映画コラム

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2020年08月08日

『ハニーボーイ』レビュー:子役とステージパパの確執から窺える人間ドラマ

『ハニーボーイ』レビュー:子役とステージパパの確執から窺える人間ドラマ



ピノキオのような操り人形から
本物の少年に成長していく過程


本作は冒頭に記したように、シャイア・ラブーフ自身のキャリアを基に創作されたストーリーです。

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実際の彼も酒で交通事故を起こし、厚生施設でのリハビリの一環として本作の脚本を記し、それを読んだ友人のアルマ・ハレル監督が映画化を申し出て、その後も両者で脚本アレンジのやりとりなどを重ねがら具現化されていったもの。
(ちなみにタイトルの“ハニーボーイ”とは、シャイア・ラブーフ自身が子役時代に言われていたあだ名とのこと)

本作を煮詰めていく過程でラブーフは、それまで長年音信不通だった実父とも再会しているようです。

アルマ・ハエル監督は本作の主人公オーティスの少年時代を『ピノキオ』に例えて語っています。

つまりは操り人形の少年が、いかにして本物の人間としての少年になっていくのか?

少年時代のオーティスを演じるノア・ジュブは『ワンダー 君は太陽』『フォードVSフェラーリ』などで注目を集めている、本作のオーティスさながらの人気子役です。

恐らくはまだ幼い彼も、この役にはかなり思うところがあって演じたに相違ないでしょう。

また実父をモデルにしたジェームズを自ら演じることになったシャイア・ラブーフも、自身も大人になったことで初めて見えてくる父の内面的苦悩なども肌で理解しつつ演じられていったようです。

こうした父と子の関係性をアルマ・ハレル監督は、特に少年時代は労働者階級のコミュニティでもあるサンバレーのピンク・モーテルを主舞台に据えつつ、独創的に演出していきます。

正直、人気子役がこのようなところに住んでいることに驚きつつ、実はその場が父親の象徴にもなっていて、ではいかに少年はそこから脱出するのか? もひとつのテーマにはなっているでしょう。

またハレル監督は撮影監督ナターシャ・ブライエと細かく打ち合わせしながら、心理学的な視覚効果をもたらす映像の色彩の構築にも腐心したとのことで、こうした彼女たちの試みは、実に映画そのものをファンタスティックに照らすことにも大いに貢献しています。

さらにはモーテルの隣人である年上少女の存在によって、子どもから思春期へ突入していこうとする過程の少年の心の揺れをさりげなくも巧みに描いているあたりも、実に「少年の心をわかってらっしゃる!」と唸らされます。

子どもはいつになったら大人になるのか? 実はいつまでも大人になったふりをしている子どもなのではないか? などなど、さまざまなことを思い浮かべながら見入ってしまうヒューマン映画であり、既に世界中の映画祭などで喝采を浴びてきた秀作が、いよいよ日本上陸しました!

(文:増當竜也)

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