映画コラム
『思い、思われ、ふり、ふられ』レビュー:世代を越えて楽しめる青春キラキラ映画の秀作
『思い、思われ、ふり、ふられ』レビュー:世代を越えて楽しめる青春キラキラ映画の秀作
実写版とアニメ映画版、
双方を見比べるのも一興
ありきたりな表現になってしまいますが、何とも可愛らしく、そして切ない映画です。
正直、登場人物たちの親の世代であるこちらが見ても、単なる青春ノスタルジーの域を越えて、彼女たちの恋の行方をいつのまにかスリリングに見守ってしまっている感に気づかされてしまいます。
ある意味王道の青春メロドラマとして、くっついたり離れたり、見栄を張ったり本音を吐いて涙したり、三木監督の演出はいつもながらに繊細かつ達者で4人のキャラクターを余すところなく魅力的に描出してくれています。
その中でも大きなポイントとなるのは浜辺美波扮する朱里の存在で、一見強気で明るいキャラを装いながら、実は一番我慢を強いられ、心の奥底のもろさを見破られないようにしているあたり、おそらくは多くの同世代のシンパシーを得られることでしょう。
実は今回の原作、実写映画とアニメーション映画の両方が作られていて、実写版は8月14日、アニメ版は9月半ばの公開予定となっていますが、双方を見比べると当然ながら実写とアニメの表現方法の違いによって、前者はリアルに、後者はファンタジックに映えています。
キャラクターの性格描写も微妙に異なり、それこそ朱里のキャラクターは実写版ではずっとやせ我慢をしている風情なのが、アニメ版だと割と早い段階で心の弱さをさらけ出してしまっているなどの相違が実に興味深いところです。
少女漫画のアニメ化や実写映画化は数多く存在しますが、その多くはTVアニメ・シリーズと劇場用実写映画といった構図のものが大半で、実は劇場用映画という同じフォーマットの上にのっかっての批評がしづらい側面もあったりします。
しかし今回のように、実写とアニメといった表現方法こそ違えつつも、どちらも同じ“映画”として見比べる愉しさを満喫できるという意味においても、このプロジェクトはかなり成功しているといってもいいでしょう。
ぜひとも、双方ともに鑑賞しつつ、真夏の暑さを吹き飛ばす繊細でみずみずしい恋の心の痛みに反応してみてください。
(文:増當竜也)
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