『PMC:ザ・バンカー』地下施設から脱出せよ!手に汗握る「3つ」の見どころ!



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2014年に日本でも公開され、高い評価を得た韓国の傑作サスペンス映画『テロ,ライブ』。

その監督・脚本を務めたキム・ビョンウと、主演のハ・ジョンウが再びタッグを組んだ話題の新作映画『PMC:ザ・バンカー』が、2月28日から日本でも公開された。

前作が、ラジオ局という限定された空間を舞台に爆弾テロ事件がリアルタイムで進行するという、全編緊張感あふれる内容だっただけに、今回もかなりの期待を胸に鑑賞に臨んだ本作。

予告編やポスターからは、特殊部隊を主人公としたアクション映画のように思えるのだが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものだったのか?

ストーリー


韓国特殊部隊の元兵士で、今は民間軍事会社(=PMC)の傭兵として作戦成功率100%を誇る隊長エイハブ(ハ・ジョンウ)は、依頼主であるCIAの密かな策謀、仲間の裏切り、国家間の政治的な駆け引きによって孤立し、バンカー内で絶体絶命の窮地に陥る。度重なる想定外の誤算に見舞われて状況は混乱し、ついにはアメリカ、北朝鮮、韓国、中国の陰謀が究極の死闘へと発展していく―。エイハブは自分を信じる部下たち、そして愛する妻のもとへ帰るため、本来は敵同士である北朝鮮のエリート医師(イ・ソンギュン)と手を組み無謀ともいえる作戦に打って出る。果たして、彼は仲間と共に生きてこの巨大バンカーから脱出することができるのか。いま、究極のサバイバルが始まる!


予告編




見どころ1:傑作『テロ,ライブ』の名コンビが再び!



低予算映画だから舞台をラジオ局に限定し、更にリアルタイムで事件が起こる設定にしたのか? 観客にそう思わせておいて、実はラストに予想外の派手な見せ場が待っていた、傑作サスペンス映画『テロ,ライブ』。

散りばめられた伏線や意外な犯人像、更に政府の陰謀によって犠牲になる一般市民の存在など、単なるサスペンス映画を超えたその奥深い内容に、多くの映画ファンが注目したのも記憶に新しいところだ。

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その見事な脚本と演出は、地下30メートルに作られた施設の中が全編の舞台となったり、観客の予想を超えて二転三転するストーリーなど、今回の『PMC:ザ・バンカー』にも引き継がれている。

2024年の近未来を舞台に、韓国と北朝鮮の軍事境界線の地下30メートルに作られた巨大な地下施設=バンカーから、アメリカへの亡命を希望している北朝鮮の要人を確保して、安全な場所まで護送するという極秘ミッションを与えられた、エイハブをリーダーとする民間軍事会社=PMCの傭兵チーム「ラプター16」。

事前の綿密な計画により、10分で決着すると思われたこの作戦が、アメリカ大統領選の駆け引きや中国の介入、更に仲間の裏切りや予期せぬ状況の発覚など、様々なトラブルやアクシデントに見舞われたことで、一気に壮絶な銃撃戦と脱出サバイバルへと突入していく展開は見事!



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もちろん、この他にも様々な陰謀や駆け引きが主人公たちの行く手を阻むことになるのだが、これだけ多くの要素を混乱させることなく観客に把握させるのは、やはりキム・ビョンウ監督の脚本と演出があればこそ。

ただ一つだけ残念なのは、このキム・ビョンウ監督が非常に寡作であることだろう。

実際、本作が『テロ,ライブ』以来5年ぶりの新作となるだけに、彼の次回作がいつ観られるのか? 今から期待せずにいられないのも事実。

果たして、『テロ,ライブ』のラストに匹敵する派手なスペクタクルシーンや、観客の予想を超える衝撃の展開が待っているのか? 壮絶なサバイバルの果てに待つ結末は、ぜひ劇場で!

見どころ2:今話題の、あの俳優も出演!



アメリカ政府の陰謀や中国の介入により、地下30メートルに建設された地下施設=バンカー内で壮絶な銃撃戦を繰り広げることになる、「ラプター16」の傭兵たち。

要人を確保しつつ地上への脱出を図るという困難な状況の中、北朝鮮要人に同行してきたエリート医師のユンは、激しい銃撃戦で重症を負った要人の命を救い、生きてここから出るための協力を、チームリーダーのエイハブから要請されることになる。

韓国と北朝鮮という、対立する国家間の垣根を超えて、医師としての使命感からエイハブに協力することになるユンは、ストーリーが進むにつれて存在感を増す重要なキャラクターなのだが、彼の顔を見て、「あれ、どこかで見たことが?」、そう思われた方も多かったのではないだろうか。

それもそのはず、実はこのユンを演じるイ・ソンギュンこそ、今年のアカデミー作品賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』で、裕福な家族の父親役で見事な演技を見せていた俳優なのだ。



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おそらく韓国ドラマのファンの方なら、日本でも放送された人気ドラマ『コーヒープリンス1号店』での彼の演技を覚えている方も多いのではないだろうか。

本作では“北朝鮮要人の命と、地下施設からの脱出”という共通の目的により、本来は敵対するエイハブと次第に男同士の友情で結ばれていくという、『パラサイト』とは全く違う役柄を見事に演じている。

主役として見せ場をさらうハ・ジョンウも、もちろんカッコ良いのだが、一般人ながら戦闘中も予想外の大活躍をする上に、最後に男気あふれる行動を見せるユン医師こそ、まさに本作の影の主役と呼べる存在!

