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『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ 撃進」レビュー:富野由悠季監督ならではの絶妙の構成で成された見事なる“映画”!
『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ 撃進」レビュー:富野由悠季監督ならではの絶妙の構成で成された見事なる“映画”!
TVシリーズ6~11話を基に
怒涛の展開を示す第2作
(C)創通・サンライズ
5部作劇場版第1作『Gのレコンギスタ Ⅰ』「行け!コア・ファイター」はTVシリーズの第1~5話を基に再構築されています。
G-セルフは海賊部隊に捕獲され、ラライヤはキャピタル側に保護されましたが、やがてキャピタルはG-セルフ奪還にも成功。その中に乗っていた“姫”ことアイーダ(声/嶋村侑)が捕虜になります。
G-セルフは誰にでも操縦できるわけではなく、ラライヤとアイーダしか認証しないと思われていましたが、何とベルリも認証することが発覚。
まもなくして海賊部隊はアイーダ救出に乗り出しますが、失敗。その際に恋人カーヒルをベルリに殺されてしまったアイーダは忸怩たる想いを抱きつつ、やがてG-セルフを奪還してベルリやラライヤ、ノレド(声/寿美菜子)を伴って部隊へ帰還するのでした……。
そして第2部『GのレコンギスタⅡ ベルリ撃進』ではTVシリーズ第6~11話を基に再構築されています。
人質のラライヤとノレドを守るため、またカーヒルを殺した負い目もあって、海賊部隊に協力することになったベルリのさらなる試練。
そんなベルリらを救出するという口実で、スコード教の禁忌を破ってどんどん武装化していくキャピタル・アーミィ。
下層階級として差別される“クンタラ”出身でキャピタル・アーミィの“マスク”ことルイン・リー(声/佐藤拓也)の戦果への焦り。
実はアメリア軍最高責任者グシオン・スルガン(声/木下浩之)の娘だったアイーダの心境の微妙な変化。
様々な思惑が絡み合いながらドラマは序盤戦から怒涛のような展開を示し、飽きさせるところは微塵もありません。
TVの総集編の域に留まらない
“映画”としての秀逸な構成
実はこの劇場版5部作、それぞれが1時間40分=100分前後の上映時間で構成される予定で、現に本作まではそのフォーマットがなされています。
一方、元のTVシリーズは全26話で、タイトル部分などを外した各話の本編はおよそ20分前後。
つまり20分×26話÷5=104分
単純計算すると、1本100分の劇場版にTVシリーズ5話分が少しのカットで入りきる仕様ではあります(もちろん実際は、もっと複雑かつ繊細な編集をもって劇場版は構築されています)。
とかく総集編映画の宿命で、TVシリーズのファンから「あのシーンがない」「あのシーンがカットされている」といった不満の声が聞こえがちですが、この5部作の場合、その心配はさほどありません。
しかし、ならば改めて映画にする必要はないのでは? という一部の声に対しても、はっきり「NO!」と答えられるのが、この5部作の秀逸なところです。
通常のTVシリーズの各話はそれぞれ起承転結、もしくは序破急の構成がなされているもので、これをそのまま単純に繋ぎ合わせてしまうと、1本の映画の中に起承転結が幾度も繰り返されるという、意外に見づらいものになってしまうのです。
(それは『宇宙戦艦ヤマト2199』『同2202』の劇場イベント上映版などを見ても明らかでしょう)。
逆にTVシリーズを大幅にカットして映画独自の起承転結を成した作品のほうが(TVファンの不満はともかくとして)映画としてはむしろ見やすかったりもして、その伝でいうと富野監督の劇場版ガンダム・シリーズこそはまさにその筆頭であると断言できます。
たとえば『機動戦士ガンダム』劇場版3部作はそれぞれ2時間15分前後の尺が採られていました。
その続編『機動戦士Zガンダム』(85~86/全50話)の劇場版3部作(05~06)の尺はそれぞれ100分弱。
『∀ガンダム』(99~00/全50話)の劇場版は各128分の2部作(共に02)仕様でしたが、いずれも映画ならではの構成の醍醐味を堪能できます。
そして今回の『Gのレコンギスタ』も1、2作を見る限りにおいては絶妙の編集で1本の“映画”としての大きな起承転結(もしくは序破急)の妙を堪能できる構成になっているのに驚きを隠せません。
これはやはり若き日に「コンテ1000本斬り」を自称しながらさまざまなTVアニメの絵コンテに携わってきた富野監督ならではの秀逸な映画的構成力の賜物ともいえるでしょう。
今回も完成披露試写会の席で富野監督は「“映画”を作りました」と公言。
つまりはTVシリーズを繋ぎ合わせた安易なものではない、“映画”ならではの醍醐味に満ちた5部作が構築され得ているのです。
一方、作画や音響などもTVシリーズの段階で秀逸な仕上がりではありましたが、劇場版制作に際してさらにブラッシュアップされているので、既にTVシリーズを見ている方々も改めて本作ならではの魅力に引き付けられることでしょう。
本来は「2週間限定上映」などとけち臭いことを言わず、堂々と大掛かりな規模の形態でもよいのではないかと訴えたいほどのクオリティの高さです。
劇場での鑑賞が可能な環境にある方はぜひ映画館で、惜しくもその環境にない方もぜひ配信でご覧になってみてください!
(文:増當竜也)
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