「初めて恋をした日に読む話」最終回だけでも楽しめる「6つ」のポイント!



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これまで多くの視聴者をキュンキュンさせてきた、深田恭子主演の火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(TBS系)。持田あきの同名少女漫画を原作に、“人生しくじり鈍感女子”の春見順子を深田が演じ多くの話題を提供してきた同ドラマが、いよいよ今夜、最終回を迎える。

主演の深田に加えて、永山絢斗・横浜流星・中村倫也のイイ男対決にも注目が集まってきた「はじこい」。今回は最終回に向けて、これまでの展開やキャラクターについて振り返っていきたい。

1:圧倒的鈍感アラサー力を発揮する深キョン



たとえば少女漫画を原作にした映画を観ていると、時おり歯が浮くようなセリフだったり思わず顔が火照ってしまうようなシーンに出会ったりする。ただ感情面をくすぐるかどうかはなかなか紙一重なところがあり、コントロールに失敗すると作品そのものがスベったり残念な空気になることも多い。そういった作品があるなかで、「はじこい」について言えば、そういった視聴者の感情コントロールは大成功しているといっても過言ではない。

もちろん演出や脚本によるところも大きいが、深田恭子の飾らない自然体の演技も要因として大きい。初回放送時にはアラサーどころか現在アラフォーの深田が醸し出す“可愛らしさ”が評判を呼び、ツイッタートレンドで1位を獲得したほどだ。彼女が演じる春見順子は、成績優秀な学生時代を過ごしつつも東大受験に失敗し、以降は恋愛にも仕事にも軸足を置けないまま過ごしてきたキャラクター。塾講師を務めるもクビ寸前の彼女が横浜流星演じる“無敵ピンク”頭の由利匡平と出会い、彼に勉強を教えながら自らも変化していく姿を瑞々しいまでに体現している。



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しかし“恋に鈍感”という意味では凄まじく、いとこで同級生である雅志(永山絢斗)の数あるアプローチに全く気づかないレベル。匡平が向ける恋心にも何かと理由をつけてはスルーしてしまうスキルを有している。その鈍感さこそ「はじこい」のひとつの見どころになっており、確実に3人の男たちを(無意識で)振り回すことになっている。なるほど目の前に春見先生のような女性がいれば「そりゃ誰でも惚れるわな」とは思うものの、その鈍感さに振り回されてなお“好きでいられる”というのも相当な想いなのだろう。

確かに順子は、撃てば真っ直ぐ飛ぶ銃弾のように己を突き通す魅力も備えている。文科省の人間でもある匡平の父・菖次郎(鶴見辰吾)が息子を見下せばすぐさま噛みつき、匡平が目指す“東大受験”のモチベーションのひとつになった。また順子は自らの人生の教訓を言葉に変えて伝える能力も高く、彼女の言葉で心を動かされたキャラクターは多い。

2:エリートにしてその優しさ、惚れてまうやろ



高校時代から順子に想いを寄せている、東大出身商社マンの雅志。順子をめぐる恋のバトルのなかではギャグキャラに近い扱いになっていて、ある意味では最も順子に振り回されているキャラだ。しかし、いとこという立場もあって最も長い時間を順子と過ごしてきたわけで、気楽に順子と接することができる位置につけている。そんな雅志は、高校時代にいじめの対象になっていた順子が決して自分を曲げようとしない姿に惹かれ、7秒間見据えた末に恋に落ちることになった。



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順子の圧倒的なスルースキルの前に撃沈し続けていた雅志だが、高校生とはいえ匡平の登場は心配の種。案の定、匡平は順子に想いを寄せ、さらに中村倫也演じる一真も登場して気が気でない。つまり雅志にとって一真はおろか匡平も“恋のライバル”ということになるが、そんな匡平にまで優しくできるのが雅志のイイ男っぷりが輝くところだ。あるときは匡平に東大受験のノウハウを伝え、またあるときは匡平がひとりカフェで自習をしていると自宅に招いて静かに勉強できる空間を与えている。順子や一真と変わらないぐらい匡平の受験に気を回す姿を見ていると、雅志と匡平が同じ学生時代を過ごしていたならこの2人は親友になれたのではと思えてくる。


