映画コラム

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2020年06月27日

『マルモイ ことばあつめ』レビュー:母国の言葉を護るために闘った人々の凱歌

『マルモイ ことばあつめ』レビュー:母国の言葉を護るために闘った人々の凱歌



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『マルモイ ことばあつめ』レビュー:母国の言葉を護るために闘った人々の凱歌

21世紀に入って早20年経ちますが、世界中でもっとも映画的に飛躍した国が韓国であることに異を唱えられる映画ファンは少ないかと思われます。

先ごろ発売されたキネマ旬報の2000年代外国映画ベスト・テン第1位に輝いたのは韓国映画『殺人の追憶』でした。

そして今年、同じポン・ジュノ監督のアカデミー賞受賞作品『パラサイト』が日本でも大ヒットし、現在はモノクロ・ヴァージョンまで公開中です。

こうした韓国映画の勢いは、その他にも現在公開中の思春期映画『はちどり』が高評価を得たり、7月14日公開のマン・ドンソク主演『悪人伝』はすでにハリウッド・リメイクも予定されています。

そんな中、光州事件を題材にした『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)の脚本家オム・ユナの初監督作品『マルモイ ことばあつめ』(19)が、既に作品を見た映画マスコミの間で盛り上がりを見せ始めています。

新潟シネ・ウインドで6月13日より先行公開され、7月10日より東京シネマート新宿、大阪シネマート心斎橋など全国各地で公開予定の本作、その内容は……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街480》

失われていく自国の言葉を護るために“我らの言葉(ウリマル)”の辞書(マルモイ)を作ろうとする人々の凱歌を描いた感動と興奮の歴史ドラマであり、素晴らしき人間讃歌なのでした!

ご禁制の辞書作りに関わる
お調子者の運命やいかに?


『マルモイ ことばあつめ』の舞台は、日本が統治して久しい1940年代初頭の朝鮮・京城(現在のソウル)。

お調子者でガサツ、文字もろくに読めないキム・パンス(ユ・ヘジン)は務めていた映画館をクビになり、息子の授業料を払うために、裕福そうな青年ジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗もうとして見事に失敗します。

ジョンファンは親日派の京城第一中学理事長の息子でしたが、父には秘密で朝鮮語学会に属し、失われていく母国語=朝鮮語(即ち現在の韓国語)を護るために朝鮮語の辞書を作ろうとしていました。

当時の大日本帝国は、朝鮮での言葉を朝鮮語から日本語へスライドさせる政策を採っており、名前すらも日本名に改名させようとしていました。

学校内では既に、日本語しかしゃべってはいけないという教育方針にもなっていたのです。

母国の言葉を失うことは、その民族としての精神まで失いかねないと危惧する朝鮮の人々の中に、ジョンファンもいたのです。

彼は仲間らと共に、密かに辞書作りのための“ことばあつめ”を行っていました。

そして、その仲間の中にパンスの気概を知る“親父さん”ことチョ先生(キム・ホンパ)がいた事から、パンスは辞書作りの手伝いに従事させられる羽目になります(薄給ながらも、一応報酬はもらえます)。

はじめはガチガチなまでに生真面目な自分と正反対のパンスにイライラしっぱなしだったジョンファンでしたが、次第にその心根に触れて心を開くようになり、またパンスもジョンファンらがやっていることの意義こそ全然理解してないものの、彼らにシンパシーを抱きながら共闘していくようになります。

しかし、朝鮮語の存続を認めようとしない統治側の追及は、徐々にジョンファンらにも……。

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