『パラサイト 半地下の家族』で彼の演技に注目された方は、ぜひ劇場に足を運んで頂ければと思う。

見どころ3:大銃撃戦からのサバイバル展開が凄い!



主人公のエイハブが率いる、民間軍事企業=PMCの傭兵チーム「ラプター16」が、CIAソウル支局から委託された極秘任務。それは、亡命を希望する北朝鮮の要人を、安全な場所まで無事に護送すること。

ところが計画実行直前に発覚した、ある予想外の事態に加えて、北朝鮮支配をもくろむ中国に雇われた別のPMCの襲撃により、短時間で完了するはずの任務は、壮絶な銃撃戦とチーム全滅の危機からのサバイバルへと変貌していく。

戦力と人数で圧倒的に上回る敵側の攻撃の中、果たしてエイハブたちは無事に任務を遂行し、生きてこの地下施設から脱出することができるのか?

こう書くと、『エクスペンダブルズ』のように傭兵チームが主人公の派手な戦闘アクションに聞こえるが、実はストーリーの進行と共に、その内容も二転三転していく本作。

圧倒的な敵の火力と人数に、次第に弾薬が尽きてくる「ラプター16」チーム。更に、司令室で指示を出すエイハブも、アメリカ政府の策略によって、北朝鮮要人を無事に救出しなければ自分の身が危ない状況に追い込まれてしまうのだ。

チーム全体の安全か、それとも北朝鮮要人の命か? 次々に襲う危機的状況に対して、苦渋の決断を迫られるエイハブだが…。



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本作の大きな魅力は、やはり迫力満点の大銃撃戦にある。

なぜなら、2024年の近未来を舞台とした作品だけに、単に派手な銃撃戦が展開するだけでなく、登場する様々な近代兵器や装備には、まだ実戦に投入されていない装備も含まれているからだ。

例えばエイハブのチームが偵察用に使っている、遠隔操作で壁や天井までも自由に動き回って映像を送れる、球体の偵察用カメラなど、近い将来に実戦投入されるかもしれない最新装備の登場は、現代の戦闘の実情を観客に教えてくれるものとなっている。

地上への脱出方法を求めて激しい戦闘を繰り広げる「ラプター16」のメンバーにも犠牲者が出る中、映画は最終的に"災害パニックもの"へと変貌していくのだが、こうした序盤から続く怒涛の展開に、観ている側も、もはや誰が生き残るのか心配になってしまうほど。

これから鑑賞される方のために詳しく書くことは避けるが、壮絶な銃撃戦を経て、地下施設からの脱出サバイバルへと向かう展開は、同じハ・ジョンウ主演の『トンネル 闇に鎖された男』や、『タワーリング・インフェルノ』を思わせるものなので、ぜひお見逃し無く!

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最後に



韓国特殊部隊に在籍中、予期せぬ事故において究極の選択を迫られた結果、自身の右足を失うことになった、「ラプター16」チームリーダーのエイハブ。

過去の決断が正しかったのか? 未だに消えない過去のトラウマを抱えながら、綿密な計画に生じたアクシデントが引き起こす最悪の状況を咄嗟の判断と決断力で切り抜ける、エイハブのキャラクターが実に魅力的な、この『PMC:ザ・バンカー』。

緊急時に、チームメンバーの命と任務のどちらを優先させるか? チームを率いるリーダーとして、時に非情な決断を余儀なくされるエイハブだが、再び彼が過去のトラウマとなった事故と同じ状況に直面する展開や、北朝鮮側の医師との間に芽生える連帯感、更には、彼が生きて妻の元に帰らなければならない理由が描かれているなど、国家の思惑に左右される人々の運命に焦点を当てた脚本は、決して観客の期待を裏切らない。

確かに、地下施設=バンカー脱出のサスペンスと、押し寄せる敵との凄まじい銃撃戦が見どころだが、同時にその深い人間ドラマも本作の魅力の一つと言えるだろう。

例えば、本来は敵同士である北朝鮮の医師ユンとエイハブ。この二人の職業に対するプロ意識や、同胞を最後まで見捨てない! という共通の意識による友情の芽生えは、同時に韓国と北朝鮮という、分断された国家の持つ悲願を象徴するものでもある。

激しい戦闘や崩落する地下施設からの脱出サバイバルでありながら、生死の瀬戸際に立たされた人々の行動や選択が、人間の本質を浮き彫りにしていくという深い人間ドラマにも、ぜひご注目頂きたい、この『PMC:ザ・バンカー』。

派手な戦闘アクションと思って、劇場での鑑賞をスルーしようと考えている方や、昨年公開された『マイル22』や『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』に燃えた方にこそ、ぜひ観て頂きたい傑作なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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