映画コラム

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2019年10月04日

『ジョーカー』でも注目!前日譚を描いたエピソード0映画5選!

『ジョーカー』でも注目!前日譚を描いたエピソード0映画5選!



(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics 


2019年10月4日より日米同時公開となるホワキン・フェニックス主演『ジョーカー』が、早くも世界中で話題になっています。

ご存知『バットマン』シリーズの中で最大の悪役として知られるジョーカー。果たして彼はどのようにして誕生したのか? を描いた前日譚ですが、既にヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞し、本年度アカデミー賞最有力の呼び声も高まっています。

その一方で、悪のカリスマ性を大いに際立たせたサスペンスフルな内容に対して米映画館チェーンのAMCシアターとランドマークは、本作公開中の映画館でのマスク着用を禁止するといった措置を発表(2012年『ダークナイト』上映中のコロラド州の劇場内で銃乱射事件が発生したことからの遺族の懸念などを受けて)。

質的にも興行的にも社会的にも今年下半期最大の問題作になること必至の本作……。

そこで今回はシリーズ前日譚たる“エピソード0”を描いた作品を集めてみました!

猟奇殺人鬼の青年期を描く
『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』




(C)2017 LF2 PRODUCTIONS


ホラー映画の金字塔ともいえる『悪魔のいけにえ』シリーズ(74~)で知られる伝説の猟奇殺人鬼で、人の皮でできたマスクをかぶり、チェーンソーを振り回す大男“レザーフェイス”。

現在のところシリーズ最新作となる『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』(17)は、そのレザーフェイスの幼少期から青年期を描いたもので、第1作を監督したホラー映画界のカリスマことトビー・フーパーが製作総指揮に名を連ねたことでもホラー・ファンの話題を集めました。

殺人鬼一家の中で生を受けたジェドは、5歳の誕生日プレゼントで何とチェーンソーをもらいます。

その直後に少女の変死事件が発生し、ジェドは厚生施設に収監。

そして10年後、その施設内で暴動が発生し、ジェドは施設の患者3人とともに逃亡しますが、かつて娘を殺された保安官が彼らを執拗に追跡していきます……。

監督は『屋敷女』(07)『リヴィッド』(11)などで注目を集めたジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロですが、ここではシリーズ第1作に倣ったショットを提示するなどのオマージュを捧げつつ、自分たちなりの“レザーフェイス”の世界を描出するべく腐心。

また、悪夢のロードムービーといったテイストの中から、観る者をあっと言わせる展開で、いったい誰が希代の殺人鬼を生み出したのかという謎に迫っていきます。

ちなみに『悪魔のいけにえ』は2003年に『テキサス・チェーンソー』としてリメイクされていますが、その前日譚としての『テキサス・チェーンソー ビギニング』(06)も製作されています。本作と見比べてみるのも一興でしょう。

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貞子の哀しき青春とそれゆえの恐怖
『リング0 バースデイ』


リング0-バースデイー



次は日本を代表し、今や世界的にも君臨する『リング』シリーズの最恐ホラー・ヒロイン貞子の誕生秘話を描いた『リング0 バースデイ』(00)です。

舞台となるのは、あの呪いのビデオテープ事件から遡ること30年前の1968年の劇団「飛翔」。

そこに18歳の山村貞子(仲間由紀恵)が入団してきたことを機に、劇団内で次々と恐ろしい出来事が勃発していきます。

一方、かつて山村志津子の公開実験で婚約者を亡くした新聞記者の彰子(田中好子)は、志津子の娘・貞子の過去を探っていくうちに「もう一人の貞子」の存在に気づかされていきます……。

ここではまだ“人間”であり、本来なら青春を謳歌すべき時期にいた若き日の貞子が、超能力を持っていたがゆえに、いや、むしろそのことに過剰反応していく人々の狂気によって悲劇へ追いやられ、やがてはとりかえしのつかない怨念が呼び起こされていく恐怖を描いています。

本作は前2作とは大きく異なり、究極の悲劇が究極の恐怖と直結していくむごさに焦点を当てることで異彩を放つとともに、今となってはこれが映画初主演となった仲間由紀恵の妖艶かつ初々しい美とともに、未来の大器を予見させた秀逸な存在としても屹立。

監督は“Jホラー”と呼ばれて久しい日本のホラー映画ジャンルの基礎を築き上げた先駆者で、後の中田秀夫や黒沢清、清水崇らにも大きな影響を与えた“キング・オブ・Jホラー”鶴田法男。

そもそも彼が1990年代初頭に撮ったOV『ほんとにあった怖い話』シリーズなどがなければ『リング』の成功もありえなかったわけで、そうしたリスペクトを受けての本家の登板は、最凶のホラークイーンが青春の哀しみの中から生まれてきたという過酷な事実を見事に訴え得てくれたのでした。

個人的には『リング』正編2作よりも、この前日譚のほうがホラー「映画」として優れていると確信しています。

“赤い彗星”シャアの誕生秘話
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』


機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア・セイラ編 I 青い瞳のキャスバル



アニメーションの世界からは、今なお続く壮大なSFサーガ『機動戦士ガンダム』の記念すべき第1作(79)、俗に“ファースト・ガンダム”とも呼ばれるエピソードの前日譚ともいえる『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』全6部(15~18)を。

ここでは第1作に登場したジオン公国軍の“赤い彗星”ことシャア・アズナブルがいかにして誕生したかを基軸にしながら、第1作の背景ともなる宇宙世紀(U.C.)0079の一年戦争勃発、そしてファーストガンダム第1話へ直結する壮大なる復讐と野心のドラマが展開されていきます。

