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2020-12-03

邦画実写

『ミセス・ノイズィ』レビュー:隣人バトルが常識の域を越えてしまったら?

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増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

一戸建てなりマンションなりアパートなり、家屋にお住まいの方ならば必然的に隣人という存在を無視できなくなっていくものですが、その隣人がなかなかのツワモノで一癖も二癖もあった場合、当然のようにそこから問題が発生していくものです。

お隣の騒音がひどい、ゴミ屋敷みたい、子どもにDVやってんじゃないか? などなどワイドショーなどでもこういった隣人トラブルの問題はしょっちゅう扱われていますね。

一方ではSNSの時代、隣人の非を配信で訴えていくことで、問題が一気に解決することもあれば余計にトラブることもあれば……と、なかなか難しいものです。

今回ご紹介する『ミセス・ノイズィ』も、まさに隣人トラブルを扱った作品です。

小さな口論から始まった双方の女たちの対立が、やがて大きなうねりとなって彼女たちの運命を狂わせていきます。

見ていて他人事とは思えない問題作、まずはその内容をチェックしていきましょう!

お隣さん同士の諍いが
やがて社会を騒がす大事件に!



『ミセス・ノイズィ』は、都心から郊外のマンションに引っ越してきた家族の妻であり、小さな女の子の母親であり、目下スランプ中の小説家でもある吉岡真紀(篠原ゆき子)と、お隣りの主婦・若田美和子(大高洋子)の諍いを描いたものです。

この美和子さん、朝夕関わらずにけたたましい音を立てながら布団を叩いています。

ただでさえ小説が上手く描けずに苦しんでいた真紀さんのストレスは、当然のごとく増大!

やんわりクレームをつけてものれんに腕押しのパワフル主婦・美和子さんに、真紀さんはもう辟易。



さらには真紀さんの愛娘が妙に美和子さんになついてしまい、そこからまたトラブルの火種が……!

夫は双方の諍いに無関心で、夫婦の絆もギクシャクしはじめ、すっかり滅入ってしまった真紀さんですが、このトラブルを小説のネタにしようと思いつき、それを発表していきます。

しかし、その小説が話題になっていったことから、いつしか問題はマスコミを賑わせ、SNSを炎上させていくようになり、いつしか社会を騒がせる大事件に発展してしまうのでした……!?

日常の中に潜む闇も光も
露にしていくヒューマン映画



とても他人事とは思えない、身につまされる作品です。

誰しも一度や二度はお隣やご近所の騒音や態度などにイラッときたことがあるのではないでしょうか。

しかし、なかなか言葉のやりとりだけでは門が大が解決しないのは世の常。

また現在はそういった問題を面白おかしく採り上げるマスコミやSNSといった、当事者にとっては敵なのか味方なのかも定かではない魑魅魍魎的な存在が社会を支配しかねない勢いです。



本作はそういった日常の中で、人と人とのコミュニケーションの難しさをモチーフにしながら、最後はいかなるところへ着地していくのか? といったスリリングな興味を最後まで持続させたヒューマン・バトル映画の快作に仕上がっています。

真紀役には『共喰い』(13)『深夜食堂』(15)『罪の声』(20)などの実力派で、現在「相棒season19」の新レギュラー、出雲麗音役でお茶の間でも大注目されている篠原ゆき子。今回は一見巻き込まれ型ながらも、いつのまにか事態を悪化させていく“普通”の女性を自然体で演じています。

美和子には寺十吾主宰の劇団tsumazuki no ishiに所属の大高洋子。映画出演に『スキマスキ』(15)『レミングスの夏』(16)『どうしようもない恋の唄』(18)などがありますが、本作から発散される強烈な個性も伴って、本作が彼女の映画の代表作になることは間違いなし!

この二人の名女優の壮絶バトルだけでも本作を鑑賞する価値は大いにありますが、同時に作品内の奥深いテーマにも心動かされて一こと必至!



監督は会社勤めを経て映画監督の道へ転身し、PFFなど数々の国内外の映画祭への入選を果たした天野千尋。

本作は東京国際映画祭2019日本映画スプラッシュ部門に選出されるとともに、第59回アジア太平洋映画祭主演女優賞、ジャパンカッツ観客賞を受賞し、彼女のキャリアをさらに大きくステップアップさせることになりました。

特に“観客賞”を受賞しているところなど、やはり本作を見る方たちがそれぞれ本作を他人事ではないものとして注目していることの証左でもあるように思われます。

日常の中に潜む闇も光も露にしつつ、最後まで見終えた後も涙とともにあれこれ考えさせられてしまう作品であり、日日を生きる(要するにすべての)人間に一見をお勧めしたい人間ドラマの快作です!!

 (文:増當竜也)

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