「シャーロック・ホームズ」の魅力|“2人のホームズ”から解きほぐす
シャーロック・ホームズシリーズの記念すべき一冊目「緋色の研究」に出てくる、あまりにも有名なセリフ。
今回は、ホームズのような探偵のボズウェルになりたいと願い続ける筆者が、現代のシャーロック・ホームズ映像作品から
■ロバート・ダウニーJr.主演『シャーロックホームズ』『シャーロックホームズ シャドウゲーム』
■ベネディクト・カンバーバッチ主演ドラマ「SHERLOCK」シリーズ
以上の2つをピックアップして原作の魅力にも触れつつ、筆者個人の見方でホームズ像を比較しながら解説します。
この記事では俳優の名前を使用していますが、キャラの魅力は俳優のみで作られるわけではない前提で、21世紀の今も私たちを魅了し続けている「偉大な探偵」の魅力を様々な面で感じ取ってみてください。
ロバート・ダウニーJr.が確立した「新しいシャーロック・ホームズ」
ロバート・ダウニーJr.が魅せる「お茶目なホームズ」
ロバート・ダウニーJr.のホームズは、簡単に表すなら「お茶目」。
原作でもホームズは度々完成度の高い変装でワトソンを驚かせていましたが、ロバートのホームズはさらに上をいきます。
占い師を巻き込んでワトソンをおちょくったり、「首吊りの死刑を生きて逃れる方法の実験だ」なんて言いながら部屋で実際に首を吊ってワトソンを出迎えてみたり。
世の中のホームズのイメージとは異なる‘‘お茶目っぷり”を作品の随所で魅せてくれます。
ロバート・ダウニーJr.が打ち出した「チャラいホームズ」
一般的なホームズのイメージを軽々と超えてくるロバートのホームズの魅力といえば「チャラさ」。原作のホームズは変装時を除き、当時の英国風な整った身だしなみをしていることがほとんどです。
一方でロバート演じるホームズはどちらかというと全体的にラフな装いで、清潔感があまり感じられません。
また個人的にびっくりしたのが、アイリーン・アドラーにキスするシーンです。軽いキスやがっつりのキスも・・・
「あれ、ホームズってこんなにチャラかったかな?」と思わず少し考え込んでしまいました。
原作の冷静で緻密なホームズにとって、恋愛感情は邪魔以外のなにものでもありません。
そんなホームズでもたった一度だけ感情をかきたてられた、「あの女性(ひと)」と尊敬する女性が‘‘アイリーン・アドラー’’なのです。
ホームズにとってのアドラーは、一般的な恋愛感情という言葉で表すのではない、別の次元にいる存在なのだろうと勝手に考えています。
ホームズにとってのアドラーを「別次元の存在」とイメージしていた私には、ロバートのホームズがアドラーに恋愛にも思える感情を見せていたのには驚きました。
やはりロバート版ホームズはチャラい。
しかし、お茶目でチャラいホームズが新たなホームズ像を確立したことは言うまでもありません。
ロバート・ダウニーJr.によって広まった「アクションもこなすホームズ」
『シャーロック ホームズ』や『シャーロック ホームズ シャドウゲーム』のホームズはとにかく動きます。
斬新なアクションシーンで有名なガイ・リッチー監督の作品。ホームズらしい完璧な分析力を活かしたスピード感のあるのアクションシーンが満載です。
ファンにとっては、ホームズがボクシングや剣術などの達人であることは周知の事実です。
しかし、世間が‘‘探偵”に持っているイメージは「あまり動かないで灰色の脳細胞を働かせて事件を解決する」というものが大半です。
ロバート版ホームズは世間のイメージを良い意味でぶち壊して、ホームズが武闘派な一面も持っていることを知らしめてくれました。
『シャーロック ホームズ』『シャーロック ホームズ』に次ぐシリーズ三作目の全米公開予定が2020年12月25日から2021年12月21日に延期されました。
ただし、新型コロナウイルス拡大の影響を受けてまだ流動的な状況下にあります。
個人的にはホームズのがっつりなアクションが見られる稀有な作品として、三作目のアクションも心待ちににしています。
ベネディクト・カンバーバッチによって誕生した「平成のシャーロック・ホームズ」
ベネディクト・カンバーバッチが演じる「現代のホームズ」
ドラマ「SHERLOCK」は2010年にイギリスのBBCで放送され、日本では主にNetflixで視聴できます。(その他VODは課金レンタル対応 ※2020年12月15日現在)
「SHERLOCK」は‘‘現代にシャーロック・ホームズがいたら”という設定で製作され、放送当初からイギリスでも絶大な人気を誇っています。
私は「SHERLOCK」を観た時、不思議な感想が頭に浮かびました。
誤解を恐れずに言うと、「あ、ホームズって実在するんだ」と。