U.C.0068、スペースコロニー群サイド3内で地球連邦からの独立運動が広がっていく中、その象徴たるジオン・ズム・ダイクンが急死。

ダイクンの遺児キャスバルとアルティシアの幼い兄妹は最愛の母アストライアとも引き離されて地球へ逃れ、資産家マス一族の養子としてエドワウ、セイラとそれぞれ名を変えて育てられます。

やがて成長したエドワウは同世代の青年シャア・アズナブルと出会うのですが……。

キャスバルからエドワウ、そしてシャアと名を変えながらザビ家への復讐を誓う男の壮絶な青春記であり、同時に一年戦争はなぜ起きたのかを詳細に描きこみつつ、やがてはアムロ・レイをはじめ“ファースト・ガンダム”のキャラクターも続々登場していくあたりが絶妙。

設定が若干“ファースト・ガンダム”と異なるのではないか? といったマニアの指摘もありますが、それはシリーズ開始からおよそ40年の時を経ての、ガンダムの生みの親である富野由悠季とファーストのキャラクターデザイン&作画監督を務め、本作では総監督を務めた安彦良和とのガンダム・ワールドに関する解釈の相違と捉えていくと、逆に面白さも倍増してくるでしょう。

実は『エイリアン』の前日譚
『プロメテウス』


プロメテウス (字幕版)



宇宙での悲鳴が誰にも届かない恐怖を描いた大ヒットSF『エイリアン』シリーズ(79)も前日譚が存在します。

シリーズ第1作を監督したリドリー・スコット監督が久々にエイリアン・ワールドに参画した『プロメテウス』(12)。

西暦2089年、種の起源とその答えを示唆した古代遺跡の星図が発見されたことにより、人類は宇宙船プロメテウスを未知の惑星LV-223へ向けて発進させます。

やがてクルーはLV-223に到着。しかし、そこで彼らを待ち受けていたものは……!

もともとこの作品はエイリアンの起源を探る企画として出発し、途中でリブートとも伝えられたり、一時は前日譚として発表されつつもすぐにそれが訂正されたりと、蓋を開けてみないと全貌がわからないものとして映画ファンはやきもきしていたのですが、いざ公開された『プロメテウス』は紛れもない『エイリアン』の前日譚そのものでした。

そして本作が残した幾つかの謎を解き明かす続編『エイリアン:コヴェナント』(17)が同じくリドリー・スコット監督によって発表され、シリーズ第1作へ着実に接近していったのでした。

『エイリアン』シリーズはジェームズ・キャメロン監督による『エイリアン2』以降、作り手の意向に沿った自由な展開が示されていますが、その中でリドリー・スコット監督は哲学的でアーティスティックなSF映画を追求すべくシリーズに再び着手するも、それを完全なるエピソード0にすべきか否かで迷い迷った果ての『プロメテウス』であるようにも思え、そこがファンの間で賛否を呼ぶことにもなりましたが、逆にその迷いを隠すことなく描出していること自体、リドリー・スコットの映画作家としての真摯な姿勢の顕れともいえるかもしれません。

個人的には『エイリアン:コヴェナント』と『エイリアン』を完全に繋ぐもう1本が作られてもいいのになとも思っています。

これぞエピソード0映画の原点!?
『新・明日に向って撃て!』


新・明日に向って撃て! [DVD]



最後に、映画史上に残る名作『明日に向って撃て!』(69)の主人公で19世紀末から20世紀初頭のアメリカ西部に実在した伝説の銀行強盗ブッチ・キャシディ&サンダンス・キッド、その若き日を描いた『新・明日に向って撃て!』(79)をご紹介。

邦題が『新』となっているので紛らわしいところもありますが、原題“BUTCH AND SUNDANCE:THE EARLY DAYS”からも察しがつくように、これはれっきとした前日譚。

何せ『明日に向って撃て!』の続編を作ろうとしても、それはゴースト・ストーリーにしか成り得ないので、ならば彼らの若かりし日を描いてみようというのが企画の発端だったのかもしれません。

ここではポール・ニューマンが演じたブッチをトム・ベレンジャーが、ロバート・レッドフォードが演じたサンダンスをウィリアム・カットがそれぞれ演じていますが、どことなく風貌が似たキャスティングなのも作品世界に入り込みやすい要因となっています。

ストーリーとしては、刑務所を出獄したばかりのブッチがカジノでサンダンスと出会って、やがて意気投合。カジノの大金を強奪したかと思えばジフテリア血清の運搬といった善行もやってみたり、強盗団と決斗したり、ついには列車強盗をしでかすという冒険エピソードの数々の中から、彼らの青春像をさわやかに抽出していくというもの。

何せ監督が『ビートルズがやって来る/ヤァ!ヤァ!ヤァ!』(63)などのビートルズ映画や『ナック』(65)『ジャガーノート』(74)『ロビンとマリアン』(76)などイギリス映画界の鬼才として知られる一方、『三銃士』(73)『四銃士』(74)、『スーパーマンⅡ 冒険篇』(81)『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(83)とシリーズ映画の演出にも定評のあるリチャード・レスターなだけに、美しい映像の中にどこか変わった仕掛けを多分に含ませながら、やがては悲劇を迎えることがわかっている二人の青春にエールを送り得ています。

ちなみに本作における“前日譚”といった内容は当時としては新鮮で、後々の“エピソード0”作品を世に送り出す大きなきっかけになった感もあるのでした。

(文:増當竜也)

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