『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』女性にこそ観て欲しい「3つ」の見どころ!



© 2018 Bona Entertainment Company Limited



香港映画界の二大スター、チョウ・ユンファとアーロン・クォックの競演による犯罪アクション映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』が、ついに日本でも2月7日から劇場公開された。

2018年の東京国際映画祭で上映された際には、その前評判の高さから早い段階でチケットが完売してしまったこともあり、残念ながら鑑賞の機会を逃したファンも多かった本作。

その予想もつかないストーリーの面白さから、日本での早い公開を望む声も高かっただけに、個人的にもかなりの期待を胸に鑑賞に臨んだのだが、果たしてその内容と出来は、いったいどのようなものだったのか?

ストーリー




タイの刑務所から香港警察に身柄を引き渡された男、レイ・マン(アーロン・クォック)。
国際的偽札製造集団のメンバーである彼は、数々の容疑で取調べを受けることになるが、そこにレイの友人を名乗る高名な女流画家、ユン・マン(チャン・ジンチュー)が現れ、彼の保釈を要求する。
香港警察のホー副署長(アレックス・フォン)は、偽札製造集団のリーダーで現在も行方不明の"画家"(チョウ・ユンファ)の情報を要求する。
"画家"に最愛の恋人を殺され、復讐に燃えるホー警部補(キャサリン・チャウ)の前で、レイは自分の過去について語り始める。冷酷無比な"画家"の報復に怯えながら…。




予告編




見どころ1:二転三転するストーリーが凄い!



画家として高い技術を持ちながらも、アーティストとしての独創性や個性に欠けるため、画商や世間からは評価されずにいたレイ。彼は生活の手段として、有名絵画の贋作制作に手を染めてしまう。既にアーティストとして画商に認められていた恋人ユンとの溝が深まる中、レイの前に謎の男"画家"が現れ、彼を偽札製造の世界へと誘うのだが…。

犯罪者として親子三代にわたって偽札製造を行ってきた"画家"は、その哲学にも似た言葉の数々で周囲の人間を魅了する、カリスマ的人物として登場する。



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才能を持ちながら正当に評価されないレイの心を見抜くかのように、"画家"は巧みな言葉で彼を次第に犯罪の世界に引き込んでいくのだが、同時に"画家"のもう一つの顔である冷酷非情な犯罪者の側面が明らかになっていくことで、ついに"画家"とレイは対決の時を迎えることになっていく。

こうした前半での偽札作りを巡る犯罪サスペンスから一転して、後半では昔のジョン・ウー監督作品を思わせる派手なアクションが展開するうえに、ラストに向かって観客の予想を覆す展開が連続するなど、確かに前評判通りの面白さなのは間違いない。

これから鑑賞される方のために詳しく書くことは避けるが、鑑賞後に「やられた!」、そう思わせるだけの展開が待っている、とだけ言っておこう。

こうした見事な脚本以外にも、香港二大スターの競演や、後述するチョウ・ユンファの完全復活! など、文字通り見どころ満載な本作。



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こう書くと、まるで男性向けのアクション映画のように思えてしまうが、実はこの映画の根底にあるのは、なりたい自分になれなかった男の悲しいラブストーリーに他ならない。

そう、偽札製造集団を巡る犯罪アクション映画の形を取りながら、魅力的な女性キャラクターたちが重要な役として登場する点も、本作の大きな魅力の一つなのだ。

特に印象的だったのが、外見や言動も男性警官のような、ホー警部補の存在だった。

女性としての幸せや笑顔を捨ててまで、執拗に"画家"たち偽札製造集団の行方を追うその理由が、彼女の意外な過去の姿と共に描かれることで、観客が彼女に一気に共感できることになる展開は見事!

なぜなら、過去と現在における彼女の外見の大きな変貌により、事件に対する強い執念や犯人に対する憎しみが、セリフに頼ることなく観客に伝わることになるからだ。

彼女以外にも、レイに命を助けられたことで彼を愛するようになる、偽札製造の専門家シウチンの愛憎入り混じった行動や、レイの保釈を求めて警察署に現れる、昔の恋人ユンの存在など、犯罪映画やアクション映画の枠を超えて、女性が観て共感・感情移入できる要素が盛り込まれている点も、本作が多くの観客の高い評価を得ている理由と言えるだろう。

レイへの取り調べの中で、彼の目から見た事実が語られていく構成を逆手に取った脚本が素晴らしいだけに、できればネット上にネタバレ情報が拡散する前に、劇場に駆けつけて頂きたい本作。

普段あまりアクション映画を観ない女性の方にこそ、ぜひ観て頂きたい作品なので、全力でオススメします!

見どころ2:全盛期のチョウ・ユンファが帰ってきた!



その予想がつかないストーリー展開も話題だが、何といっても本作の見どころは、海外作品への出演や年齢に合った役柄が多くなることで、ここ最近はアクションから遠ざかっていた印象の強いチョウ・ユンファが、久々に80年代末~90年代初頭の全盛期を思わせるアクションや、ガンプレイを披露してくれる点!