3:愛すべき一途な“無敵ピンク”匡平



17歳にして一途に春見順子を思うゆりゆりこと由利匡平を演じるのは横浜流星。一見するとクールなキャラクターだが、ひとたび火がつけばどこまでも真っ直ぐな高校生だ。彼は仕事人間の父・菖次郎に反感を抱き、友人グループと縁を切れという父に反発した結果、その翌日から髪をピンクにして登校。不良とまではいかずとも、いわゆる落ちこぼれになってしまった彼は、父親への反発心と“順子のために”という思いから東大受験に驀進する。そんな匡平を実直に演じる横浜の好演もあり、匡平が順子に繰り出す様々なアプローチは何度も視聴者を悶えさせることになった。



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そんな匡平の心情の変化がなんとも初々しく、順子というひとりの女性の前で見せる“男”の表情・態度はまさに少女漫画に登場するクール系王子様キャラそのもの。とはいえ年の離れた女性を想いながらも「18歳になったら想いを伝える」と決め、ときには順子の鈍感ぶりに巻き込まれ心が繊細に動く様子は、決して典型的な王子様キャラの型枠にはまることはない。溢れ出そうになる順子への想いを抑えながら東大受験に励む姿は、女性だけでなく同性からも思わずエールを送りたくなるようなひたむきさがあり、自分にないものを順子のなかに見出す姿もまた、人間ぽさに溢れたキャラクターなのだ。


4:色気ダダ漏れの高校教師・中村倫也



率直に言ってしまえば日本全国津々浦々、どこを探してもこれほど色気が漂う教師はいないだろう。中村倫也演じる山下一真は順子・雅志と高校時代の同級生であり、元不良生徒というのだからそれだけでキャラが濃い。それに輪をかけて不良高校の教師であり匡平の担任という役割があるのだが、良くも悪くも“キャラ立ち”の激しい部分もある。魅惑の低音ボイスがなんとも耳に心地よい一真は、順子が学生時代、唯一告白を受けた人物でもある。そんな一真が順子と再会すれば思わずキャッキャウフフな展開を予想してしまうものだが、既婚者というところがなんともいじらしい。



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かと思えば不仲を理由に一真は離婚してしまい、彼を遮るものはなくなることに。視聴者から待ってましたと言われんばかりに順子への想いが再燃すると、芯に熱いものを持つ一真の感情はノンストップ。酔った拍子に2人が同じベッドで一夜を過ごしてしまった際には、一真の手はなぜか順子の胸元へと伸び、焦った順子に布団で簀巻きにされることもあった。その際に「そこにパイがあったから」などと平然な顔をして迷言を残しており、またある時はベランダを乗り越えて順子の部屋に忍び込むなどその行動は大胆。雅志や匡平に対しどこまでも真っ直ぐその想いを伝えており、鈍感女子の順子もさすがに慌てふためくほどだ。聞こえによっては破天荒キャラのようにも思えるが、実は順子のためなら自分の身を顧みない性格も秘めていて、のちにその行動が大きな意味を成すことになる。

5:魅力的なサブキャラクター、絶妙な演出&脚本



物語は順子・雅志・匡平・一真の4人でほぼ回しているが、その周囲のキャラクターも魅力的。順子・雅志と中学時代の同級生・美和(安達祐実)は、一見冷静に物事を見ているようでいて時として極端なアドバイスでそれぞれの関係に刺激を与えることも。順子の両親・正(石丸謙二郎)としのぶ(檀ふみ)の存在も順子にとって大きなものであり、特に順子が東大受験に失敗して以降のしのぶとの確執は、物語のなかでも重要な位置を占めている。