もちろん、シャーロック・ホームズがコナン・ドイルの小説の中の架空の人物だということは分かっています。
あまりにもホームズが現代の世界に馴染んでいたため、海を越えた遠つ国の島国に実際に彼がいると思ってしまったのです。
「SHERLOCK」を観始めた頃は、ジョンのブログが現実にあると本気で思っていたし、実際に見つけた時はシャーロックがいるという嬉しさに震えました。(もちろんいない)
「SHERLOCK」の脚本は原作小説をベースとしつつ現代にふさわしく違和感のないようにアレンジして、「SHERLOCK」は、まさに”原作のホームズが現代にいたらこんな感じだよね”という”if物語”を完璧に作り出しています。
例えば、原作「赤毛組合」の「パイプでたっぷり三服分の問題だな」というホームズのセリフはドラマ第一話「ピンク色の研究」のセリフで「ニコチンパッチ3つ分の問題だ」として使われています。
そのため現実味を帯びた空想の世界が作られ、よりシャーロックが現実にいるように感じられて原作ファンにとっても満足できる仕上がりです。
言わば、本場英国に「平成のシャーロック・ホームズ」が生まれたのです。
ベネディクト・カンバーバッチが映し出す「人間としてのシャーロック」
「SHERLOCK」では、4つのシーズンを通してシャーロックの人間としての感情のゆらぎが映し出されています。
原作でもホームズが温かな感情を見せる場面がありますが、「SHERLOCK」ではより彼の人間味を滲みだそうとしています。
最初は「冷静で観察と推理の機械」だったシャーロックが、ジョンを始めとする人々と出会って時を経ることで、徐々に人間臭さを見せるようになるという過程が楽しめます。
しかし、ただ丸くなっただけでは面白くありません。
シャーロックが社会病質者で異端な存在を保ちつつ、微妙な人間の機微を見せることで現代のシャーロック・ホームズをよりリアルに映し出しているのです。
ベネディクト・カンバーバッチが魅せる「ネット探偵とブロガーの絆」
シャーロックの人間臭さを作り出した最大の要因はやはり‘‘ジョン”です。
ジョンとの交流を深めていくことで、シャーロックは徐々に変化していきます。
もう皆さんはお気づきだと思いますが、私は「SHERLOCK」を語るにあたってホームズのことを「シャーロック」とファーストネームで呼んでいます。(内心ドギマギしながら)
私が慣れないファーストネームを使ったのは、シャーロックとジョンが互いをファーストネームで呼び合っていたためです。
ドラマでは第一話の序盤からさくっとファーストネーム呼びが始まっていますが、原作ではホームズは相棒のことを「ワトソンorワトソン君」と呼んでいます。
長年の習慣があるとはいえ、ホームズがワトソンのことを真の友人だと認めた後もずっと変わりません。
個人的には「ファーストネーム呼び」が実は結構大切な役割を持っているのではないかと思っています。
ファーストネーム呼びが定着することで、シャーロックとジョンの「相棒」の関係性がより強く浮かび上がり、後々のシャーロックを作り出すのにつながっている気がします。
そしてなにより、ファーストネームで呼び合っているのは彼らの距離が近い証である気がして、1人のファンとしてはにやけてしまいます。
シャーロックは本来のホームズらしさと現代だからこその彼らしさを併せ持った、まさしく「平成のシャーロック・ホームズ」と呼ぶにふさわしい存在なのです。
あなたの好みはどの「シャーロック・ホームズ」?
「お茶目でチャラいホームズ」も、「現代に生まれたシャーロック」もどちらも魅力的ですよね。もちろん原作のシャーロック・ホームズも。
あなたの好みはどちらのシャーロック・ホームズでしょうか?
ちなみに私はどちらかといえば、ホームズが現実に存在すると思わせてくれた「SHERLOCK」が好みです。
(C)Hartswood Films Ltd. A Hartswood Films production for BBC Wales co-produced by Masterpiece. Distributed by BBC Worldwide Ltd.
現代に生まれたシャーロック・ホームズを完璧に表現していて惚れ込んでしまいます。
しかしお茶目なホームズもまた斬新で魅力的だから捨てがたい・・・。
ちなみに今回は「シャーロック・ホームズが強く関係している作品」から比喩として表現を引用してみました。
ホームズファンのあなたには余裕だったでしょうか?
そろそろまたシャーロック・ホームズに会いたくなってきました。
(文:坂田)
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