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映画の中盤に登場する、紙幣の印刷に使われる特殊インクの強奪シーンで見せる銃撃戦でも、往年の二挺拳銃によるガンプレイを見せてくれるのだが、ファンにとって何よりの贈り物なのは、やはり映画の後半に登場する、"画家"の父親の敵である黄金の三角地帯を牛耳る将軍への復讐に向かうシーンだろう。

なぜか白いスーツに身を包んだチョウ・ユンファが、自身も血に染まりながらガンガン撃ちまくる姿は、ジャングルを舞台にした銃撃戦ということもあって、チョウ・ユンファ主演の『狼/男たちの挽歌・最終章』や、ジョン・ウー監督作『ワイルド・ブリット』を思い起こさせるものとなっていて必見!

最近のチョウ・ユンファの役柄や年齢的な問題から、もはやあの二挺拳銃のユンファ撃ちは見られないのか? そう思っていたファンの期待に応えるかのような、その雄姿には、「ああ、俺たちの見たかった、あのチョウ・ユンファが帰ってきた!」、多くのファンが、そう思わずにはいられないはず。

しかも二挺拳銃どころか、更にパワーアップした自動小銃の二挺撃ちまで披露するサービスぶりには、もはや『男たちの挽歌』に燃えた世代なら無条件で劇場に駆けつけるべき! そう断言するしかない、この『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』。

もちろん彼の全盛期を知らない世代にも、そのカッコよさを存分に楽しんで頂ける内容に仕上がっているので、ぜひ劇場でご確認を!

見どころ3:偽札作りのプロセスが面白い!



画家として優れた技術を持ちながら、個性的な作品が作れないため世間に評価されない、主人公のレイ。恋人のユンが先に画商に見出されて有名になっていくことへの焦りや嫉妬が、彼を次第に贋作作りの世界へと引き込むことになる。

ミステリアスな男"画家"の誘いにより、国際的な偽札製造集団にリクルートされた彼は、その優れた模倣技術によって別世界で評価を得るのだが、"画家"の巧みな心理操作により、レイは次第に偽作製造という犯罪行為に深く関わっていくことになる。

激しいアクションが展開する映画の後半までは、こうした偽札作りのプロセスや必要な物資を入手するための計画実行が描かれるのだが、実はこの部分が非常に面白いのだ。



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特に映画の冒頭に登場する、レイが刑務所の監房内で手に入る物だけを使って、"ある物"を見事に偽造する描写は、この男の模倣技術の高さを、言葉でなくビジュアルで観客に納得させてくれて実に見事!

更に、本物の紙幣印刷に使用される特殊インク強奪のサスペンスや、紙幣印刷に使う用紙の意外すぎる入手方法など、計画実行への障害を一つずつクリアしていく過程は、先の展開への期待を観客に抱かせるので、ラストまで観客の興味が途切れることがない。

加えて、偽札製造集団のメンバーそれぞれの役割分担や、失敗を犯した者への容赦ない制裁など、この集団の絆や信頼関係が描かれている点も、このメンバーを束ねる"画家"というカリスマ的な悪役の魅力を、より深いものにしてくれているのだ。

偽札製造のために本物の紙幣を分析し細部まで研究する彼らの姿は、単なる犯罪を超えた"芸術家"としてのこだわりすら感じさせるものなので、お見逃し無く!

最後に



香港のアカデミー賞では実に7部門を受賞し、すでに韓国でのリメイクも決定しているなど、国際的にも高い評価を得ている、この『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』。



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観客の予想を超えて二転三転するストーリーや、悲しい運命に翻弄される男女のラブストーリーも魅力だが、個人的には偽札作りに必要な物資の確保や、計画の進行に立ちはだかる障害をどうやって攻略するか? この部分が実に面白かった。

例えば、紙幣の印刷に使用される特殊インクはさすがに調合では作れないため、輸送途中のインクを強奪するための銃撃戦が用意されていたり、インクと並んで重要な紙幣印刷用紙が、実に意外な場所から入手できるという展開。更には肝心の印刷機の入手から、試し刷りや試行錯誤を経ての偽札完成など、犯罪者でありながら一種の芸術家気質を感じさせるこだわりが、そこに描かれていたからだ。

更に、二人の男の奇妙な関係を描く第一級の犯罪アクション映画でありながら、同時に、生まれた環境により自身の望む将来を得られなかった男の悲しい恋愛が描かれる点も、実に素晴らしいと感じた本作。

ただ、映画の後半で非常に重要な要素となるシウチンのレイに対する愛情が、本当に彼を愛していたのか、それとも命の恩人に対する感謝の気持ちの延長なのか? その点は観る人によって解釈が分かれるかもしれない。

とはいえ、チョウ・ユンファが全盛期のようなアクションを披露してくれる! という、ファンにとっての最高のプレゼントの前には、もはや何も言うことはない! そう思えてしまうのも事実なのだ。

ラストに向かって二転三転のどんでん返しが用意されているだけに、鑑賞後にもう一度最初から見返して、細部に仕掛けられた伏線を確認したくなる作品なので、ネタバレや事前情報を避けて、まずは劇場で鑑賞するのが、オススメです!

(文:滝口アキラ)

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