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そういったメインキャスト&サブキャストのアンサンブルを、上手く絡み合わせた演出や脚本も注目したいポイント。前述のように下手をすればスベりがちな少女漫画の映像化を、違和感なくピタリと画面に収める手立てには驚かされるものがある。些細なセリフにも繊細な物語の鼓動を感じる部分があり、特に順子としのぶの関係性にその面が生かされているように思える。順子の東大受験失敗を機に溝ができてしまった母子の関係は現在まで続くことになったが、匡平と出会い彼の指導を行うなかで順子の変化を目の当たりにしているのは、ほかならぬしのぶでもあるのだろう。匡平の外観から彼を見下すしのぶに、はじめて順子が声を上げる瞬間もあった。筆者のお気に入りのシーンのひとつにはしのぶの行動があり、自室で夜遅く勉強する順子にコーヒーを運んできて「お父さんに淹れたついでだから」とあくまでそっけない。次に台所のカットへ移り、入ってきた正に「コーヒー淹れますか?」と尋ねており、たったそれだけのセリフでしのぶの心情が表されているのが、なんとも心にくい演出ではないか。

また長い年月をかけてようやく和解した、匡平と菖次郎の関係にも胸に響くものがあった。菖次郎は匡平の努力を認め、なおかつ自分が家族をおざなりにして親子の時間を奪ったことについて謝罪。匡平の誕生日会では順子だけでなく、匡平が髪を染めることになった「縁を切れ」と迫った友人グループも一緒になっていたことからも、ガチガチの仕事人間だった菖次郎が解放されたことを表していた。わだかまりの解けた父子の距離は縮まり、どことなく温もりすら伝わってくるほどだ。

6:最終回に向けて



最終回前の直近2話では大きく物語が動くことになった。まず一真は不正への関与を疑われた匡平の父・菖次郎を救うため、不正の本丸でありかつて義父でもあった政治家・吉川に真実を語るよう要求。その見返りとして、離婚した元妻・優華(星野真里)と再婚し、吉川の後継になることを決めた。そうすることでひいては匡平を守ることになり、順子を悲しませないためにもする一真なりの“答え”だったのだ。これで一真は、順子をめぐる恋のバトルから身を引いたことになる。

雅志は会社から3年間のロシア出張を命じられ、ついに順子にプロポーズ。自ら返事を保留させたが、結果がどうであろうと順子に20年間想いを寄せ続けた気持ちにいよいよひとつの区切りがつく。一方、18歳の誕生日を迎えた匡平も、順子に告白。彼女を抱きしめると順子はおもむろに匡平の体に腕を回して受け入れ、ただひとこと「絶対合格して」とだけ伝えた。



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そして順子だが、前週のラストで事故に遭い緊急手術を受けるという衝撃的な展開に。病院に両親や雅志、美和が駆けつけるなか選択を迫られたのが匡平だ。その日は東大2次試験当日で、美和から連絡を受けた匡平は試験会場を前にして立ち止まることに。彼の脳裏には順子と過ごした日々が駆け巡るが、最後に響いたのは「絶対合格して」という順子の声だった。

最終回での注目ポイントは“匡平は東大に合格できるのか”“順子は誰を選ぶのか”という点に絞られていたが、ここにきて順子の容態も心配なところ。仮に元気な姿で戻ってきたとして、雅志と匡平それぞれの告白後の順子の対応からストレートに考えれば、やはり匡平を選ぶのではないかと思う。ただ事故のことを含めると何が起きても(あるいは“何も起こらない”、つまり順子はどちらも選ばない)おかしくはない状況だ。匡平の東大受験に関しては合格を祈るしかないのだが、いまもって「初めて恋をした日に読む話」というタイトルも結末で物語とリンクを見せるのかも気になるところだ。

泣いても笑っても、いよいよ今夜が最終回。それぞれの運命やいかに?

(文:葦見川和哉)

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