなどの魅力的な脇役たちのエピソードが減ってしまい、作品中での役割が中途半端になったり、単なる記号的な存在に終わってしまう登場人物が多かったのは残念だったと言っておこう。



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実は本作をより深く楽しむために、オススメの2本の映画とは?


実は本作を細部まで楽しむために、是非観て頂きたい過去作品が2本ある。

1本は言わずと知れた名作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』だ。既に鑑賞された方なら良くお分かりと思うが、本作の中にも『スター・ウォーズ』のキャラが登場したり、主人公のオギーがいつか宇宙に行くことを夢見ているなど、『スター・ウォーズ』旧三部作の主人公ルークを思わせる設定が成されている。特に本作のラストシーンは、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』ラストの勲章授与式へのオマージュとなっているので、時間と余裕があれば是非見返して頂ければと思う。

更にもう1本、本作に大きな影響を与えているのが、青春映画の名作『ブレックファスト・クラブ』だ。これはオギーに学校の中を紹介する3人の子供たちのキャラ設定でも影響は明らかなのだが、一番判り易いのは最初の授業でオギーのクラス担任の先生が子供たちに出す「自分は何者か?」という質問!これはそのまま『ブレックファスト・クラブ』の中で、生徒たちが課題として出された作文のテーマ「自分とは何か?」へのオマージュになっている。普段学校の中では接点のない、異なるタイプの生徒達の衝突と相互理解を描いた『ブレックファスト・クラブ』の内容も、実は本作の内容と大きく関係しているので、これから劇場で鑑賞される方は是非予習として、『ブレックファスト・クラブ』をご覧になることをオススメします!



最後に


異質な物への嫌悪や過度の反応は、子供にとっては逆に関心の現れやコミュニケーションの前段階なのかもしれない。そこで衝突することで、お互いの価値観の違いや認識のズレを補完し、人間は理解し合い成長するのだろう。

映画を良く見ると、実はジュリアンも最初はオギーに対してコミュニケーションを取ろうとしていることが良く分かる。だが、それに対してのオギーの態度が人付き合いに慣れていなかったり、またオギーの方からもジュリアンの言葉の間違いを人前で指摘して、彼に恥をかかせてしまうなど、初対面の段階でお互いに誤解や相違が生まれてしまったことが、映画の終盤でのある悲劇を生むきっかけとなるのだ。

ただ前述した通り、オギー以外の登場人物の物語が丁寧に語られる関係で、どうしてもオギーのエピソードが映画の中盤で後回しにされるため、映画の終盤で唐突にジュリアンのいじめが激化し、結果的に彼だけがオギーと和解する機会も与えられないまま退場してしまうのは、あまりに可哀想過ぎる!と感じたのも事実。

だがそれでもこの部分は、ジュリアン本人が本当は良き心の持ち主であることが明らかにされ、自身の行いの重大さに彼が気付く重要なシーンであり、彼の両親の見事なクズっぷりと、生徒の尊厳を守るために一歩も引かない校長先生の毅然とした態度の対比も実に見事なのだ!

我々大人が子供の手本となることがどんなに大事か、更に、大人のいい加減な態度や偏った考えが、どれだけ子供の将来を捻じ曲げるかが良く分かるこのシーンは、是非劇場でご確認を!

(文:滝口アキラ)

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